私たちの暮らしを営む大切な場である「わが家」ですが、大規模地震の際、倒壊した家屋は、多くの犠牲者と救援活動の必要性を生んでしまううえ、住民の避難路を閉ざし、火災・延焼の拡大につながる可能性が非常に高まります。
たとえば、2003年7月に震度6弱以上の地震を3回記録した宮城県北部の地震でも(前震6弱・本震6強・最大余震6弱)、家屋の全壊・倒壊の被害が、1980年以前の建物、つまり新しい建築基準法(1981年)による耐震基準を満たしていない建物に集中していることがわかっています(朝日新聞、2003.10.9)。同じような検証結果は阪神・淡路大震災における木造・非木造の建物でも報告されており、基準を満たした建物かどうかは、一つの目安となります。もちろん、地盤的な条件や、手抜き工事といった要因も関係しますので、新しい建物だからといって必ずしも安全とはいえません。
ちなみに、阪神・淡路大震災では、戦前の建物でも、改築の際に柱を何本か加えていたことが幸いして、近隣の同時期の建物が壊れたにもかかわらず、その家だけ倒れずに残ったケースがあります。また、大きく傾いた建物がどんどんと取り壊されましたが、震災後すぐに駆けつけた大工さんが、家の状況をみて引き起こせると判断したため、取り壊さずに済んだというケースもあります(神戸市長田区の事例)。
費用の問題がありますが、家族の命には代えられませんし、大切な財産を無駄にするわけにはいきません。さらには地域全体の安全性とも直結します。各自治体では、耐震補強のための助成制度を設けている場合がありますし、様々な工法もあります。自治体にたずねるなど、ぜひとも積極的に情報収集・検討をしてみてください。
とはいえ、費用面・技術への信頼性など、個人ではなかなか考えづらく情報を集めるのが難しい面もあります。そこで、たとえば婦人防火クラブのリーダーが地域に呼びかけて、耐震補強に真剣に取り組む地元の建築士・大工・工務店などと一緒に勉強会を行うなど、専門家・業者との信頼関係を深め、いざというときの協力関係も視野に入れながら、地域全体で耐震補強問題に取り組む機運を高めていくことも重要です。
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