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2006年4月

3.第6回応急手当普及啓発推進会議、平成17年度全国婦人防火連合会総会おける講演について

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 日本消防会館5階大会議室において、2月21日(火)第6回応急手当普及啓発推進会議が開催され、2月 22日(水)には平成17年度全国婦人防火連合会総会が開催されました。
 第6回応急手当普及啓発推進会議では、救急振興財団副理事長 朝日信夫氏による講演「応急手当と 救急業務」が行われました。救急手当の重要性、AED(自動対外式除細動器)の役割や最近の救急 業務について、そして、お店で倒れたお客さんに店長が心肺蘇生を行い、通報を受けた救急隊員が引 き継ぎ、救急救命センターへ繋げるという救命連鎖の実例などを交えて話されました。
 また、富士常葉大学環境防災学部教授 重川希志依氏より「住民が主役の防災まちづくり」と題し、 阪神淡路大震災における地域での消防活動、防災活動に携わってこられた方々の話を元に、私達が今 何を備えるべきかについて講演が行われました。
 平成17年度全国婦人防火連合会総会では、消防庁国民保護・防災部防災課長 金谷裕弘氏による「地 域防災力の向上について」の講演が行われ、最近の日本における災害の状況、それを踏まえ日本が今 どのような状況に置かれているか、それに対する消防庁の取組等についての内容に出席者の都道府県 婦人防火クラブ連絡協議会会長等は熱心に耳をかたむけていました。
 両日とも、参加の皆様に大変ご好評をいただきましたので、各講演次第を講演資料と併せて掲載い たします。

(財)救急振興財団副理事長 朝日 信夫

皆さん、こんにちは。
 皆様方がそれぞれの地域のクラブを通じて、応急手当の普及 啓発活動にご尽力されていることにつきまして、心からお礼を 申し上げます。  
 本日は、大きくは二つの話をさせていただきます。一つは、 応急手当の大切さ、特に最近はAEDという優れた救命機器が 出て参りましたので、そのことを含めての応急手当の大切さに ついて先ずお話します。二つめの話は、実は消防の救急業務は この10年余の間に大きく様変わりし、レベルアップしてきて ますので、そのご紹介をしたいと思います。あわせて、救急車が呼ばれる件数が増加し続け、各地の 消防が対策に悩んでいますので、その辺の状況もお話できればと思っています。
講演資料1(PDF)
講演資料2(PDF)
講演資料3(PDF)

1 応急手当の重要性と「救命の連鎖」
 最初に応急手当の大切さについてお話します。皆様は既に自ら救命講習を受けておられ、さらに応 急手当の普及員や指導員資格をお持ちの方もいらっしゃるでしょうから、ひとつ復習のつもりでお聞 き取り下さい。資料の最初の頁をご覧下さい。
 この頁中程の図2に、「カーラーの曲線」が描かれています。これは、心臓が止まったままで放置 しておくと何分後に死に至るかということを、確率として分かり易く示した曲線です。心臓が止まり ますと大体3分経ちますと50%の死亡率に、もっと時間が経つと100%ということになります。 呼吸が止まると酸素の供給が絶え体内の二酸化炭素の濃度が増して死に至りますが、この場合は大体 10分経過で5割の人が死に至る。さらに大出血の場合、2割ほど出血すると出血性ショックという 重篤な状態に陥り、3割も出血すると生命が危険な状態になるといわれてますが、大出血の場合は大 体30分で5割の方が死に至るというわけです。
 これに対して、救急車を呼んでも救急車が現場に駆けつける平均時間は、最近では6.4分という ことになってます。年々延びて困ってますが、全国平均では6分以上かかっています。ということ は、救急車をすぐ呼んでも、例えば心臓停止の場合には半数以上が死に至る可能性があるわけです。 その意味で、救急車が到着するまでの間に何をするのかが重要になるわけで、それが居合わせた人に よる応急手当を!ということになるわけです。
