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4-2 日常生活の場面からの広がりを意識した活動




コラム NPOによる防災イベント [NVNAD:わが町再発見ワークショップ]

■子供を対象にした防災マップ
日本災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)は、阪神大震災時の災害ボランティア活動(西宮ボランティアネットワーク)を引き継いで震災の1年後に設立されたNPOです。現在、災害に備えたネットワーク活動、地域防災活動、講座・研修の3つの柱を掲げて活動しています。以下ではこの中の「地域防災活動」を紹介しましょう。
このNPOが、地域防災活動に取り組むことになった直接のきっかけは、豊中市で「環境マップ」づくりにかかわっていた学生との出会いでした。住民主体のまちづくりで有名な豊中市では、中学校の授業の中で、街中のゴミの様子など環境にかかわる問題を、実際に街を歩きながら考え、写真や地図などを使って壁新聞にまとめていくといった取り組みを行っており、この学生から「こうした取り組みを防災にも応用できるのではないか」という提案を受けたのです。NVNADの内部でも、以前から防災にかかわる活動は大人を対象(想定)にしたものが殆どで、将来を担う子供を対象にした活動が少ないことが指摘されており、地域で行う子供を対象にした「防災マップづくり」の企画が持ちあがっていきました。

■自分の住む地域を知ることから始める
しかし、「防災は大切」「防災に役立つ地図を」と呼びかけて、果たして子供に受け入れてもらえるのか?という疑問も、同時に湧き起こってきました。そこで、「『防災のために』と言う前に、まず、自分の住む地域をもっとよく知り、自分の街に愛着を感じてもらうことから始め、自分の地域を大切に思う気持ちから防災意識の醸成につなげていこう」という発想の転換を図っていったと言います。もちろん、実際のプログラムの中には、防火水槽や消火栓をチェックしたり、消防署を訪問したり等々、防災について考える「仕掛け」もたくさん盛り込まれています。しかし、敢えて「防災」という言葉を前面に出さず、自分で発見したり、自然に気づけるようなものとして「防災」を扱うように配慮しているようです。このプログラムの副題である「防災と言わない防災」はまさにこのことを物語っていると言えるでしょう。

■子供の視点で発見された「危険」
この防災マップづくりは、1998年3月に西宮市浜脇校区で「わがまち再発見」と題した最初のワークショップを開催してから、2002年8月までの間にすでに10回以上行われてきました。実際のワークショップでは、まず子供たちを幾つかのグループに分け、チェックポイントが示された地図を渡してオリエンテーリング式に街を歩いてもらいます。各グループには大学生のボランティアリーダーが同行し、子供たちの安全確認やプログラムの進行を管理します。道中で発見したことは、戻ってから地図に書き込み、模造紙に、撮った写真などと張り合わせて、報告してもらいます。
子供たちは、歩きながら危険を感じる場所・ちょっと気になる場所にチェックを入れていきますが、危険を示す標識(防犯連絡所など)が漢字で書かれていて読めなかったり、子供の背丈では駅前に林立する自転車群に強い圧迫感をもつなど、子供の視点に立つことで発見された「危険」もありました。
またこのワークショップでは、対象が小学生であるため、親(保護者)の同伴も認めているそうです。親の同伴については議論があったようですが、「副次的な効果」ももたらしているといいます。例えば、子供と親が同じ体験を共有することで家庭内で防災について話す機会が増えたり、また親から学校に対して「子供たちが作製した防災マップを、小学校の廊下に張り出してほしい」という要望が出されて、実際に何度か実現しているそうです。
「このプログラムでは、『学んだ』『防災意識が高まった』といった直接的な成果はあまり期待しないようにしています。子供が、行事に参加して、人と出会って、普段の生活の中から新たな発見をして、それらを『楽しい』と思ってもらうこと……これが一番の収穫だと思っています」とスタッフは語っています。
(機関紙「NVNAD通信」及びNVNADのHPから引用)
「わがまち再発見ワークショップ」に参加した子供たち
「わがまち再発見ワークショップ」に参加した子供たち