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8-2 発災対応型防災訓練の試み




資料2 発災対応型防災訓練のビデオシナリオ

ナレーター
:皆様は防災訓練に参加したことはありますか。おそらく学校の校庭や町会内の公園で行ったことはあるのではないでしょうか。
これからご覧いただく訓練は今までの訓練とはまったく趣が違います。実際に皆様の住んでいる町の道路や軒先など生活する場所で、大地震を想定した災害を発生させます。この映像で町のあちこちから煙があがっているのが分かると思います。これが訓練の始まりです。
ここではサイレンの合図が発災となりますが、実際には激しい地震の揺れを感じたら、まず身を守るためにテーブルの下などに入ります。
倒壊家屋の下敷きになった人を救助する一場面
倒壊家屋の下敷きになった人を救助する一場面

住民
:あっ地震だ。大きいぞ。火を消して。
ナレーター
:このように持ち出しやすいところに、ヘルメットと軍手を用意しておき、自宅の安全を確認した後は町中へ向かいます。
住民
:どこかしら。
ナレーター
:煙が立ち上がっているのが見えたため、その方向に一番近い道を通ろうとしましたが通行不能でした。大地震の際には道路の陥没や建物の倒壊によって通れなくなる道路が出てきます。

住民
:ここは駄目ですか。
警官
:通れません。
ナレーター
:煙に向かって走りながらも、頭の中で消火器の位置を思いだしています。有事の際にとっさに消火器を取り出せるためには普段から消火器の設置位置を確認しておく必要があります。この訓練では消火器を20秒構えることによって、1本の消火器が有効に使えたことにしています。出火場所によって必要本数に変化をつけています。この現場には5分間に3本の消火器が集まりましたので、消火成功ということになり赤旗があがりました。
この女性は商店街から一本奥へ入った路地から消火器をとりだし、火点まで走りました。このような行動は普段から消火器の置いてある場所について気にとめておかないと、なかなかできません。
次の方は駐輪場から消火器を取り出しました。いざという時にすぐ使えるように消火器の周りには物を置かないようにしておきたいですね。
この場所には消火器が3本集まり、消火が成功したようです。隣は書店のようです。本や雑誌といった可燃物がたくさんある場所なので、燃え広がらなくてよかったですね。

住民
:なに、これ。出ないです。(消火器を抱え、おろおろしている映像)
ナレーター
:このような訓練でさえ、慌てると、知っていたはずの消火器の使い方がわからなくなってしまいます。本番で慌てないためには、たくさんの訓練を積み重ねる必要があるのです。
このように消火ハウスを燃やしているものには、実際に消火器を放出します。あの阪神淡路大震災では、神戸市の真野地区というところで、約10時間燃え続けた火災がありました。ところが、住民のバケツリレーなどのおかげで、わずか43戸の焼失ですみました。消火器は数に限りがありますが、バケツリレーならば水さえ確保されれば長時間続けることができます。今回はたくさんの子供も加わって訓練が行われました。

住民
:早く早く。来ないよ。(バケツリレーでバケツがなかなか来ない映像)
ナレーター
:いま投げているのは投てき水パックというものです。これは袋に水を入れて作り、燃焼している物に投げつけて使います。この投てき水パックは紙などが燃える普通火災に対しては有効です。
声のする方に向かったこの方は倒壊している建物に登場します。周りの様子から中に人が埋まっていることがわかりました。そのため区で配置してある救助機材の入っている箱を取りに来ました。この箱はキャスターがついていますが、重さが80キロあるので、二人以上で運ぶのがよりよい方法といえます。この町会の場合は箱の上に物干し竿と毛布をのせてあり、応急担架をすぐに作ることができるようになっています。
バールを使って中に入った後、畳を担架の代わりに使っています。臨機応変な処置といえるでしょう。

住民
:はい、そこ持って。大丈夫か。足元、気をつけてな。
ナレーター
:ここではブロック塀の下敷きとなり負傷した方の手当をしています。古いブロック塀は地震の際に倒れることがあります。避難の際には近づかないようにしましょう。
ケガ人の容態に応じて応急手当をしています。一緒に避難所へ向かいますので、歩けるかどうか尋ねて下さい。

住民
:大丈夫ですか。歩けますか。
住民
:歩けない。
ナレーター
:歩けない場合は担架で運びます。担架は町会などで所有しているものや、毛布と物干し竿で作成したものを使います。ケガ人が歩けるようならば介添えして避難所へ連れていって下さい。自力で避難が困難な方を近所の方々が協力して、避難場所まで誘導します。日頃からの近隣関係が大事だということは言うまでもありません。

聞き手
:どうですか、実際にやってみて。
住民女性
:いや、大変です。消火器を探すこと自体、大変ですね。
聞き手
:やっぱり普段どこにあるか、わからなかったですか?
住民女性
:いや、見ていても、消火器がここにあるって歩いていませんからね。探す段階になると頭が真っ白くなっちゃって、わかりません。
聞き手
:頭が真っ白になりましたか?
住民女性
:なりました。もうどうしようっていうのが先でしたから。
聞き手
:こういう訓練は実際やってみて、どうですか。
住民女性
:やっぱり真剣になりますよね。やっぱりあった方がいいです。
聞き手
:どうですか、今日の訓練をやってみて。
住民男性
:いいんじゃないの。ほんとう、実戦さながらだよ。やっぱり火とか、煙を見るとね、夢中になっちゃうのね。最初のうちは、最初の担架の時はそうでもなかったけど、あそこ行った時なんか夢中になっちゃってね。大したもんだね。
聞き手
:普段、学校などに集まってやるのとは?
住民男性
:違うね。学校でやるのは、皆な、ああいうところだから、見ているとか、そういうアレがあるけど、今日のアレはほんとう真剣だったよ。
聞き手
:訓練には参加した?
住民子供
:はい。
聞き手
:参加してみて、どうでした?
住民子供
:バケツリレーではちょっと疲れたけど、とってもいい訓練になりました。
聞き手
:どこがよかったの?
住民子供
:バケツリレーで疲れるところがあって、渡すんだけど、どんどん広がったりしたんだけど、走ったりしたんだけど、何とかつなげたのがよかった。
聞き手
:こういう町の中でやるのはどう?
住民子供
:本当に起きたら怖いなと思う。 (制作、向島消防署と出て、ビデオは終了)
(『消防科学と情報』(No.63 2000年冬号)消防科学総合センター 54-57頁より)