 図1は、「救命の連鎖」といわれています。 一番左の輪には「先ず早い119番通報を」、その右 の次の輪は、救急車が到着する前に居合わせた方による「応急手当」、この輪の左側では心臓マッサ ージしてますし、右側ではAEDという救命器で市民の方が電気ショックを与えている様子が書かれ ており、救急車が到着する前にそれらの処置が行われれば効果があるというわけです。三つ目の輪で は、現場に救急隊が到着しまして「救急救命士を始めとした救急隊員による高度な応急処置」が行わ れる。そして最後の四つ目、一番右の輪では運び込まれた「病院で高度な医療処置」が行われる。こ うした「119番通報」から「病院での処置」に至る一連の処置が連鎖、上手く鎖でつながってはじ めて命が救われるということを示しています。逆に言うとこれらが上手くつながりませんと、助かる 命も助からないということになるわけです。どんなに救急隊とか医療機関が立派に備わってましても 効果は限られまして、先ず第一歩のところ、市民の方による応急手当が普及してるかどうかが救命率 を上げる大きなカギを握っているわけです。
 しかも、心臓や呼吸が止まったというよう な重篤なケースの7割ぐらいは家庭で起こっています。 しかも私みたいな中高年男性が結構多いのです。ということは、皆様方のような地域の婦人防火クラ ブの皆さんが救命講習を確実に受けていただくということは、非常に意味があるわけです。
 この「救命の連鎖」によって、実際に助かった例は各地でいろいろありますが、その一つ をご紹介 したいと思います。1頁の中程から下の箇所をご覧下さい。これは、そこに付記しましたように、東 京消防庁の月刊誌「東京消防」2005年12月号に紹介されていたものからお借りしてまとめたも のです。
 45才 の男性がパチンコ店でパチンコ中に倒れたというものです。幸いこの店の店長さんが応急手 当の講習を受けていた方で、さっそく店員の方と駆けつけまして心肺蘇生を始めたわけです。人工呼 吸と心臓マッサージ、勿論119番通報もしています。東京ではこんな場合、白の救急車の前に赤の ポンプ隊・消防車が現場に飛んできます。ポンプ車と救急車の赤白連携、PA連携といわれていま す。早くついたポンプ隊の人が店長さんらから引き継いで心肺蘇生を継続します。このケースでは、 その2分後に救急救命士などが乗ってる救急車が到着しました。その救急隊がさっそく専門的に容態 の観察を行い、できる限りの処置を行っています。
 専門的に過ぎる内容となりますが、ここに書いて あることは、救急隊が倒れた男性を最初に見た時 点では、意識レベル300、刺激を与えても目を覚まさず反応もしない最悪のケースです。呼吸も感 ぜず、脈拍も感じない。瞳孔は左右6・、普通は2.5・から4.5・程度ですから瞳孔が開いてい る、反射もしない。要するに死の一歩手前に近い状態だったのだと思います。これに対し直ちに除細 動、電気ショックを1回与えましたが効かない、2回やってさらに経鼻エアウェイで気道確保しま す。皆様方の場合ですと、アゴ先挙上法といって額抑えながらアゴを挙げるようにして気道確保、空 気の通り道を確保しますね。救急隊の場合にはいろんな器具を用いて空気の通り道を確保しようとし ます。そうしながらも心肺蘇生を継続してますと、10分後に呼吸脈拍が何とか出てきた。死の間際 から復帰したということです。ただ依然として意識レベルは300、最悪の状態が続いてますから、 救急隊はそれに適した専門的な医療機関、救命救急センターへ搬送しまして、そこで医師による医療 処置をしていただいたわけです。この男性の場合は、意識障害の重い事例だったのですが、連携が上 手くいった関係でこの救命救急センターで意識レベルが2まで改善されました。意識レベルは悪い方 から順に3桁、2桁、1桁で表示され、この2というのは一桁で意識にちょっと障害はありますが大 体目覚めている状態、刺激には反応する、ただ見当識というんですか、今日は何月何日だったとか、 此処はどこかなーとか、そういうのが直ぐに出てこない状態のようです。そこまで回復したというこ とです。そして1ヶ月後には救命救急センターを出まして、二次医療機関へ移って社会復帰されまし た。
 これを見ていただきますと、最初の店長さんの応急手当に始まって、消防の処置、医療機関へと、 流れが非常によくつながって社会復帰するに至ったというものです。実は、この事案の時点では、東 京消防庁では後ほどお話しするAEDをまだポンプ車に載せていなかったときのお話で、今では東京 消防庁では早くに駆けつけるポンプ車にもAEDを乗せており、救急隊が着く前にAEDが行われる ようになってるようです。また、パチンコ店の事業組合でも相談されて、組合員の店にはAEDを置 こうとなったそうです。倒れて早い時点でAEDが用いられると、劇的に回復する可能性があります ので。そこで、次にAEDのお話をしたいと思います。

