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2003年4月

2.平成14年度 全国消防団員意見発表会の開催

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平成14年度 全国消防団員意⾒発表会の開催

消防団地域活動表彰式と全国消防団員意⾒発表会が、平成15年3⽉27⽇(⽊)東京都港区⻁ノ門⽇本消防会館「ニッショウホール」において、開催されました。

消防団員の意⾒発表会においては、全国から選ばれた、30歳〜40歳台の中堅クラスである消防団員11名が、団員としての⽇頃からの意⾒、団活性化対策や消防団員としての使命感等について、意⾒を発表いたしました。

その結果、最優秀賞に輝いたのは「もうひとつの⼿助け」と題して意⾒を発表した東京都⼋王⼦市消防団 平林真未さんでした。内容(詳細︓別記)は、年頃の娘さんが、冬の寒い時のある⽇、外出中に起きた⾃宅⽕災の話で、この⽕災で亡くなったその⺟親に対する気持ちと⾃分が過去に遭遇した経験での⺟に対する思いとを重ねた話でした。

優秀賞には、愛媛県松⼭市消防団 向井成美さんの「消防団員としての⼀年 そして これから」、同じく優秀賞に、⼤分県国東町 前⽥真宏さんの「定位にーつけ︕」が受賞となりました。他の⽅々についても、すばらしいご意⾒等でありました。

※最優秀賞 「もうひとつの⼿助け」 平林真未さん

(具体的な発表内容)

私には今、⾞椅⼦で⽣活し、失語症になりつつもいつも明るい笑顔で「今⽇も消防団ガンバレ︕」とエールを送ってくれる⺟と、その⺟を⽀える⽗がいます。

⺟は11年前、私が18歳の時に脳内出⾎で突然倒れました。でもその時私は何も知らないまま⼤好きな映画館に居ました。

⼩さい頃から、救急や消防がこんなにも好きだったのに、いざ家族の事では何の⼿助けさえも出来ませんでした。

駆け付けた時には⽗は泣きじゃくり、朝迄の⺟とは全く変わり果てた、意識も反応も無い⺟の姿と対⾯し、私はやりきれない思いと孤独感、そして「どうしてこんな時にそばに居てあげられなかったんだろう」という⾃分を責める思いに押し潰されそうな⾃分が居ました。

そんな同じ思いをしているであろう、その当時の私と同じ年頃の娘さんが、⼀昨年の冬の⽕災で、必死に消⽕しようとして頑張ったお⺟様を亡くされました。娘さんも、何も知らずにお友達と遊んでいて連絡を受けたのでしょう。現場でお⺟様の訃報を知らされた時の娘さんの表情は、ちょうど11年前の私⾃⾝、そのものを⾒ている様でした。

⼤勢の⼈の中では泣けず⻭を⾷いしばる彼⼥がそこには居ました。でも向かいの家の⽞関前で声を殺して泣いている彼⼥を⾒て、私は団員として消⽕活動さえも⼿伝えずにいる⾃分がとてももどかしく、「この⼈の為に私は何も出来ないのだろうか︕」と⼼の中で叫んでいました。

そんな時、娘さんが可愛がっていたネコが救出された後、⾏⽅不明になっていると消防隊員の⽅から聞き「そうだこのネコを探してあげられたら、今の娘さんの⼼を少しでも救えるかもしれない・・・」と思い、私は必死でネコを探し始めました。

「もうそろそろ、引き揚げるぞ・・・︕」と声を掛けられる程の時間がたった時、ようやく猫を発⾒︕

探し出したネコを娘さんに⼿渡すと、涙をいっぱいに溜めながらも、こう⾔って下さいました。

「ありがとうございました。ああ、この⼦だけでも⽣きていてくれた事が本当に嬉しいです・・・・・・」とその⾔葉が嬉しくて私は涙がこぼれました。

帰り際に、私の⾞に積んであったネコ⽤の缶詰とネコを暖める⽑布を渡し「頑張って下さいね」と伝えると、彼⼥は「ハイ」と温かい笑顔を⾒せて下さいました。

私は、あらためて消防団員として出来る本当の役割とは何か、そして私達だからこそ協⼒できる事って何だろうと考えました。

そこで私は提案したいのです。『⼿助け・・・』という役割を。

『消⽕の・・・⼿助け』『救助の・・・⼿助け』『救急の・・・⼿助け』そしてもうひとつ『⼼の・・・⼿助け』を。

これこそが私達、町に密着した消防団員としての⼤切な役割の原点、そのものではないでしょうか。

11年前の⺟には何の⼿助けもしてあげられなかったけれど、今こうして消防団員として頑張っている事で⼼の⼿助けをしてあげたい︕

この⼤好きな消防で私が学んだもの。ずっと⼤事にして⾏きたい

『もうひとつの⼿助け︕』

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