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2010年10月

3.住警器共同購入等の事例紹介 ~第3回~

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 地域コミュニティにおける住警器の普及・展開活動において、複数の町会・自治会が連携するには時間や労力が必要となる一方、より多様な活動が可能となるメリットがあります。
今回は、葛西地区の88の町会・自治会が加入する葛西地区自治会連合会において、共同購入等が未実施であった32の町会・自治会が参加した共同購入事例について紹介します。

(総務省消防庁「消防の動き 2010年9月号」より

(1)地域・取組み主体の概要

 葛西地区は、江戸川区のほぼ3分の1の人口と面積を占める地域である。葛西地区自治会連合会には、この葛西地区に存在する100の町会・自治会のうち、88が加入している。
 この事例における共同購入では、既に共同購入等が実施されていた町会・自治会を除いた32の町会・自治会が参加し、共同購入を行った。

(2)共同購入の取組概要

 葛西地区自治会連合会では、平成22年4月1日より設置が義務化される住警器の重要性をかんがみ、加入している町会・自治会で協議の上、平成21年6月~平成21年9月までの3か月で住警器の共同購入を実施した。
 共同購入においては、既に取組等が進んでいた町会・自治会以外の32の町会・自治会が参加した。共同購入を行った結果、2万3,000個以上の申込みがあり、約4,700世帯への設置が行われた。また共同購入実施後も、購入したいという要望に応えて、同一の価格で購入できる即売会を複数回実施。これまでに5つの町会で開催されており、計約1,800個の住警器が購入・設置された。


取組主体:
人数等:



消防署等:
職員数:
地域:
人口/世帯数:

キーワード:
葛西地区自治会連合会
葛西地区の88の町会・自治会が加入
加入世帯数は10万4,838世帯
葛西消防署
183人
江戸川区(特別区)
65万3,944人/28万1,705世帯
●広報・周知(テレビ・ラジオ等、掲示物・配布物、説明会、戸別訪問)
●共同購入
●販売会
●集金方法の工夫
●設置支援
普及期
平成21年6月
共同購入の体制づくり・共同購入の実施
工夫点
①丁寧な説明会による町会・自治会の連携体制の構築
②メディア活用、戸別訪問等による積極的な広報の実施
③共同購入による安価な購入
④集金への配慮
⑤高齢者のみの世帯等への設置支援
フォロー期
平成22年3月
他の購入希望者へ向けたフォローの実施始
工夫点
⑥更なる普及のための即売会実施

(3)工夫点の紹介

工夫点①:丁寧な説明会による町会・自治会の連携体制の構築
●実施内容
 葛西地区自治会連合会には多くの町会・自治会が加入しているため、総会の他、いくつかの地域ごとに協議会が設置されているなど、階層だった組織となっている。この事例では、共同購入をスムーズに進めるために、総会において共同購入実施の決定やメーカーの選定が行われた後、協議会、さらにはそれぞれの町会・自治会の集会などの場で、丁寧な説明会が実施された。
 説明会実施については地域の消防署に依頼し、住警器の設置が必要となる背景の他、共同購入の流れについても詳しく解説し、各町会・自治会が行う必要のある作業等について理解できるよう工夫を施した。また、取付けのイメージを持ってもらうため、取付け実演セットを作成するなど、視覚的にも分かりやすい説明を心がけた。
●ポイント
 住警器の設置については、個人が自らの意思で購入しなければならないため、各個人の意識啓発が大きな課題となる。チラシ等による情報提供も重要ではあるが、一方で、購入の意思を固めるまでには、日頃からコミュニケーションをとっている町会や自治会からのアプローチが非常に大きな役割を果たすことが多い。この事例も、町会・自治会のコミュニティのつながりを活用して、普及に成功した事例の一つである。
 コミュニティの規模が大きくなればなるほど、説明会等のきめ細やかな対応は難しくなる傾向がある。しかしながらこの事例を含め、大規模な取組においてもできる限り多くの場で説明会を行ったことが、後の効果につながったと見られるケースも多い。また、取組の規模が大きいほど、既に取組が開始されている団体等との調整が必要なケースもある。こうした背景からも、丁寧な説明会の場を設けることが、活動の成功において重要なポイントであると考えられる。

工夫点②:メディア活用、戸別訪問等による積極的な広報の実施
●実施内容
 地元の消防署より、地元のケーブルテレビに対して自治会連合会の取組の情報提供を行った結果、町会での説明会の様子が取材され、1週間の間放映された。なお、これまでにも、例えば消防団の出初式や地域のお祭りに関する情報提供を行った結果、取材・放映される等、地域とケーブルテレビ局間での比較的活発な連携が行われている。
 また、地域の消防署と連携し、回覧等で共同購入の申込みを受け付けている期間、消防署員が戸別訪問を行い、住警器に関する説明を行った。
●ポイント
 地元のテレビ局や新聞社など、メディアに取り上げられることにより、広報効果はもちろん、取り組んでいる人のモチベーション向上も期待できる。この事例において、ケーブルテレビに取り上げられるきっかけとなったのは、自治会連合会からの情報提供であるが、取り上げられる・ないに関わらず、日頃よりメディアに対してこのように情報提供を行っておくことにより、必要な時に取り上げられる可能性が高まる。
 また、「工夫点①」でも示したとおり、各個人の意識啓発という観点からは、戸別訪問等の各個人へのアプローチも重要な取組であるといえる。取組主体の規模が大きくなればなるほど、戸別訪問にかかる労力は大きくなるが、今回の事例のように消防署と連携する等の方法により実施することができれば、取組の更なる効果が期待できる。