2 AEDを用いた除細動(電気ショック)の重要性
 次の2頁を開いて下さい。心臓停止や呼吸が止まる 原因はさまざまです。最近のわが国の死因です が、第1位はガン、第2位が心疾患、第3位が脳血管疾患、それに次いで肺炎、不慮の事故と続きま す。この中で、不慮の事故を除けば、突然襲われるというのは第2位の心疾患、第3位の脳血管疾患 ですね。このうち脳血管疾患は、昔はトップだったのですが今では3番目になってきました。脳血管 疾患にも二つのタイプがあり、出血する脳出血タイプと、もう一つは8割方がそのようですが脳の中 の血管が詰まるタイプのもの、脳血栓などがそうです。ただ、脳血栓の場合ですと医療も進歩してき て、3時間以内に血栓を溶かす薬を投じることで良くなる例が増えているそうです。勿論その後のリ ハビリも非常に重要ですが、高齢化によって脳血管障害に罹る人自体は増えましょうが、上手くつな がると、それによって亡くなる割合も減り、後遺症も軽くなる、つまり軽症化の傾向が見られるよう です。
 これ に対して死因2位の心疾患については、罹る人も割合も増えているようです。これは日本全体 が高齢化しつつあることもありますが、食事も含めた生活習慣がいわゆる欧米型になってきているこ ともありましょう。欧米では昔から心臓疾患が一番多く関心も高かったのですが、日本でもその傾向 が出てきています。心筋梗塞なんかが分かり易い例ですが、これはやはり不意打ちに、突然に見舞わ れることが多いです。
 この心臓疾患に不意 打ちされたときにどうするか。それに対する一番の優れ者が、このAED(自 動体外式除細動器)なのです。市民の方でもこの器械を用いれば自動的に器械の指示に従うことで、 心臓疾患に陥った人に電気ショックを与えることが出来るというものです。何故にこのAEDが大事 かといいますと、図3をご覧下さい。大体に心筋梗塞とかの場合の心臓のリズムというのは、止まっ てはいないのですが小刻みに勝手にブルブルと震えている状態、心室細動の状態にあることが多いで す。心臓がブルブルと震えた状態のままですと、血液をちゃんと送り出すポンプの役割を果たせませ んから、そのまま放っておけばやがて死に至ります。この致死的な心臓リズムの状態が1分経過する 毎に、生存して退院できる割合は7~10%ずつ下がっていく、というのがこの図3で示されていま す。したがって本当に早い段階でこの心室細動を止めなくてはいけない、これをちゃん止めて正常な リズムを取り戻すためには、心臓マッサージも意義はあるにはあるんですが、除細動(電気ショッ ク)を与える必要があるのです。そして、AEDという器械は、その電気ショックを市民の方でも容 易にできるよう工夫されたものなのです。
 図4の絵は、右側の人がAEDを操作し ているものです。この絵で右の人は右手を差し上げてスト ップかけているように見えますが、これはAED操作で最も気をつけねばならないところの、AED 操作のときには傷病者の体に触ってはいけない、体から離れろ、といってるわけで、これからボタン を押すべくAEDが体の横に置かれています。AEDが優れているのは、電源を入れると倒れている 人が電気ショックをかけていい人かどうかを器械が自動的に判断し、さらにショックをかけねばなら ぬ時には、器械が音声で「パッドを貼って下さい」とか、「離れて下さい」、「ショックボタンを押 して下さい」とか教えてくれるのです。ですから、一通りの講習を受ければ、あえて言えばきちんと 講習を受けてない場合でも器械の指示に従うことで、電気ショックをかけることができるのです。こ れによって心筋梗塞などに罹った人に対して倒れてすぐに電気ショックを与えますと、劇的に回復す る可能性があるのです。アメリカのラスベガス、カジノのメッカではそうした回復例が多く寄せら れ、また空港にもあちらこちらにすぐ取り出せるようにAEDが置かれています。その劇的な回復可 能性に注目して、アメリカでは人の多く集まる場所や航空機などへのAED配備に力が注がれてきま した。
