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特集 図上訓練の活用−実践的防災訓練のために−




事例紹介 シナリオ型の避難所開設訓練の事例

■具体的な被害状況を想定したシミュレーション訓練
東京都中野区の多田小学校では、ここを指定避難所としている4地域防災会合同の避難所開設・運営訓練が行われました。
最初に、阪神・淡路大震災の被災地域の町の役員の方を講師として、救助活動や避難所運営での苦労や体験を聞き、災害時の状況に対するイメージを高めました。
シナリオの流れ
次に、シナリオ型の避難所開設訓練に入りました。まず、避難所運営マニュアルに記載されている役割にしたがって、参加した約60人の自主防災会の皆さんでチームにわかれてテーブルにつきます(運営本部/庶務部/情報部/物資調達部/衛生・救護部)。学校職員も運営本部に入りました。そして訓練当日の日曜日朝9時に、マグニチュード(M)7.2、震度6強の区部直下型地震が起きたと想定。避難所運営マニュアルに設定された組織体制・施設利用計画を前提として、具体的な被害状況が書かれたカード(状況を表すシナリオが書かれたもの)が与えられ、その時実際どのように対応できるのか、どのような問題が派生してくるのか、その場で話し合います。
また必要に応じて他の部に要請・質問・情報提供をします(けが人があふれているので保健室の近くの部屋を空けなければならない、避難者名簿を作っているが行政にまとめて報告するには相当時間がかかる、混乱がないように物資を配るにはどうしたらよいのか、まだ開放してはいけない教室に避難者が勝手に入り込んでしまっているなど)。
テーブルの上には拡大した校内図が置いてありますので、必要に応じて、教室の開放状況、役員の移動状況などを、視覚で共有しながら、訓練を進めました。

■「避難者」になって災害時をイメージ
またこのシナリオ型訓練では「避難者」というチームもつくり、自分を避難所に避難してきた避難者として考えた時、どのような行動を取るのか、どんな混乱や不安があるか、何を要求するだろうか、さらには一人の避難者として、開設・運営に対し何ができるのか、といったことについてもイメージしてもらいました。イメージした結果出てきた避難者としての行動を、順次役員になげかけて対応を求めました(水や毛布がほしい、体の弱い家族がいるので体育館から別室に移らせてほしい、仮設トイレの設置を手伝おうなど)。
以上の訓練の結果、災害の規模が大きかった場合、これまでマニュアルで想定していた体制・手順では、スムーズな避難所開設・運営を行うことができない可能性が高いことがわかってきました。この防災会では、このシナリオ型訓練を通して災害時の状況に対する想像力・判断力を高めましたので、マニュアルの見直しを行うと同時に、今後学校に整備されている防災資機材を利用した、より実践的な防災訓練を行うことにしています。