[解説] 地域住民主体の避難行動・救援活動と、災害ボランティア
高知県西南部豪雨災害検討会(学識経験者・地元自治体・高知県・国土交通省四国地方整備局で構成)が行った、被災地域全域における住民アンケート調査では、行政からの情報も無い中で、危険を察知した地域住民同士による避難前後の活発な情報のやりとり、消防団・地区長などによる積極的な避難の呼びかけが行われていたことがわかっています。そして危険な状況下にあっても、消防団などによる避難支援活動が展開されたことで、1人の犠牲者も出さずに済みました。
さらにこの調査によると、避難しなかった住民よりも、避難した住民のほうが防災訓練に参加したことがある割合が比較的高く、また避難しなかった人よりも避難した人のほうが、避難所の場所を把握している割合が高かったという結果が示されています。普段の地域での人間関係、防災に対する心構えの大切さがわかります。
なお、高知県の豪雨災害というと、平成10年に16市町村に被害が及んだ大水害が思い起こされます。死者6人、負傷者12人、床上浸水12,370戸、床下浸水9,885戸にのぼり、避難者はピーク時に12市町村計1,457人を数えました。活動したボランティアも延べ8,000人以上ともいわれています。ぬれた畳や家具の運び出し、掃除、暖房器具の配布など、高知県では初めての大規模な災害ボランティア活動でした。
この豪雨災害のあと、高知県社会福祉協議会が中心となって、「災害ボランティア活動支援マニュアル」が作成されています。そしてこのときの活動でボランティア活動の輪が築かれ、この平成13年の高知県西南部豪雨災害でも、土佐清水市・大月町を中心に、マニュアルを活用した救援活動が積極的に展開されています。地元の高校生なども活動に参加しています。
もちろん、婦人防火クラブを含めた、地域を主体にした相互の救援活動を行うことができる体制づくり、普段からのご近所同士の関係づくりが、地域防災には不可欠です。特に、事例のような非常時における地域内の情報連絡や緊急的な避難誘導などについては地域が主体にならざるをえません。
そして、そのような地域の相互扶助の取り組みをベースにしつつ、必要に応じて外部の災害ボランティアとの有機的な連携がなされると、救援から復旧・復興における困難を低減できる可能性も高まります。
【参考資料】「高知県西南部豪雨災害に関するアンケート調査の結果を踏まえた防災対策について」『月刊建設』(2002)
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