 日本 でも、ようやく一昨年夏になって、一般市民の方でもAEDを操作することが認められまし た。それまでは除細動器は医師や救急救命士の人に限って認められてましたが、AEDの活用により 医療資格を持たない一般の市民の方でも操作し電気ショックを与えて良いことになったわけです。そ の結果、市民の方が学ぶ応急手当の中に、人工呼吸や心臓マッサージなどに加えてAEDが仲間入り しました。私ども救急振興財団では応急手当の講習会で必要となる訓練用人形などのセットを各地の 消防機関などへ贈る事業を続けていますが、最近ではAEDの操作を学ぶための訓練用器具を加えて 使っていただいています。実際のAEDでは訓練にならない、AEDは電流を流さねばならない人だ けに流し、流していけない人には流しませんから。最近の救命講習では、従前と同じ3時間の範囲で AEDの操作法を含めた心肺蘇生法をマスター出来るように工夫されていますので、是非受けてみて 下さい。
 AED については各方面で理解が浸透し、配備される場所があちこち広がってきています。子ども が野球のボールを胸に受けて突然死する、これは脳震盪ならぬ胸震盪を起こした状態でよく調べると 心室細動の状態、だからAEDで救うこともできるケースがあることがわかってきました。高校野球 でも昨夏の甲子園には、AEDが配備されました。昨年の愛知万博、愛・地球博の会場にも置かれ、 救命例もいくつか報告されています。この2頁の右方に朝日新聞の去年10月の記事の切り抜きがあ りますが、そこにあるように各地でAEDを置こうじゃないか、という動きが広がっています。多く の人が往来する駅、空港、公共施設など、コンビニや冒頭で紹介したパチンコ店、スポーツジム、マ ラソン大会でも結構中高年の人が倒れますから主催者が準備する、お役所ぐるみでまとめて購入して 配備する市町村も増えてきています。倒れた人に1,2分でショックを与えることができるのが良い ですから、ちょうど街角の消火栓みたいに置かれれば理想でしょうね。AEDは一昨年当時には1台 数十万円と高かったのですが、このところの普及具合から一気に値が下がり、最近ではセット30万 円以下で配備出来るようになってきたのも追い風になってるようです。将来はおそらくご家庭でも置 こうという人が増えるかもしれませんね。そうしたことで心疾患の救命率にも良い影響が出てくれば と期待しています。

3 変わりゆく救急業務 ~救急業務の高度化~
 本日は、もう一つ別のお話をさせていただきま す。 それは、消防機関の行っている救急業務の中身 やスタイルが、大変変わってきているということを、ご紹介したいと思います。
 もともと消防の救急業務は、資料3頁の(1)にありますように、多発する交 通事故に対応するた めに全国で法制化されたといっても過言ではありません。昭和40年前後の時期、日本の高度成長の 影の部分かも知れませんが「交通戦争」と呼ばれるほど交通事故が多発しました。死者も今の倍ぐら い1万5千人を超えていました。このため交通事故の防止対策が必死に取り組まれまして、道路の交 通安全施設の整備などもどんどん進みました。消防の救急も交通事故対策がポイントになってまし た。そのうち、交通事故の死者数はだんだん減ってきて、最近では当時の半分ぐらい7000人ぐら いになってきました。代わりに救急で増えてきたのが、急病です。最近では搬送件数の約6割近くは 急病で、交通事故は2割を切っています。今の救急のターゲットは、急病ですね、これに対してどう 対処するかということになるわけです。
 このように世の中の需要に応じ、救急 業務は様変わりしてきていますが、救急業務が大きくレベル アップの途を踏み出したのは、1990年代以降かなと見ています。どうも日本の救命率は、先進諸 国に比べて低いんじゃないか、同時に病院前の段階で救急隊ができる処置が少な過ぎるんじゃない か、との声が高まってきました。そこから「救急業務の高度化」への取り組みが始まったわけです。 1991年(平成3年)に「救急救命士」制度ができました。直後から消防の救急隊員の中で、半年 間ほど勉強して国家試験に合格して救急救命士の資格を得て救急現場で活躍する人たちが着々と増え てきました。同時に、救急救命士の資格を持たない一般の救急隊員の人たちの勉強・講習内容もレベ ルアップされ、いろんな新しい処置ができるようになりました。例えば、お正月の餅が喉に詰まった 場合、応急手当の講習会で習われたのは下腹部を押し上げたり背中をドンと叩いたり、といった方法 でしょうが、実はそれまでの救急隊員も同じようなことしか許されなかった。聴診器も使えない、血 圧も測れない。それがこの頃から、マギール鉗子というものを使って引き上げることが出来るように なりました、これで随分と助かってます。ですからお年寄りが喉を詰まらせたときは、背中を叩きな がら、同時に早く救急車を呼んで下さい。
