総務省消防庁では、全国の救急業務及び救助業務の実施状況等の調査を毎年実施しており、今般、その調査結果を「平成22年救急・救助の概要(速報)」として発表しました。
※東日本大震災により、平成22年中のデータが消失したため、一部の消防本部のデータが反映されていません。
1 救急出動件数、搬送人員ともに過去最多
平成22年中の救急自動車の出動件数は、前年に比べて約34万件増加(6.6%)し、約546万件でした。また、搬送人員は、前年に比べて約29万6千人増加(6.3%)し、約498万人となりました。
- 救急自動車の出動件数及び搬送人員はそれぞれ546万2,848件(対前年比34万622件、6.6%増)、497万8,701人(同29万5,710人、6.3%増)で、過去最多となりました。
- 平成10年から平成17年の救急出動件数の対前年平均増加率は5.3%で、平成18年から平成21年については横ばい傾向にありましたが、平成22年の対前増加率は6.6%で、平成7年以降最大の増加率となりました。
- 救急自動車は5.8秒(前年6.2秒)に1回の割合で出動しており、国民の26人(前年27人)に1人が搬送されたことになります。
- 現場到着までの時間は全国平均で8.1分(前年7.9分)、病院収容までの時間は全国平均で37.4分(前年36.1分)となっており、過去最長となりました。
2 救急体制の充実と救急業務の高度化は着実に進展
平成23年4月現在の救急隊数は4977隊、救急業務に従事している救急救命士は22,147人で年々増加し、救急救命士が行う「器具による気道確保」、「除細動」、「静脈路確保」、「薬剤投与」、等の救急救命処置内容・件数も充実してきています。
- 平成23年4月現在の救急隊数は4,977隊(前年4,910隊)で、年々救急隊数は増加しています。
- 器具による気道確保、除細動、静脈路確保及び平成18年4月より実施可能となった薬剤投与といった救急救命士が救急救命士法に基づいて行う救命処置件数は合計で105,654件(対前年比8.7%増加)にのぼり、年々増加しています。
3 搬送人員の50.4%が入院加療を必要としない傷病者
平成22年中の救急搬送人員を傷病程度別割合でみると、「軽症」が50.4%で、救急搬送人員に占める「軽症」の割合は減少傾向にあります。
- 平成22年中の救急自動車による搬送人員497万8,701人のうち、東日本大震災により、平成22年中データ消失831人を除く497万7,870人の傷病程度別割合をみると、入院加療を必要としない軽症傷病者は50.4%となっており、平成18年から年々減少しています。一方、中等症傷病者(1日以上3週間未満の入院が必要)の割合は増加しています。
4 バイスタンダーによる応急手当件数は過去最高
消防機関の実施する応急手当普及講習の修了者数は、平成22年中は約149万人が修了し、実際に救急搬送の対象となった心肺機能停止症例の約42.7%において、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)により応急手当(胸骨圧迫【心臓マッサージ】・人工呼吸・AED【自動体外式除細動器】による除細動)が実施されています。
- 市民による応急手当が実施された傷病者数は、全国の救急隊が搬送した心肺機能停止傷病者数の42.7%(前年は42.7%)にあたる52,524人に及んでおり、年々増加しています。
- 応急手当普及講習の修了者数は、148万8,733人となり、国民の86人に1人が受講したことになります。(前年は82人に1人)
- 普通救命講習受講者数は平成20年中(1,541,459人)を最高に、2年連続減少傾向にあります。
5 心肺機能停止傷病者の1ヶ月後の生存率は横ばいで社会復帰率は0.2ポイント低下
平成22年中に救急搬送された心肺機能停止傷病者のうち、心原性かつ一般市民により目撃のあった症例の1ヶ月後の生存率は、平成21年中と変化なく、1ヶ月後社会復帰率は平成21年中に比べ、0.2ポイント低下しています。
- 平成22年中に救急搬送された心肺機能停止傷病者のうち、心原性かつ一般市民により目撃のあった症例1ヶ月後生存率は11.4%で、平成21年中と変化はありませんでした。平成17年中と比べ、4.2ポイント上昇となっています。
- また、1ヶ月後社会復帰率については6.9%で、平成21年中と比べ、0.2ポイント低下しました。平成17年中と比べ、3.6ポイント上昇となっています。
6 交通事故による救助出動件数、建物等による事故の救助活動件数がそれぞれ第1位
平成22年中の救助出動件数は、8万4,264件(前年比2,697件増)、救助活動件数は、5万5,031件(前年比1,917件増)となっています。
- 平成22年中の救助出動件数(救助隊が出動した件数)は、全体で8万4,264件であり、交通事故によるものが2万9,015件(全体の34.4%)で昭和55年以降、第1位の出動原因となっています。
- 一方、救助活動件数(救助隊が実際に活動した件数)は、全体で5万5,031件であり、建物等による事故が1万9,232件(全体の35.0%)で、平成20年以降、第1位の活動種別となっています。
7 消防防災ヘリコプターによる救急出動件数が過去最多
消防防災ヘリコプターによる救急出動件数は年々増加し、平成22年中は過去最多の3,942件となりました。
- 平成22年中の消防防災ヘリコプターによる全出動件数は7,218件であり、そのうち救急による出動件数が3,942件(全体の54.6%、対前年比232件増)と過去最多を記録しまた。