各地域では、平成23年6月までに、全ての住宅に住警器を設置することを目標として、啓発活動や共同購入など様々な取組が行われています。今回は、日頃の地域に根ざした防火活動を通じて、地区における普及率ほぼ100%を達成した婦人(女性)防火クラブによる共同購入事例を紹介します。
(総務省消防庁「消防の動き 2011年2月号」より)
(1)地域・取組主体の概要
宇治市笠取地区は市街地から離れた山間部に位置しており、京滋バイパス開通前は宇治市街から数十分を要する地域であった。また兼業農林業従事者が多いという地域事情とサラリーマン化の進展により、昼間人口は高齢者と女性が多数を占めている。
約30年前、自衛消防力強化のために笠取婦人防火クラブが婦人会の一部メンバーにて発足した。日常活動として巡回広報や山火事防止の山林パトロール、山林火災発生時の炊き出し等の支援を行っているほか、消火の面では、設立当初は消火器取扱訓練から始め、現在では軽可搬消防ポンプも使用している。
取組主体: | 笠取婦人防火クラブ(現:宇治市消防団あさぎり分団笠取支部) |
人数等: | 11人 |
消防署等: | 宇治市消防本部 |
職員数: | 204人 |
地域: | 京都府宇治市 |
人口/世帯数: | 18万9,591人/6万9,354世帯 笠取地区は約100世帯 |
キーワード: | ●広報・周知(アンケート、回覧、戸別訪問) ●必要数確認の工夫 ●共同購入 ●設置支援 |
普 及 期 | 平成19年 設置促進活動実施の決定 |
工夫点 | |
①他の地域での事例等についての情報収集 ②消防署と婦人(女性)防火クラブの協力 |
展 開 期 | 平成20年7月 購入意向のアンケートを開始 平成20年9月~11月 共同購入事業を実施(全3回) |
工夫点 | |
③戸別訪問、意向アンケートの実施 ④共同購入による住警器の安価な提供 ⑤取付支援の実施 |
(2)共同購入の取組概要
地域に根ざした防火活動を通じた信頼関係を基に、戸別訪問を重ねることにより、多くの共同購入の申込を得て、地区における普及率ほぼ100%を達成した。
(3)工夫点の紹介
工夫点①:他の地域での事例等についての情報収集
●実施内容
婦人(女性)防火クラブの全国大会や研修会、地区の会合等に出席することにより、住警器の設置義務が生じることや、地域での普及活動の先行事例においては地域の理解を得るために時間を要していることなどを知った。そこで、義務化まで「まだ2年ある……1年ある……」と考えずに、早期に実施することとした。
●ポイント
婦人(女性)防火クラブにおける日常の活動や情報収集を活発に行っていることが、早くからの取組開始につながっている。
工夫点②:消防署と婦人(女性)防火クラブの協力
●実施内容
共同購入実施の意向を消防署に伝え、共同購入の手順、見積りの取り方・販売業者の紹介、回覧文書の作成方法などについて支援を受けた。
●ポイント
取組の早い段階から消防署に相談し、消防署と婦人(女性)防火クラブとが、手続き等の実務面と戸別訪問等、それぞれの得意分野をうまく役割分担し協力している。
工夫点③:戸別訪問、意向アンケートの実施
●実施内容
まずは事前見積りを行って大まかな価格をつかみ、各町内会の代表者の協力の下、戸別訪問し、その見積価格を示して共同購入を呼び掛け、購入希望数(約100個)を把握した。
その後、購入希望数を基に見積りを行ったところ、更に安価で購入できることとなり、実際の注文数が増加した(約120個)。また追加設置の希望等に応じて、2回の追加共同購入を行った。
●ポイント
地元の消防団及び婦人(女性)防火クラブ員、各町内会の代表者が、各世帯に購入希望数把握の際と購入申込の際に重ねて訪問し、また共同購入に積極的ではない世消防署作成パンフレット(他団体向け、共同購入の手引き)最初の回覧(お願い文書)帯に対しては重ねて訪問し説明することにより、多くの協力・賛同が得られた。
工夫点④:共同購入による住警器の安価な提供
●実施内容
4社から見積りを取り、価格が最も安かったところから購入することとした。
●ポイント
比較的小規模な団体・地域であっても、複数社から見積りをとることが重要である。
工夫点⑤:取付支援の実施
●実施内容
住警器の配付は、地区の防火クラブ員が戸別訪問で行い、品物と引き替えに集金した。この際に取付支援の希望の有無を確認し、後日、消防団員や防火クラブ員が行った。
●ポイント
比較的小規模な地域における、きめ細やかな対応である。
(4)その他のポイント等
●他の地域への波及効果
宇治市で開催された住宅防火対策推進シンポジウムにパネリストとして参加し、共同購入の内容を紹介した。また、隣接地域から「同様の取組をしたい」との話があり、手順等を教えた。
早期に積極的に取り組んだことで、自分たちの地域だけではなく、周囲における普及にも役立っている。
(5)今後の取組予定
●更新対策
共同購入したことにより、電池交換の時期は同時(10年後)に来ると思われる。その際には機器更新や電池購入し、交換支援を実施することを考えている。
次回は、地域ごとの特性を柔軟に活かしつつ、区長協議会が中心となって共同購入活動を実施した「地区ごとの柔軟な取組を活かした自治体全域での共同購入活動(取組主体:三木市住宅火災警報器設置推進協議会(兵庫県三木市))」を紹介します。
なお、本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html