 救急救命士の制度は、アメリカのパラメ ディックという制度に範を取ったといっていいと思いま す。制度化にあたっては役所間や医師会、マスコミなども含めいろんな議論が交わされましたが、最 終的には、医師や看護師などの医療資格と同じく救急救命士という国家資格を設け、その国家試験に 合格した消防の救急隊員に資格を生かして救急活動に従事してもらおう、という仕組みになりまし た。私ども救急振興財団では、全国の現役の救急隊員の人たちを半年間(今年4月からはさらに延ば して)研修し救急救命士の国家資格を取得してもらうという仕事をメインにしています。その結果現 在では、3頁の中程左に囲ってあるように、消防職員は全国で15万6千人、この中で救急隊員とし て活動している人が約5万8千人、そして実際に救急救命士として活動している人が1万5千人余と なっています。
 救急救命士制 度のスタート以降でも、救急業務は大きく発展してきました。一つには、救急救命士 の人たちのみができる高度な処置、特定行為といいますが、その処置範囲が最近になってさらに拡充 されました、確実な気道確保法である気管挿管に続き、薬剤の投与がこの春から認められるようにな りました。もう一つの変化、それは消防の救急業務と救急医療機関などとの繋がりが強化されてきて います。医師の指示や助言指導を得たり、活動内容を事後に医学的に検証したり、病院実習などで生 涯教育の機会を得たりできるようにするため、各地域ごとにメディカル・コントロール体制づくりが 進められているところです。こうした取り組みが救急隊員の活動のレベルアップにつながってきてい ます。
 ところで、救急救命士をはじめとする救急隊員の人たちの役割、あるいは活動の特徴は何でしょう か。それを考えるためには、救急隊の活動の特徴を理解する必要があります。それは、3頁の (3)。左にあるように、救急隊の仕事は、現場から急いで病院まで搬送するという「限られた時 間」、救急現場や狭い救急車内という「限られた場所」、チーム3人のみの「限られた人員と資器 財」という制約条件のもとで、資料のその右に書いてあるように、・ 傷病者の状態を観察する、呼 吸・脈拍・血圧・瞳孔の具合・不整脈の度合いとかを観察する。・ そしてこれが一番大事なんです が、重症度や緊急度の程度を判断する、同じ胸が痛い、頭が痛い、意識がないといってもいろんな程 度がありますから、その中で重症・緊急に対処せねばならぬケースかどうかを判断する。・ それに 応じた医療機関を選定し迅速に搬送する、重症患者であればそれに応じた設備・スタッフが整ってい る救命救急センターへとかです。・ さらに現場や搬送中に、必要な応急処置を行う、これらを先ほ ど述べた限られた条件下で的確に行う、というのが救急隊に求められる役割だといえます。これらの ことを3人一体のチームワークの中でやっているのが救急隊員です。 病院に着けば専門的なお医者 さんが立派な医療検査器具も駆使してきちんと検査し病名も鑑別し手術もするわけですが、救急隊の 場合には、極端を言いますと病名は正確にわからなくとも良い、ただ”この傷病者はどうやらこの系統 で重い病気かどうか”とか、”症状からみて緊急に専門の医療機関に運んだ方がいいな”とか、その辺の 判断・区別ができ、必要な処置を行いながら適した救急医療機関へ運ぶことが求められているわけで す。 できる処置も非常に限られていた昔の救急隊は、傷病者を病院までいわば搬送するだけが仕事で した。しかし、救急業務の高度化の取り組み以降、救急隊の仕事は、このように専門化し大いにレベ ルアップしてきているといえます。また、そのように期待されているともいえましょう。

4 増え続ける救急需要について
 最後にお話しますのは、最近困 り始めていることなんですが、救急車の出場件数がどんどん増えて いるんですね。資料4頁をご覧下さい。平成16年のデータでは、救急車は全国で年間約503万件 出動しています。10年前の平成6年には305万件でしたから、この10年間でおよそ65%増で す。毎年、前の年に比べ4~5%程度伸びています。
 これに対し、救急隊自体の増え方はどうなっている か。下のグラフを見ていただきますと、●で結 んだ救急隊の数はこの10年間で4331隊から4711隊、およそ9%程度しか増えていません。 救急需要が増えていますから、どの市町村でも救急隊をもっと増やしたいと頑張ってはいますが、財 政難などの中では思うに任せないのです。一つの救急隊を新たに増やそうと思いますと、救急車1台 に交代制ですから救急隊員はできれば10名程度確保せねばならないのですが、とてもおいそれとは 増やせないというわけです。このように増え続ける救急需要に対し、救急隊の数が増えていけない、 この結果限られた救急車が救急現場に到着する時間がジリジリと延びてきています。平成6年当時は 全国平均5.8分で到着していたものが、最近では6.4分に。僅か0.6分ということでしょう が、重い症状の場合には、ここでの分秒がカギを握っています。
