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特集 「簡易図上訓練」の実施と訓練用「被災シナリオ作成」の方法




  概要

自分が生活している地域を取り上げて、その地域が強い地震に見舞われた場合に起こりうる事態(被害状況)を想定し、さらに、その事態が時間的経過の中でどのように展開していくのかを予測しながら、自分(家族・地域)がなすべき対応を「被災シナリオ」にまとめてみます。「災害」という事態をできるだけ客観的な根拠に基づいて想定してみること、災害時における人々の行動・地域の状況に対して洞察を深めていくことがポイントです。

1 図上訓練のねらい

(1)「予測しえない事態」について考える
隣近所の住民同士で、小学校の校庭や公園などの広場に集まり、消火器や三角巾を使った実演をして、そこから集団避難(帰宅)する……。これが、今までの典型的な「防災訓練」のあり方でした。しかし、予期しないときに起こり、予測しえない事態が展開していくのが、現実の「災害」です。
「前もって決められた日」=過去に大震災が起こった9月1日や1月17日など……に、
「あらかじめ決められた場所」=最寄りの小学校や公園など……に集まって、 
「毎回同じメニュー」=消火器の使用、応急救護の実演など……をこなしていくだけ
の訓練で、実際の災害に「備えられた」といえるでしょうか?
こうした従来型の訓練の問題点を克服し、「予測しえない事態」=“災害”について考え、対応していく能力を養うために、近年、「図上訓練」という新たな訓練手法が開発され、家庭や地域で行う防災訓練でも取り入れられるようになってきました。
(2)「図上訓練」という訓練手法 ―被災をシミュレーションする―
「図上訓練」とは、机上に「地図」を広げて行うシミュレーション訓練です。シミュレーションという言葉の通り、この訓練は、できるだけ客観的・科学的な根拠に基づいて行う点にポイントがあります。詳細は後述しますが、まず、自分たちの身にふりかかる被害の可能性を考え、調べて、手ごろな地図に書き込んでいきます。続いて、そうした被災状況に対して、自分たちがどのように対応しうるのかを「被災シナリオ」として描いていきます。シナリオが出来たら、それを作製した地図の上で「実演」してみます。うまく演じられなかった点は、実際の災害対応時の弱点として認識し、災害対策を充実させていきます。
ただし、演じた結果を、実際の災害対策に反映させるのであれば、現状を正確に反映させた「被災シナリオ」を書かなければなりません。現実味のある「被災シナリオ」をつくるためには、想定される被害データを集めたり、実際に地域を歩いて危険な箇所をチェックするなど、それなりの作業が要求されます。実はこの作業の中にこそ、「防災」に取り組んでいく際の―さらには日常生活の中に潜んでいるさまざまな危険を理解していくための―重要なヒントが盛り込まれているのです。以下、「図上訓練」の内容とその進め方を、手順を追って説明していきましょう。
「図上訓練」という訓練手法