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特集 「簡易図上訓練」の実施と訓練用「被災シナリオ作成」の方法




STEP7:「被災シナリオ」に基づく上演=「図上訓練」

こうして、ある程度「被災シナリオ」が出来上がったら、それを実際の劇のように演じてみてください。
とはいえ「役者が揃わない」「地図を広げられる適当な場所がない」など、制約も多々あると思います。その場合、友人を一人みつけて自分の演技(シナリオに沿った対応)を見てもらい、コメントしてもらうという程度でもよいですし、それもできなければ、自分の頭の中で思考実験的に検討してみるのでも構いません。
ただ、その場合、自分が取ろうとしている行動が「本当に可能なのか/可能でないのか」を、厳しくチェックすることは、必ず行ってください。また、「可能である」と判断された行動が「どうして可能だと言えるのか」その根拠を説明してください。「可能でない」と判断された行動についても、それに代わる(可能な)行動を提示してみてください。
さて、こうしてひと通り演じてみると、さまざまな反省点が出てくると思います。「思ったよりシナリオが間延びしていた」とか、「状況を特定するための知識が不足していた」などという事前準備に起因する反省点や、「役者が照れていた」とか、「時間切れになってしまった」「行動が現実離れしていてアドリブも苦し紛れだった」などといったその場の対応に関するような反省点など、いろいろ出てくることでしょう。

指摘された問題点や反省点のうち「自分(家族・地域)の対応の限界を超えている」ような問題点―例えば、自治体から指定されている避難所まで遠すぎて、たどり着けそうにないといった問題など―が出てきたら、それは、自治体が災害対策として行うべき新たな課題を発見したことになるでしょう。

こうした課題に対する対策案や、演技上の反省点などを盛り込んで、もう一度同じ想定で上演してみてください。というのは、役者が適切なアドリブを滞りなくこなして初めて―すなわち自らの対応を自らの責任で滞りなく演じることができて初めて―他人のことが正しく視野に入ってくるからです。シナリオに沿った通り一遍の対応は、「建前」を述べ合っているに過ぎません。
図上訓練を経験した「被災シナリオ」はどんどん成長していくことでしょう。そこには私的・公的な改善策が次から次へと盛り込まれ、より現実に即した災害対策が、そこに生活している人の視点で整備されていくことになります。
「家族の初動措置」の被災シナリオの修正例