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2023年5月

1. 女性防火クラブ活動の一層の活性化について

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一般財団法人 日本防火・防災協会

 我が国の女性防火クラブは、制度発足以来60年を迎え、この間、地域防災力充実強化法において明確に位置付けられるなど、国民の安全確保に大きな役割を果たしてまいりました。
 しかしながら、近年、女性防火クラブの団体数及びクラブ員数ともに減少傾向が見られ、地域防災力への影響、ひいては幅広い国民の皆さまの安全への大きな影響が懸念されます。

 当協会では、各地域の女性防火クラブの連合体である道府県女性防火クラブ連絡協議会の会長を窓口として活動現場の声を直接お聞きし、現在女性防火クラブが抱えている問題点を把握して解決を図るとともに、さらに、女性防火クラブ活動が一層活性化するため意見をまとめ、国等の関係機関に要望し、ご理解とご協力を呼び掛けております。

「女性防火クラブ活動の一層の活性化について」の要望内容は次のとおりです。

1 女性防火クラブの具体的な活動及びその重要性についての周知

  • (1) 女性防火クラブは、発足以来、火災の発生防止、災害発生時の避難行動、避難所での生活支援などで貴重な活動を行い、これにより多くの人々の安全確保に多大な貢献をしてきた。
     具体的な例を一つ挙げれば、各住宅の火災警報器は、出火時の初期消火、避難に大きな効果をもたらしており、全国の設置率は約84%にまで達しているが、これは、全国の女性防火クラブの皆さんの火災予防への強いお気持ちと地道な働きかけによるものといえる。
     この住警器については、耐用年数の到来による交換、複合的な機能をもつ新たな機器の配置などが新たな課題となっているが、これらについての今後の方向性を明らかにするとともに、購入経費についての配慮が必要と考えられる。こうした課題を整理しながら、引き続き女性防火クラブが円滑に対応することができるようにする必要がある。

  • (2) 女性防火クラブの存在と活動を周知することの重要性が増大しているが、若年層などへの周知を徹底するためには、家族の方々、職場の仲間、友人など幅広い方々のご理解を得ることが重要であり、また具体的な活動内容の周知については、消防関係者はもとより、地域の防火防災に直接関わりをもつ町村の対応が重要である。さらに、国や一般報道機関の協力も不可欠である。また、周知の手法についても時代の進展に対応した多様なものが求められる。

  • (3) 全国各地の女性防火クラブは、それぞれの地域の状況やメンバーの思いのもとにさまざまな活動を積極的に展開している。この全国各地の具体的な活動の内容・方法を全国の女性防火クラブのメンバーや地域防災関係者、町村の皆さんに周知し、その情報を共有することにより、全国各地の活動を一層活発化させることも必要である。

2 活動内容の一層の充実
 火災や自然災害の状況は時代とともに変化しており、女性防火クラブがその変化に的確に対応し、安全確保にさらに貢献するためには、研修・訓練の充実、装備・設備の改善、関連情報の的確な把握などが益々重要となっている。
 そのため、想定される活動に必要な装備・設備を整備して、活動環境を改善するとともに、そのような装備を用いた研修、訓練の機会を設けることが必要であり、これを実行するためには具体的な実施内容の提示、現場での指導など消防機関や町村担当部局の協力が必要となる。そして、このような状況を全国的に整えていくことが、全国的な体制強化に発展する。
 また、このような活動内容の充実を進めていく過程において、県内あるいは全国レベルでの女性防火クラブの研修機会や情報交流の場の整備が望まれている。
 これらを実行するためには、運営資金の確保が必要である。
 また、このような活動の展開においても1に述べた女性防火クラブのPRが重要であり、一般報道も含めた、可能な限りのいろいろな機会での周知、広報活動が大きな意味を有する。

3 さまざまな合同イベントの開催
 2でも述べたように、女性防火クラブの新たな発展のためには、クラブ所在の地元地域、町村区域、県内全域、地方ブロック単位、全国など、さまざまな地域単位での集会が開催され、そこに参加することによりさまざまな情報収集、未経験の活動の見聞、新たな仲間や交流の誕生などがなされることが重要である。さらに、単に女性防火クラブだけにとどまらず、地域防災体制を担う消防関係者をはじめ、地域の自主防災組織メンバー、幼少年消防クラブメンバー、企業団体関係者、町村職員等の関係者も参加するイベントにまで発展すればより大きな効果が生ずることが期待される。これらの実現にも資金の確保が必要となる。

4 女性防火クラブの増加、クラブメンバーの確保
 女性防火クラブのメンバーは、平成22年の172万人から令和3年は108万人にまで減少し、女性防火クラブの数も平成22年の10,709団体から令和3年は7,236団体に減少している。このことは地域防災体制の充実強化という観点からも大きな問題であり、メンバー確保には最善の努力をしなければならない。その方策としてはこれまでに述べたことのひとつひとつが肝要であるが、自分たちの活動は社会にとって重要だ、という使命感をもつことができ、広く地域の人々、世の中の人々からその活動が評価されている、という実感をもつことができるようにすることが基本である。そのための方策の一つとして、女性防火クラブのメンバーが消防防災に関する公的機関の委員などに選ばれ、あるいは公式の大会や会合に出席して、多くの人々にその活動が認知されるようにして欲しいなどの意見がある。さまざまな公的情報や一般報道において女性防火クラブの活動やその重要性がとりあげられることには大きな効果がある。
 女性防火クラブメンバーの確保が困難となっていることの背景として、近年、女性の企業等への勤務が増加し、地域のボランティア的な活動に参加しにくいという事例が増加しているということも指摘されているが、女性防火クラブの中にはそのような事情を持つ方々と仕事のことにも十分配慮しながら、可能な方法での参加のあり方などについて相互の実情を率直に語り合い、信頼関係を築くようにしている例も見られる。このような取組事例も広く周知し、地域の実情に応じて円滑にメンバーを確保することができるよう、一層幅広い情報提供をすることも必要であろう。

5 地域防災体制強化への一層の前進
 女性防火クラブに関していろいろな課題を列挙したが、このことは地域防災体制強化の根本的な課題のひとつであり、単に女性防火クラブだけの問題ではない。
 火災、自然災害が発生した時、男性の多くが不在であって女性が中心的な対応をせざるを得ない場合も見られ、そのような時、女性防火クラブが地域防災体制の重要な柱となるが、いうまでもなく、地域防災体制の充実強化のためには、女性防火クラブのみならず、地域の皆さんの総参加総活躍による体制整備が必要であり、そのような体制づくりを進めるうえでも、女性防火クラブなど女性の皆さんの働きは、大きな意味をもつ。これまでに指摘した研修、訓練、広報などが、女性の活動拡大、女性防火クラブの発展、さらに地域防災体制の充実強化へとつながっていくことが期待される。

 女性防火クラブの推移<総務省消防庁調>

平成10年 平成13年 平成18年 平成23年 平成28年 令和3年
女性(婦人)防火クラブ員数 2,496,480 2,337,364 1,952,599 1,569,716 1,316,900 1,079,273
女性(婦人)防火クラブ組織数 15,199 14,812 12,431 10,381 8,631 7,236

女性防火クラブ員・団体数の推移(平成10年~)
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