「災害弱者」とは、自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知する能力(危険察知能力)、危険を知らせる情報を受け取る能力(情報入手・発信能力)、そうした危険に対して適切な行動をとる能力(行動能力)の面で、ハンディキャップをもつ人々を総称する概念です。
具体的には、傷病者、身体障害者、精神障害者をはじめ、日常的には健常者であっても理解能力や判断力をもたない乳幼児、体力的な衰えのある高齢者や、わが国の地理や災害に関する知識が乏しく、日本語の理解が十分でない外国人などを、いわゆる災害弱者として捉えることができるでしょう。
防災対策上は、彼らを地震・火災などの災害が発生した場合自力による避難が困難な者で、防災上支援を要する者と位置づけることができます。
現在、日本では、約4〜5人に1人が災害弱者と推計されています。
災害弱者とはいっても、そのハンディの内容や程度には、かなり個別差があります。高齢者を取り上げても、その中には一般成人となんら変わらず災害時に町内会・自治会や自主防災組織などの地域リーダーとして統率力・判断力を駆使して貢献できる高齢者から、行動能力が衰え介護の必要な高齢者までおります。その障害の有無と質量は千差万別であり、さらに、障害によって生じる問題の大きさも、当該高齢者を取り巻いている環境(ひとり暮らし、同居家族の経済力、別居家族の居住環境など)によって異なります。
災害弱者に対する対策は、いわばこうした災害弱者の抱えるハンディを理解しつつそれを補って、彼らの自立を助けるための対策と考えることができるでしょう。
高齢化が急速に進む現在は、核家族化の影響などとあいまって、高齢者世帯が急増しています。特に昼間の時間帯には、女性の社会進出などにより高齢者だけになる傾向も強く、災害弱者対策という観点から防災を見直すことが特に重要になっています。
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