 特に増え方が著しいのは大都市部ですが、どうすればいいのか 、ということで消防庁に検討会が設 けられて対策が協議されているところです。使うのを止めて下さいと言っても、お年寄りが我慢され てかえってこじらせては重症になってしまうケースもあります、やはり呼んでもらわなければいけな い。しかし、一方では無責任に呼んでいる人も実際にはいます。全体的にはこれからは病気にかかり やすいお年寄りが増えていきますし、核家族化も進んでいます。そこで、最近では、不適切な利用は 止めて下さい、緊急でない場合は控えて下さい、さもないと本当に大事な利用に響きますから、とい うことを各地の消防機関が正面からPRするようになってきました。それから、民間の患者搬送事業 者というものも増えてきてますので、緊急に運ぶなくてもいい場合にはそういった民間の手段を使い やすくしよう。さらに、転院搬送といって病院間の患者搬送にも救急車は相当に出ていますので、そ ういう転院搬送などでは病院が持っている救急車や民間の患者搬送車をもっと使ってもらおうと。た だ、民間の患者搬送事業者といっても、地方に行くと数が限られているのが悩みなのですが。それか ら、119番通報があったときに、通報の内容から明らかに軽症と判断される場合には、急いで救急 車を出さなくてもいいのではないか、逆に重症の場合には待機させておいた救急車を急ぎ出せるよう に区別していいのではないか、このためには区別するための基準づくりが必要ではないか、といった 議論も交わされているようです。なお、消防の救急もお金をとったらどうか、という意見もあります が、これについてはいろいろ考えれば考えるほど大変な問題で副作用も多い、慎重に考えざるを得な い、その議論の前に先ほど述べたようなもっとできることをやろうではないか、というのが目下の動 きかなと見ています。
 これで私の話を終わ りますが、皆様にはどうか引き続き消防の救急業務についてご理解をいただき ますと共に、各地域で大切な応急手当の普及活動に今後とも是非ご尽力賜りますよう、お願い申し上 げます。ご静聴ありがとうございました。

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富士常葉大学環境防災学部教授  重川 希志依

講演資料(PDF)
 皆さまこんにちは。只今ご紹介いただきました富士常葉大学 で環境防災学部という、日本で始めて学部の学生に防災を教え る学部ができた大学ですが、そこで防災を教えています。今日 は全国の婦人防火クラブのリーダーの皆さまの前でお話しをす ることが出来て、大変有り難く思っております。
 今日お話しさせていただきますのは、今からご紹介しますけ れども、もう起きてから11年になりますが阪神淡路大震災、 その時に地域の中で消防活動防災活動、地域を守る活動に携わってこられた沢山の方達の話を元に、 私達が今何を備えるべきなのかと言うことについてお話しをさせていただければと思います。
 先ず、今日は全国北海道から沖縄まで47都道府県の地域からの代表のリーダーの方がお集まりでご ざいます。ここのところ、よく東海地震とか南海地震、今までとりわけ地震とは縁がないと思ってい た西側の方々、「地震なんて、あっちの話だ」と思っていたのが、蓋を開けてみたら最近もっぱらこ こら辺の話になってきているわけなのですが、さて今言っている大きな地震、見ていただいていると おり、東海地震というのが私の大学のある静岡県の目の前に地震の巣があります。東南海地震と言う のはもう少し西です。紀伊半島から愛知県の目の前当たりに地震の巣があります。
 それから、南海地震というのは四国から紀伊半島の西側、ここら辺に巣がある地震なのですが、こ の3つの大きな地震が近い将来起きる可能性があると言われています。勿論この3つだけではなくて、 日本に住んでいる限り何処ででも地震は起きるのですが、特に最近注目されているのがこの3つの大き な地震です。さて、これが本当に起こるとどうなるかと言うと、大学のある静岡ですとほぼ全域が震 度6強以上という大変強い揺れが起きると予想されています。
