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4-2 日常生活の場面からの広がりを意識した活動




事例紹介 安心・安全な暮らしを目指して (東京都台東区・竹町中町会)


バケツリレーで東京大空襲から町を守る

台東区の南西部に位置する竹町中町会は、関東大震災直後に建築された、太い梁の通った三階建ての木造家屋が現存する人口約1,000人の町です。東京大空襲で大半を焼失した台東区の中で、竹町中町会は、地域住民が一丸となってバケツリレーを行い、奇跡的に延焼から街区を守ったという歴史をもっています。現在は区内で最も少子高齢化が進んでいる地区の一つとなってしまいましたが(高齢化率3割超)、当時の記憶は今もこの街に引き継がれており、“自分たちの街は自分たちで守る”、そのためにも普段から“安心・安全に暮らせるまちづくりをしていこう”という気概が感じられる町です。

安全な暮らし求めて地域活動進める

「防災」というテーマは、「緊急時の特別な対応」であり、そのための活動も「特別に」行われがちです。例えば防災訓練なども過去の大災害が起こった“記念日”(9月1日や1月17日)に、イベント的に行われる傾向があります。しかし、この町会では、「防災」というテーマを「緊急時の特別な対応」というよりはむしろ、「安心・安全な生活を送れるように、地域から“危険”を排除していく」という視点に立って捉えています。
例えば、高齢者が安心して老後を暮らせる、安心して育児ができる、放火や犯罪の被害にあいにくい、「いざ」という時も安心して居られる……ようにしていくためには、どんな条件が必要か?という観点から、地域活動を進めています。福祉も教育も防災も、それぞれが安心な暮らしを実現するための手段なのです。

災害時の高齢者支援対策を検討

その中で「防災」というテーマは、日常生活を点検し、安心に暮らせる地域の課題を明らかにさせるという役割も果たしているようです。例えば、日常的には何とかやれている高齢者の介護支援体制も、「災害が起こった場合、この体制で大丈夫か?」と考えてみます。緊急時の避難誘導は、普段対応しているヘルパーでは間に合いません。「やはり近隣住区で声を掛け合わなければならない。それでは、そのための態勢を整えよう」ということになります。そこでこの町会では、消防団が作製した大型消火器・消火栓・消火器の位置が記された「中竹防災分布図」の中に、75歳以上の高齢者が住んでいる家に印をつけ、それをもとに、「いざ」というときの態勢について検討を進めています。
また「避難生活が長期化するような災害の場合はどうだろう?」という視点に立ってみると、高齢化率3割超というこの町会の不安な実情が浮上してきます。「高齢者は劣悪な環境に居られないので、環境が整った福祉的な避難所が必要になるだろう。それなら、地域の公民館を災害弱者用避難所にしよう」という結論に達し、現在、備蓄などの準備を進めています。
いつ来るかわからない「いざ」に備えた活動は、忙しい日常生活の中で後回しにされがちですが、「自分たちのまちは自分たちで守る」「安心に暮らせる条件をつくっていく」という“コミュニティの原点”を一つ一つ確認していくことが、「防災」につながっていくことを、この町会の事例は教えてくれているように思えます。