日本列島は、その位置、地形、気象等の条件から、地震、台風や梅雨前線による集中豪雨、大雪等による自然災害が発生しやすい環境にあり、昨年も、台風やその影響による集中豪雨等の幾多の自然災害により多くの被害が発生しました。
近年、気候変動の影響等による既存の想定を上回る災害の発生や、いつ起きてもおかしくないとされる南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模地震の切迫性に加えて、火山災害や雪害といった、過去の災害教訓を踏まえると、行政による対応のみでは被災者の救助や消火活動等に限界があるため、住民自身・相互の活動体制をいかに整えるかが課題となっています。
そこで、「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚、連帯感に基づき、自主的に結成された組織が自主防災組織です。平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機にその重要性が見直され、全国各地で積極的な組織の結成・育成に取り組まれています(平成31年4月1日現在、16万7,158団体)。自主防災組織は、平常時には防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、災害危険箇所の点検、資器材の購入・点検等を行い、災害時においては初期消火、避難誘導、救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所の巡視などを行います。
連携による活動の活性化
地域の安心安全を守るために活動している自主防災組織が、地域の垣根を越えて互いに連携し、また、消防団、学校、企業など地域の様々な防災活動団体と連携し、お互いの得意分野を活かして補完し合うことで、地域の防災力をより高めることが出来るようになります(図)。
今回は、地域における先進的な事例として、地域のつながりを生かした防災に強いまちづくりを進め、「第24回防災まちづくり大賞」において、総務大臣賞を受賞された横浜市の鶴見区市場西中町(いちばにしなかちょう)まちづくり協議会の取組を紹介します。
市場西中町地区は、旧東海道に沿って発展してきた下町のにぎわい、人間関係の良さが魅力のまちです。一方で、密集市街地の多くは、防災上の問題を抱えており、横浜市との協働体制のもと、まちづくり協議会を設立して防災まちづくり計画を策定し、それに基づく活動に精力的に取り組んでいます。
その結果、耐震・耐火に配慮した建物や安全タイプのブロック塀が増えるなど、地域の安全性が高まっています。
鶴見区市場西中町まちづくり協議会による
公園づくりの協議の様子
(出展:第24回防災まちづくり大賞)
また、まちづくり協議会が地権者と交渉して確保した用地を市が購入し、2箇所の防災設備を備えた公園を整備したり、道路の拡幅と歩道の整備、行き止まり解消用避難扉の設置や避難経路の特定が容易な通り名称の設定、私道の舗装化等の多くの成果をあげています。
本事例は、住民が地域の歴史とつながりを生かしながら災害に強くかつ住みよいまちづくりを行政との協働のもとに有機的・効果的に進めてきたものであり、同様の問題を抱える地域・行政の参考となる点が多い取組です。
このように、普段から地域の関係団体と連携・協力関係を築き、地域における人的ネットワーク(つながり、結びつき)を広げ、地域コミュニティの強化を図ることが、いざという時に大きな力となります。
自主防災組織については、消防庁が作成した「自主防災組織の手引」に詳しく記載しています。下記のURLからご覧いただけますので、ぜひ参考にしてください。
●「自主防災組織の手引」(平成29年3月改訂)
https://www.fdma.go.jp/mission/bousai/ikusei/items/bousai_2904.pdf
(総務省消防庁「消防の動き」 2020年7月号より)