工夫点③:共同購入による安価な購入
●実施内容
 共同購入においては、まず自治会連合会が主体となってメーカーの選定や住警器配布の大まかな段取り等を行い、各町会・自治会は自らの地域の購入希望を取りまとめ、集金、配布を行った。「工夫点②」の広報も活用しながら共同購入を進めた結果、計2万3,000個以上の申込みが集まった。
●ポイント
 購入価格については、他の事例と同様、取りまとめて大量購入を行うことにより、一台あたりの購入価格を抑えることを実現している。
 また、「工夫点①」に紹介した説明会の中では、各町会・自治会が負担する役割を理解しやすいよう、共同購入の流れを分かりやすくまとめたフローチャートを示すなどの工夫が施されたことが、円滑な共同購入実施へとつながったと考えられる。

工夫点④:集金への配慮
●実施内容
 集金がスムーズに行われるよう、集金及び住警器配布のフロー例を作成した。フロー例については、町会・自治会の各班長が集金や住警器配布を行う例や、メーカーが指定する日時及び場所に各個人が受け取りに行く例など、複数のケースについて用意した。
●ポイント
 住警器は単価が比較的高いため、共同購入を行う際には、集金業務が大きな課題の一つになることもある。購入規模が大きい場合、ある程度取りまとめた上での支払いをメーカーより求められることもあるが、集金を実施する場合、後々のトラブル防止のためにも、入念に準備を行うことが重要となる。
 地域コミュニティ内でどなたかが集金業務を担当される場合、金銭を扱う業務に慣れていない可能性も考えられるため、準備の際の参考となるフロー例を用意することは、共同購入の円滑な実施のために効果的であると考えられる。

工夫点⑤:高齢者のみの世帯等への設置支援
●実施内容
 住警器は天井や壁の高い位置に取り付ける必要があるため、高齢者のみの世帯等、自力での設置が困難な世帯には、地域の消防団がバックアップして設置支援を行った。
●ポイント
 配布した住警器が実際に活用されるためには、正しい方法で設置される必要がある。そのため、各世帯で購入された住警器が効果を発揮するためには、自力設置が困難な世帯等に対し、しっかりと設置のフォローまでを行っていくことも重要な取組となる。

工夫点⑥:更なる普及のための即売会実施
●実施内容
 共同購入では購入しなかったが購入を検討している世帯、追加で購入を希望する世帯等、共同購入後に出てきたニーズに対応するため、住警器の即売会を実施した。即売会は、希望のあった5町会・自治会で行われ、メーカーと交渉して共同購入時と同価格での提供を実現。また、共同購入時と同じく、ケーブルテレビでの放送や、消防署と連携した戸別訪問などを行って広報活動を行った結果、約1,800個が販売された。
●ポイント
 1回の共同購入実施では、様々な事情により、すべての世帯の購入には至らないことも多い。一方で、共同購入の実施には多くの労力がかかるため、何度も実施することは困難である。この事例では、「即売会」を開くことで、共同購入後の購入相談に対応した。「即売会」のメリットとしては、住警器の受渡しや集金面で町会・自治会にかかる負担が比較的少なくなることが挙げられる。住警器の認知度が高まっている状況では、購入者のある程度の確保も期待できるため、共同購入実施後の普及策として、効果的な対応の一つであると考えられる。

(4)その他のポイント等

●日々の防災活動の活用
 この事例においては、共同購入における広報施策として、ケーブルテレビでの放送や、消防署と連携した戸別訪問の実施などが行われた。これらは、住警器の共同購入のために新たに行われた取組ではなく、これまで、地域コミュニティの防災活動の一環として行われてきた活動である。
 住警器に関する取組については、日頃からの防災活動の一環としていかに取り込んでいけるかという点も、スムーズな実施のための重要な観点となる。
●行政との連携
 共同購入実施にあたっては、32の町会・自治会が一斉に取り組むため、問い合わせ等が多数発生することが予想された。そこで江戸川区役所葛西事務所が窓口となり、各関係者と確認を取りながら問い合わせ対応を実施。葛西事務所には、葛西地区自治会連合会の事務局が設置されており、日頃より行政と地域コミュニティが、連携して活動を展開している。
 以上のように、行政機関である葛西事務所が、関係者連携の橋渡しとしての役割を果たしたことも、この共同購入の取組がスムーズに進んだ理由の一つであるといえる。行政と地域コミュニティの連携がうまく機能することにより、更なる効率的・効果的な活動が可能となる。


 次回は、1,300戸以上が入居する大規模な集合住宅において、管理組合が主体となり設置を進めることで、設置率100%を達成した「集合住宅の管理組合における住警器の設置促進活動(取組主体:なぎさニュータウン管理組合(東京都江戸川区))」を紹介します。
 なお、本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。
〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html

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