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1-1 防災訓練の目的と緊急時の活動の原則



大きな災害が起こったときには、人的被害が発生すると同時に、家屋や道路などの被害やライフラインの途絶など、様々な障害が累積的に加わってきます。もし食事の支度時であれば、火災が多発して延焼が広がり、あたり一面火の海になってしまう危険性もあります。緊急的な避難が必要になると同時に、ガス・電気・水道・電話などの途絶により生活上の支障も広がり長期化していきます。

このような緊急事態の中で、どのようにすれば自分たちの身の安全や生活を、自分たちで守れるのでしょうか? 阪神・淡路大震災では、地域社会の結束や日頃の活動の程度が、応急時の活動の可否を左右し、それが被害の拡大や抑制、災害時の避難生活に大きな影響を及ぼしたといわれています。

防災訓練の目的と緊急時の活動の原則

親族・近隣関係が濃密な農村型の地域や、都市地域でも神戸市長田区真野地区のような長い間の住民運動や地域活動の実績のある地域では、日頃のつきあいの豊かさを生かし、住民による地域活動の実績と組織力を駆使して、火災延焼をくい止め、高齢者を倒壊家屋から救出し、救援物資を組・班ルートを通じて整然と配布したところもありました。それに対し、自主防災活動がほとんどとられず、災害の中でなすすべもなく翻弄され、悲惨な状態におかれた地域も決して少なくありませんでした。日頃の人間関係や地域活動の厚みの差がこの違いをもたらしたのです。

応急時の活動において最も大切なことは、いち早く応急時の活動拠点を確保し、役員が常駐できる体制を確立して情報伝達・連絡のしくみを立ち上げていくことです。応急時に、多くの住民が、この活動拠点を中心にして相互に緊密な連絡を取りながら、協力しあって活動できるか否か、それを可能にする信頼関係を築きあっているか否かが、最大のポイントになります。応急時には、被災状況とその後の変化を敏感に読み、状況の変化を先取りするかたちで、多くの事柄に配慮しながら迅速に対処していかなければなりません。日常時に行う訓練は、まさにそうした事態を想定してなされる必要があります。

緊急事態の中では、一刻も早く適切な応急活動を立ち上げることが必要とされます。大災害の場合には、死者の発生も想定した救出救助活動が必要になり、緊迫しかつ混乱した事態が予想されます。防災に関する知識を個人個人がもっているだけでは、いざという時に行動に移せません。非常時に適切な応急活動ができるように、日頃から緊迫した事態を想定した訓練を十分にしておくことが必要です。