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5-2 地域住民への啓発




1 日常的な地域住民への啓発

災害弱者対策は、第一義的には災害弱者のサポートを想定した対策ですが、その対策を進める意義は必ずしもそれにとどまりません。

例えば、高齢者が災害時に直面する生活問題は、高齢者だけが受けるストレスに常に起因するわけではなく、むしろその大半は災害過程の中に巻き込まれたすべての人々が多かれ少なかれ体験するものです。たまたま、高齢者の場合、身体機能の衰えや健康状態の悪化などの肉体的な制約、周囲の環境に適応する柔軟性の衰えなどによる心理・精神面での制約、生活諸資源の調達や利用のしかたなどの経済的社会的諸側面における制約が強いため、災害過程における適応という点で問題を生じさせやすいのです。

したがって、高齢者などの災害弱者の対策を地域で考えることは、災害時におこるさまざまな問題によって受けるダメージを、より深く理解し対策を練る機会をもつことになります。別のことばでいうと、災害時に生じる障害をよりリアルに把握することが可能になるといいかえることもできると思います。

災害弱者対策に真剣に取り組むことは、地域の防災対策の質を向上させるうえでの大きな起爆剤になります。

災害弱者対策を進めるにあたっては、災害時に災害弱者がどのような状態にあったかなどについて震災記録や手記などを手がかりに調べたり、災害体験者の体験を聞いたりして、災害弱者問題に対する理解と配慮の必要性の認識を、地域住民の間に広めていく必要があります。

そのうえで、地域内の災害弱者の実態把握や災害時の不安などについての災害弱者を交えた話し合いを進めていき、地域内の問題として捉えかえしていくことが大切です。

地域住民