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5-4 地域として取り組むべき対策



実際の災害時においては、その被害が大きければ大きいほど、支援する側の機能さえ失われ支援する側が被災によって弱者になってしまう危険性があります。災害弱者に対する個別の支援だけでは、このような場合、対応ができなくなってしまいます。
したがって、災害弱者やその家族が日頃から地域社会に積極的に参加し、近隣の人々とのつながりが確保でき、地域全体で災害弱者の安全の確保を進めていけるようなしくみをつくっていく必要があります。
地域として取り組むべき対策としては、まず、災害弱者の身になって地域を点検することがあげられます。
車いすでも避難路を通れるか、放置自転車などの障害物がないか、外国人にもわかるような標識が出ているか、耳や目の不自由な人たちへの警報や避難勧告の伝達方法が用意されているか、といった内容をチェックしましょう。情報伝達システムや避難システム、避難生活といった観点から、じっくりと検討することが大切です。
次に、自主防災組織などを中心として、地域内やその周辺の災害弱者に対する援助体制を具体的に決めておくことが必要です。
その際に注意することは、1.ひとりの災害弱者に対して、複数の住民による援助体制を組んでおくこと、2.具体的な活動手順を決めて、平常時に災害弱者と一緒になった訓練を行っておくことです。
●災害弱者の誘導方法●
高齢者・病人など
●援助が必要なときは、複数の人間で対応する。
●常に複数の援助者がそばにいるとは限らない。急を要するときは、ひもなどを使って背負い、安全な場所へ避難する。
高齢者・病人など
肢体の不自由な人
●いろいろな障害の人がいるので、それぞれの人に適した誘導方法を確認する。
●車いすの場合は、階段では必ず3人以上で協力する。上がるときは前向きに、下がるときは後ろ向きにして恐怖感を与えないように配慮する。
●いつも複数の援助者が居合わせるとは限らないので、場合によっては、ひもを使って背負うなど臨機応変に対応する。
肢体の不自由な人
目の不自由な人
●「お手伝いしましょうか」などと、まず声をかける。
●話しかけるときは、はっきりゆっくり大きな声で。
●誘導するときは、杖を持っていないほうのひじのあたりに軽く触れるか、腕をかして半歩前くらいをゆっくり歩く。
●方向を示すときは、「右斜め前10m」などと具体的に。時計の文字盤を想定して「10時の方向です」などと説明するのもわかりやすい。混乱するので「あっち」「こっち」などとは言わない。
目の不自由な人
耳の不自由な人
●話すときは、近くまで寄って相手にまっすぐ顔を向け、口を大きくはっきり話す。
●口頭でわからないようであれば、紙とペンで筆談する。筆記用具がなければ相手の手のひらに指先で文字を書いて筆談する。
耳の不自由な人