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6-4 訓練方法




コラム 地域の資源・ネットワークを生かした防災訓練[東京都台東区・竹町中町会]


東京大空襲から街を守った歴史

台東区の南西部に位置する竹町中町会は、区内でも最も少子高齢化が進んでいる(高齢化率3割超)人口約10,000人の街です。東京大空襲では、地域住民が一丸となってバケツリレーを行い、奇跡的に延焼から街を守ったという歴史を持っています。この当時の記憶は、今もこの街に引き継がれており“自分たちの街を自分たちで守る”ために、普段から“安心・安全に暮らせる街づくり”が行われてきました。
※安心・安全な暮らしを守るための地域活動については、既に『日常活動編』で紹介したので、ここでは、実際の防災訓練の様子を紹介します。

地域の社会資源を生かした防災訓練-ハードとソフトの有機的な連携を目指して

戦災を免れた竹町中町には、関東大震災の後に建てられた“築70年”を超える木造家屋が現存しています。こうした旧い町並みを大切にしながら、その防災上の問題点も見据えた取り組みが、地域住民によって進められてきました。→『日常活動編』「安全・安心な暮らしを目指して」参照
平成13年に完成した「竹町公園」にも、災害時を想定した様々な「しかけ」が組み込まれています。たとえば、公園内には断水時にも使える手動ポンプ付きの井戸が設置されています。また、ベンチの座席を跳ね上げると、ガスが使えない時でも煮炊きできる「竈」が出てきます。そして公衆トイレの屋根には太陽電池が置かれています。しかも、これらの全てが、地域住民の希望や意見を反映して整備されていることも注目に値します。
ただ、こうした充実した設備も、非常時にうまく使いこなせないと意味がありません。2002年に竹町中町が中心となり、近隣4町会が行った合同防災訓練では、実際にこれらの「しかけ」を利用した訓練が行われました。
この訓練では、ベンチの竈でアルファ米を炊いたり、携帯トイレを使ってみる(組み立てトイレで用を足してそれを個々人が袋で持ち帰る)など、防災関係の設備を実際に利用しました。こうした町の防災訓練によってハード面の防災投資が効果を発揮するようになると言えるでしょう。
なお、この竹町地区の防災訓練は、行政が主催する9月の総合防災訓練に先立ち、8月末に行われています。役所や消防署・警察署は参加・協力する形でかかわっており、訓練の内容なども地域住民によって企画・運営されました。災害時の状況を想定しながら防災訓練を企画し、実行に移していくという取り組みを通じて、地域防災力は確実に向上していくことでしょう。

介護訓練-防災訓練が日常的な福祉活動の充実・強化に

2003年に台東区社会福祉協議会が竹町地区で行った「車いすによる避難の介助訓練」に触発されて、竹町中町でも同年、車いすを使った避難の介助訓練が行われました。
この訓練は、町会関係者だけではなく、地域にある特別介護老人ホームの職員の協力を得て行われました。健常な地域住民も、実際に車いすに乗り、段差の越え方を体験したり、道路に置いた廃材の上を越える、自分が車いすを押すという体験をしました。このことを通じて、避難の際車いすの人たちがどんな困難を抱え、危険にさらされるのかを「身をもって実感」できたと思います。
この防災訓練の実際の目的は介護体験と介助技術の向上にありますが、「防災訓練」という一つのイベントを通じて、地域福祉活動にかかわる人たちが互いに関係を再確認するきっかけが提供されることになりました。非常時の支援ネットワークが日常的な関係性を軸につくられていくという観点からも、また高齢社会を迎えている現状を考えても、防災活動と福祉活動との連携は今後の地域防災活動の重要課題であると言えましょう。
防災訓練当日の様子
防災訓練当日の様子
このベンチを跳ね上げると竈に
このベンチを跳ね上げると竈に
【参考資料】
・ヒアリング記録(2003年11月)
・台東区社会福祉協議会「たいとう区社協 自立」(会報第78号)