 しかも、ここは日本の物流、人の流れ、物の流れ、情報の流れ等いろんな大事な、言ってみたら日 本列島の動脈みたいな所です。ここがこれだけの範囲にわたって大きな被害を受ける地震が近い将来 くると言われています。しかもこの3つの地震、非常に仲が良くて、今まで大体連なって起きる傾向が あるそうです。
 その仲良しの3つの地震が何時頃起こるのだろうと考えてみると、10年毎に今言った地震が起きる 可能性がどれくらいあるかと言うのを計算した先生がいらっしゃいます。そうすると、一番地震が起 きる可能性が高まるのが2021年からの10年間、2031年からの10年間、それぞれこの10年の間に起き る可能性が22%ぐらい、最も高いのがそうです。今2006年ですね。と言うことは2001年から2010年 までに起きる可能性が4%ぐらいだそうです。既に2006年まで来て起きていませんね。ここで問題な のはこの20年の間に起きる可能性は高いのだけれども、絶対ここで起きると言っているわけではない のです。
 当然明日 起きるかもしれないです。あるいは2060年頃に起きるかもしれない。
 この中の何処で起きるかは分からないのですが、起きる可能性から言うと今から 大体15年から35年 ぐらい先、20~30年先に起きる可能性が一番高まる。と考えても良さそうです。
 と言うことは、私も含め皆さんはどうなっているかと言うと、防火クラブの皆さ んはリタイアし て、この世もリタイアして高いところから起きることを眺めているかもしれませんが、問題なのはま さにこの時に日本の社会を背負っている人達がその時どうしてくれるかと言うことです。年齢的に見 ると今は子供です。小学生・中学生・高校生・大学生その人達がこの国を支える主役となっている時 に、今はまだ絵を見ているだけですから、大変だなと思うのですが、本当にこれが起きた時に日本と いう国は大変なことになります。その時に備えて、今私達は何をしておけばいいのかということを考 えていきたいと思います。
 私達に出来ることというの はいろいろあります。先ほどもご紹介がありました婦人防火クラブや少 年消防クラブなんかに入っていろんな活動をするのもあります。それから防火活動をすることもあり ます。家の中の家具を固定したり、そう言う具体的な対策を取ることもあります。あるいは地域のみ んなを集めて、いざと言う時にどうするか。マニュアルを決めるなんて言う対策もあります。いろい ろあります。出来ることは沢山ありますので、出来ることを少し整理して考えてみることにします。 大きく分けると出来る対策3つあります。
 一つ目が被害を出さない対策です。 具体 的に言うと、今大変問題になっています耐震偽造。問題に なっていますが、あんなことをしなければ震度7の地震が来ても人が死ぬような建物の壊れ方をしない 建物を造らないと言うことを目的に耐震設計というのはやっています。つまり地震は止められないけ れども、構造物の耐震化を進めて死者を出さない。あるいは静岡・愛知県の方でしたら津波の恐れが あります。津波は止められませんが、津波防潮堤を作っておいて町の中に津波が押し寄せてくるのを 防いでしまう。それによる被害を止めてしまう。あるいはもっと言えば、危ない場所には住まない。 究極の対策です。住まなければいい。地震が起きたって、津波が起きたって、危なくない所に住んで いればいい。これは究極の防災対策です。ただ世の中そう簡単には、みんながみんな安全な所、高い 所に住むわけにはいきませんから、生活の事情があるから、危ないのを承知でいながら住まければい けないわけですよね。
 でも、一番の被害を出 さない対策は、危ない所には家を建てない。そういう対策です。
 二つ目、どんなに万全に対策を取ったとしても、それを上回る地震が起きれば、被害はど うしても 出ます。どんなに頑丈な家を造ったって、もっと大きな地震が起きたら、人は怪我をするかもしれな い、生き埋めになるかもしれない。その時に、生き埋めになった人をいかに早く救い出そうか、怪我 した人をどうやって、先ほど応急手当のお話しを受けられたと思います。そういう技術を見つけてお けば、怪我をした人を救うことが出来ます。早く医療機関に運ぶためにヘリコプターを用意しておけ ば、病院に速く運んで命を救うことが出来るかもしれない。つまり被害を零にすることは出来ないの ですが、出てしまった被害を少しでも軽くする為の対策が二つ目です。これは普段の訓練とかマニュ アル作りとかみんなここになります。
