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2021年6月

2. 風水害に対する備え

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総務省消防庁 防災課


「令和2年7月豪雨」による浸水等被害
熊本県八代市坂本町(撮影:福岡市消防航空隊)
はじめに
 我が国では、毎年、台風や梅雨前線等の影響による多量の降雨があり、全国各地で洪水や土砂災害等の風水害が発生しています。
 昨年7月に発生した令和2年7月豪雨では、熊本県を中心に河川の氾濫、堤防の決壊による浸水や土砂崩れ等が多数発生しました。その後の各地での被害を含め、死者・行方不明者の方があわせて86名ほか、1万6千棟を超える住家被害が発生しました(令和3年4月2日現在)。

洪水
 流域に降った多量の雨水が河川に流れ込み、特に堤防が決壊すると、大規模な洪水被害が発生します。また、雨が降りやんでも洪水は起こります。上流で増水した水が下流に到達するまでに時間差があるためです。令和元年東日本台風では、大雨特別警戒が解除された後にも、上流で降った雨などの影響で川の水位上昇が続き氾濫が発生しました。

土砂災害
 土砂災害とは、大雨や地震などが引き金となり、山や崖が崩れたり、土砂が雨などの大量の水と混ざり合って一気に流れたりする自然災害です。道路の陥落や道路への土砂の崩落、橋梁の崩落などにより多数の孤立地域が発生するおそれがあるほか、停電、断水等ライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生するなど、住民生活に大きな支障が生じます。

局地的な大雨による災害
 近年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化しており、中小河川の急な増水、地下空間やアンダーパス(※)の浸水等により、車の立ち往生や、床上・床下浸水等の被害が生じる事例が多く発生しています。道路では、大量の雨水が下水管に流れ込むと、マンホールのふたが浮き上がり、外れてしまうこともあります。転落を防ぐためにも、冠水した道路を歩くのは絶対にやめましょう。
※ アンダーパス:交差する鉄道や他の道路などの下を通過するために掘り下げられている道路などの部分。周囲の地面よりも低くなっているため、大雨の際に雨水が集中しやすい構造となっています。

早めの避難が命を救う
 風水害では、逃げ遅れにより甚大な被害が発生します。逃げ遅れが起きるのは、危険が迫っていてもなかなか実感ができず、自分は被害に遭わないだろうという思い込みに陥ってしまうからです。「まだ避難しなくても大丈夫」ではないのです。また、「近所の人が誰も避難していない」からではなく、自ら積極的に避難することが重要です。各自治体が公開しているハザードマップを普段から確認し、自らが、いつ、どこに避難するか、事前にルールを決めておきましょう。

最近の災害を踏まえた動向
 平成30年7月豪雨等の教訓を踏まえ、住民が様々な防災情報の意味を直感的に理解できるよう、昨年の出水期より、防災情報を右表のとおり5段階の警戒レベルにより提供し、住民等が避難行動を支援することとされました。しかしながら、令和元年東日本台風等では、避難をしなかったり、避難が遅れたりしたことにより被災が多くみられ、防災情報の提供方法や避難の呼びかけの仕組みが十分に理解されていないなどの課題が顕在化しました。
 これらの課題を踏まえ、防災対策実行会議の下に設置されたワーキンググループによる検討が行われ、平時より災害リスクととるべき行動や防災情報について理解しておくことの重要性等が報告されました。これを受け、令和2年度は、出水期までに避難行動を促す普及啓発活動である「避難の理解力向上キャンペーン」をあらゆる主体に参画いただき日本全国で展開していきます。


(総務省消防庁「消防の動き」2021年5月号より)

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