静岡県熱海市の被害状況はじめに
我が国では、毎年、台風や梅雨前線等の影響による多量の降雨があり、全国各地で洪水や土砂災害等の風水害が発生しています。
昨年は、日本付近に停滞した前線の影響で、7月から8月にかけて全国各地で大雨となり、静岡県熱海市の土石流災害をはじめ、全国各地において土砂災害や河川の氾濫、低地の浸水などが発生し、道路やガス、水道等のライフライン、農業や観光業等地域の産業に大きな被害をもたらしました。
洪水
流域に降った多量の雨水が河川に流れ込み、特に堤防が決壊すると、大規模な洪水被害が発生します。
また、上流で増水した水が下流に到達するまでに時間差があるため、雨が降り止んだとしても洪水は発生します。
土砂災害
土砂災害とは、大雨や地震などが引き金となり、山や崖が崩れたり、土砂が雨などの大量の水と混ざり合って一気に流れたりする自然災害です。道路の陥落や道路への土砂の崩落、橋梁の崩落などにより多数の孤立地域が発生するおそれがあるほか、停電、断水等のライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生するなど、住民生活に大きな支障が生じます。
局地的な大雨による災害
近年、局地化、集中化、激甚化した降雨により多大な被害が生じています。また、都市化に伴い、中小河川の急な増水や氾濫による床上・床下浸水等の被害、地下空間への浸水害、アンダーパス(※)への浸水による車の立ち往生等の被害が生じる事例が多く見受けられます。
※アンダーパス:交差する鉄道や他の道路などの下を通過するために掘り下げられている道路などの部分。周囲の地面よりも低くなっているため、大雨の際に雨水が集中しやすい構造となっています。
早めの避難が命を救う
風水害では、逃げ遅れにより甚大な被害が発生します。逃げ遅れが起きるのは、危険が迫っていてもなかなか実感ができず、自分は被害に遭わないだろうという思い込みに陥ってしまうからです。「まだ避難しなくても大丈夫」ではないのです。また、「近所の人が誰も避難していない」からではなく、自ら積極的に避難することが重要です。各自治体が公開しているハザードマップ等を普段から確認し、自らが、いつ、どこに避難するか、事前にルールを決めておきましょう。
最近の災害を踏まえた動向
令和3年5月の災害対策基本法の改正により、避難勧告・避難指示を避難指示へと一本化し、避難すべきタイミングを明確にするなど、避難情報を住民に分かりやすく伝えるための見直しが図られました。
この新たな避難情報の運用や住民の避難行動について検証するため、「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」が開催され、市町村が避難情報を適切に発令するため、市町村の人材育成や専門家等から市町村への支援の充実を図ること、住民一人一人に「自らの命は自らが守る」という主体的な意識で具体的な避難行動につなげてもらうため、地域において防災に関する教育と啓発活動を続けていくことなどの対策がとりまとめられました。
(総務省消防庁「消防の動き」2022年5月号より)