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5-4 訓練方法




事例紹介 豪雨被害を乗り越えて(高知県・大月町婦人防火クラブ連絡協議会)

豪雨で大きな被害をこうむった大月町
豪雨で大きな被害をこうむった大月町
平成13年9月5〜6日にかけて、活発化した秋雨前線の活動によって、高知県西南部の土佐清水市、大月町付近のごく狭い範囲内に集中的な豪雨が発生しました。高知県の観測では、土佐清水市下加江で最大24時間降水量605mm、そして大月町では、最大1時間降水量110mmと、局所的な豪雨となりました。その結果、人的被害こそ生じなかったものの、土佐清水市、大月町を中心とする高知県内で全壊25棟、半壊265棟、一部損壊10棟、床上浸水265棟、床下浸水541棟の被害を記録しました(高知県災害対策本部、平成13年12月26日付資料による)。大月町では床上浸水149棟、床下浸水240棟となり、ほぼ全域で停電、電話の不通、断水となるなど、ライフライン・道路が寸断された状態で、一時完全に孤立する地区も出ました。
そのような厳しい状態の中で、大月町婦人防火クラブ連絡協議会(9地区・会員約250人)では、各地区の婦人防火クラブ員が自主的に、被災した人や復旧活動にあたる人たちのために、地区住民と協力して炊き出しを行い、避難所の避難者や高齢者の家庭などへ食事を配り、また復旧作業活動も精力的に行っています。主な活動は、使えなくなった畳、家具の運び出しや、食器類の洗い流し、土砂の取り除き、建物や床下の消毒などです。
また、被災した高齢者のお宅の巡回を行ったことで、大きなこころの支えにもなりました。これだけの大きな被害を受けながら幸いにも1人の死者も出なかったのは、日頃から住民同士が互いによく知り合い、コミュニケーションを深めていたためです。
大月町婦人防火クラブ連絡協議会では、この経験を無駄にせず、そして近い将来必ず発生する南海地震に備えて、地震や災害についての知識を深め、被害防止対策や、救急・救助法の習得を進めるなど、日々活動に取り組んでいます。
■大月町内の各地区の活動報告から
A地区
9月6日、午前8時に区役場に集合、水道断水・停電となったため、昼食用の炊き出しを行い、地区住民・避難所の避難者へ配布。7、8日は復旧作業を行う一方で、一人暮らし高齢者や浸水家庭、そして出動している消防団員への炊き出しを行う。
B地区
9月6日の昼食・夕食、7日の朝食・昼食の炊き出しを避難している人々に行う。9月7〜10日の4日間、周防形地区(全域が浸水となったもっとも被害の大きかった地区)の復旧作業のため、延べ15人のクラブ員を派遣する。
C地区
9月7、8日、地区内の浸水した家庭の復旧作業を手伝い、支給された毛布の配達を行う。同時に、両日とも、周防形地区への炊き出しのため、クラブ員を派遣する。
[解説] 地域住民主体の避難行動・救援活動と、災害ボランティア
高知県西南部豪雨災害検討会(学識経験者・地元自治体・高知県・国土交通省四国地方整備局で構成)が行った、被災地域全域における住民アンケート調査では、行政からの情報も無い中で、危険を察知した地域住民同士による避難前後の活発な情報のやりとり、消防団・地区長などによる積極的な避難の呼びかけが行われていたことがわかっています。そして危険な状況下にあっても、消防団などによる避難支援活動が展開されたことで、1人の犠牲者も出さずに済みました。
さらにこの調査によると、避難しなかった住民よりも、避難した住民のほうが防災訓練に参加したことがある割合が比較的高く、また避難しなかった人よりも避難した人のほうが、避難所の場所を把握している割合が高かったという結果が示されています。普段の地域での人間関係、防災に対する心構えの大切さがわかります。
なお、高知県の豪雨災害というと、平成10年に16市町村に被害が及んだ大水害が思い起こされます。死者6人、負傷者12人、床上浸水12,370戸、床下浸水9,885戸にのぼり、避難者はピーク時に12市町村計1,457人を数えました。活動したボランティアも延べ8,000人以上ともいわれています。ぬれた畳や家具の運び出し、掃除、暖房器具の配布など、高知県では初めての大規模な災害ボランティア活動でした。
この豪雨災害のあと、高知県社会福祉協議会が中心となって、「災害ボランティア活動支援マニュアル」が作成されています。そしてこのときの活動でボランティア活動の輪が築かれ、この平成13年の高知県西南部豪雨災害でも、土佐清水市・大月町を中心に、マニュアルを活用した救援活動が積極的に展開されています。地元の高校生なども活動に参加しています。
もちろん、婦人防火クラブを含めた、地域を主体にした相互の救援活動を行うことができる体制づくり、普段からのご近所同士の関係づくりが、地域防災には不可欠です。特に、事例のような非常時における地域内の情報連絡や緊急的な避難誘導などについては地域が主体にならざるをえません。
そして、そのような地域の相互扶助の取り組みをベースにしつつ、必要に応じて外部の災害ボランティアとの有機的な連携がなされると、救援から復旧・復興における困難を低減できる可能性も高まります。
【参考資料】「高知県西南部豪雨災害に関するアンケート調査の結果を踏まえた防災対策について」『月刊建設』(2002)