(2)「図上訓練」という訓練手法 ―被災をシミュレーションする―
「図上訓練」とは、机上に「地図」を広げて行うシミュレーション訓練です。シミュレーションという言葉の通り、この訓練は、できるだけ客観的・科学的な根拠に基づいて行う点にポイントがあります。詳細は後述しますが、まず、自分たちの身にふりかかる被害の可能性を考え、調べて、手ごろな地図に書き込んでいきます。続いて、そうした被災状況に対して、自分たちがどのように対応しうるのかを「被災シナリオ」として描いていきます。シナリオが出来たら、それを作製した地図の上で「実演」してみます。うまく演じられなかった点は、実際の災害対応時の弱点として認識し、災害対策を充実させていきます。
ただし、演じた結果を、実際の災害対策に反映させるのであれば、現状を正確に反映させた「被災シナリオ」を書かなければなりません。現実味のある「被災シナリオ」をつくるためには、想定される被害データを集めたり、実際に地域を歩いて危険な箇所をチェックするなど、それなりの作業が要求されます。実はこの作業の中にこそ、「防災」に取り組んでいく際の―さらには日常生活の中に潜んでいるさまざまな危険を理解していくための―重要なヒントが盛り込まれているのです。以下、「図上訓練」の内容とその進め方を、手順を追って説明していきましょう。
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