1 はじめに
全国では毎年、非常に多くの方が熱中症により救急搬送されています。令和6年は、非常に厳しい暑さが長期間にわたって続いたことから、5月から9月までにおける全国の熱中症による救急搬送人員は97,578人となり、集計を開始した平成20年以降、最多となりました。
今年の夏も全国的に平年より高い気温になることが予想されることから、熱中症予防にしっかり取り組んでいくことが重要です。
2 熱中症について
(1) 熱中症のしくみ
熱中症は、温度や湿度が高い中で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなり、立ちくらみ、頭痛、吐き気、ひどいときには、けいれんや意識をなくすなど、様々な症状をおこす障害の総称をいい、最悪の場合は死に至ることがあります。
(2) 子どもの特徴
子どもは、汗をかくなどの体温調節機能が未発達のため、体に熱がこもりやすくなります。
また、体に異変が起きても気づかないことがあるため、周囲の大人が気にかける必要があります。
(3) 高齢者の特徴
高齢者は、若年者に比べ体内の水分量が少ないため、こまめに水分補給を行う必要があります。
また、加齢により、暑さや喉の渇きに対する感覚が鈍くなるとともに、体に熱がたまりやすく、暑いときには若年者よりも循環器系への負担が大きくなるため注意が必要です。
3 熱中症にならないために心がけること
熱中症予防には「暑くなる前」から行う予防と、「暑い時期」に行う予防がありますが、今回は「暑くなる前」から行う予防について紹介します。
同じような暑い環境下にいたとしても、熱中症のなりやすさは個人ごとで違います。このような熱中症のなりやすさに関連するものとして、「暑さに体が慣れている」ことの重要性が近年指摘されています。この暑さに体を慣らすということを、暑熱順化といいます。
暑熱順化は「やや暑い環境」において「ややきつい」と感じる強度で、毎日30分程度の運動(ウォーキング等)を継続することで獲得できます。実験的には暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程度で完成するといわれています。そのため、日頃からウォーキング等で汗をかく習慣を身につけて暑熱順化していれば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。
また、暑くなる前の時期から、自宅や施設等で使用する空調設備がしっかり使えるかどうかの動作確認・試運転を行うことも重要です。
4 消防庁における熱中症予防啓発の取組
消防庁では、全国消防イメージキャラクター「消太」を活用した熱中症予防啓発ポスター・ビデオ・イラスト、熱中症対策リーフレット、全国の消防本部が独自で行っている「熱中症予防啓発取組事例集」等の予防啓発用コンテンツをホームページに掲載しているほか、X(旧Twitter)でも熱中症情報を発信しています。
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
https://x.com/FDMA_JAPAN

予防啓発ビデオ

予防啓発ポスター
また、今年度から新たに、厚生労働省主唱の「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」との連携を開始するほか、引き続き、「熱中症予防強化キャンペーン」として、関係府省庁連携の下、時季に応じた適切な熱中症予防行動の呼びかけを行うとともに、狙いを絞った効果的な普及啓発や注意喚起等の広報活動を実施することとしています(次ページ参照)。
5 おわりに
熱中症は、正しい知識を身につけることで、未然に防ぐことができます。今回紹介した内容を参考に、一人一人が「暑くなる前」からの熱中症予防を心がけていただくようお願いします。
(総務省消防庁「消防の動き」2025年4月号より)