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2022年8月

3.住民自らによる災害の備え

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総務省消防庁 地域防災室

 日本列島は、その位置、地形、気象等の条件から、地震、台風や梅雨前線による集中豪雨、大雪等による自然災害が発生しやすい環境にあり、昨年も、台風やその影響による集中豪雨等の幾多の自然災害により多くの被害が発生しました。
 近年、気候変動の影響等による既存の想定を上回る災害の発生や、いつ起きてもおかしくないとされる南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模地震の切迫性に加えて、火山災害や雪害といった、過去の災害教訓を踏まえると、行政による対応のみでは被災者の救助や消火活動等に限界があるため、住民自身・相互の活動体制をいかに整えるかが課題となっています。
 そこで、「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚、連帯感に基づき、自主的に結成された組織が自主防災組織です。平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機にその重要性が見直され、全国各地で積極的な組織の結成・育成に取り組まれています。(令和2年4月1日現在、16万9,205団体)。自主防災組織は、平常時には防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、災害危険箇所の点検、資器材の購入・点検等を行い、災害時においては初期消火、避難誘導、救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所の巡視などを行います。


連携による活動の活性化
 地域の安心安全を守るために活動している自主防災組織が、地域の垣根を越えて互いに連携し、また、消防団、学校、企業など地域の様々な防災活動団体と連携し、お互いの得意分野を活かして補完し合うことで、地域の防災力をより高めることが出来るようになります(図)。
 今回は、地域における先進的な事例として、「第26回(令和3年度)防災まちづくり大賞」において、総務大臣賞を受賞された島根県隠岐の島町の西郷中町町内会連合会の取組を紹介します。

(図) 様々な関係機関との連携により期待できること


西郷中町町内会連合会「避難は早めに」
土砂災害図上訓練時の様子
(出展:第26回防災まちづくり大賞)

 西郷地区は、以前は県内でも有数の商店街として賑わいがありましたが、若年層の地区外流出などの影響もあり、住民同士の繋がりが薄れている状況となっていました。孤独死や火災による死者も発生するような事態に危機感を覚えた地域住民により、地域の縁を結い直そうと高齢者宅への訪問活動が始まり、さらには災害に備えた自主防災事業が不可欠との考えから、自治会の総会で防災会がつくられることが決定されました。

 西郷中町町内会連合会の活動は、防災会、えんつくりの会、暮らし応援会、サロン、子ども防災巡回など様々な活動をおこなっています。夏休みに、扉をたたき、「災害用心、火の用心」と言って回る子ども防災巡回などのユニークな活動や、長年継続している避難訓練などがあります。防災会メンバーだけでも、年2回~ 3回訓練や講習会を行い、近年は地域の施設に声を掛け合同の訓練を行ったり、夜の訓練も行っています。
 活動当初は近所の人の顔も知らないなどの声もあったようですが、当初から行っている「えんつくりの会(高齢者宅などへの地道な声かけ活動)」により、住民同士が自然と声を掛け合って防災活動へ参加するような土壌が生まれています。
 地域住民とのつながりを活かして防災まちづくりを進めていきたいと考える地域の参考となる取組です。
 このように、普段から地域の関係団体と連携・協力関係を築き、地域における人的ネットワーク(つながり、結びつき)を広げ、地域コミュニティの強化を図ることが、いざという時に大きな力となります。自主防災組織については、消防庁が作成した「自主防災組織の手引」に詳しく記載しています。下記のURLからご覧いただけますので、ぜひ参考にしてください。

https://www.fdma.go.jp/mission/bousai/ikusei/items/bousai_2904.pdf

(総務省消防庁「消防の動き」 2022年7月号より)

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