 三つ目が災害対応、これは実際に災害 が起きた時にどうするか。最初の2つの対策は、これは災害 が起きた後に対策を実施しても何の役にも立ちません。どちらも災害が起きる前にやらなければ何の 役にも立たない対策です。例えば地震が起きた後に耐震化してもしようがないですよね。地震が起き た後に避難訓練したって後の祭りです。
 つまり3つの対策の内の上2つは日頃の 備えなのです。よく防災というのは日頃の備えが大事だと言 われます。何故そういうふうに言われるか。今お話ししたとおり、普段やっておかなくては何の役に も立たない対策が、沢山あります。つまりこの上2つは、正に来るべき日に備えて今からやっておかな ければいけないという対策です。そして上2つの対策をやっておくことによって、始めて災害が起きた 時に私達はきちんと動くことが出来るようになります。
 災害が起きた時に、私達には一体どんな活動があるか。これもまた3つの目標があります。災害が起 きた時にやるべきことです。
 一つ目が命を守ると言うことです。これは誰の命を守るかというと自分です。間違っても家族や地 域の人だと思わないでください。最初にやらなくてはならないのは、自分自身を助けてあげると言う ことです。人のことはその後です。先ず自分が死なない。自分が怪我をしない。自分が無事に生き残 る。これは皆さんのようなお立場の方でも、市長さん・県知事さん・消防隊の人・お医者さん・学校 の先生、みんな同じです。全ての人が最初にやらなくてはならないのは、自分を守るということで す。これが1つ目です。
 二つ目、自分の命を守ることが出来た人、つまり災害から生き残ることが出来た人達の生活を守る というのが二つ目のハードルです。ご承知の通り災害が起きますと、ライフライン具体的には電気・ 水・ガスそれから電話・道路・鉄道などいろんな流れが止まります。大変不便になります。でも災害 から生き残ってしまったからには、この人達の生活を何とか維持して行かなくてはいけない、生きて 行かなくてはならない。そのための苦労が二つ目のハードルです。
 そして三つ目、そう言う不便な生活を耐えながら被災者の生活再建 、あるいは地域の復興、経済産 業の復興をして行かなければいけません。それが三つ目のハードルです。
 災害が起きた時の3つのハードルというのは、これは地震災害だけではなくて、どんな災害でも必 ず自分が被災者になってしまった時には乗り越えなければならないハードルとなります。では次に具 体的にそれぞれの中で何をしていくべきかを考えてみたいと思うのですが、今日はまず、日頃の備え ではなく実際に災害が起こった時に私達は何をすべきなのか、と言うところから見ていきたいと思い ます。
 今言っ たとおり災害が起こった時に3つの目的があると申しました。命・生活・再建。さてそれぞれ のハードルを乗り越えるために、具体的にどういうことが必要なのかを順番に見ていきたいと思いま す。
 まず一つ目の命を守る。今日は地震災害を例に考えてみたいと思いますが、地震が起きるたびに沢 山の人が亡くなります。何で地震が起きたら人が死なければならないんだろう。人が亡くなる原因を 調べてみますと今上げている3つの被害が明らかになります。一つ目は地震の揺れそのものです。揺れ ている最中に建物が壊れて下敷きになったり、生き埋めになったり、落下物に直撃された。とにかく 揺れそのものから命を守ることが出来なかった。これが1つ目です。 具体的な例としては、阪神淡路 大震災はまさにこの地震の揺れによって死者の9割以上が命を落としています。
 二つ目は、揺れが収まった後に起きる津波です。最初に見ていただいた東海・ 東南海・南海地震の 地域で大きな被害が予想される3つの地震というのは、繰り返し今まで地震が起きています。その死者 の原因のトップは津波です。亡くなった方の殆どは津波で命を落とされています。この地震の後の津 波からどうやって命を守るのか。
 そして、三つ目が火災です。こ れも地震が起きた後に発生します。大正12年に起きた関東大震災 は、例えば東京では亡くなった方の95%は地震の後に起きた火災で命を落としています。言い換え ると、火事さえ起きていなければ関東大震災の死者は、阪神淡路大震災の死者よりも少ないのです。 その程度の地震でした。ところが地震が起きた後、あちらこちらで火災が起きました。初期消火に失 敗した火災が、その後2日間にわたって燃え続けました。今の東京の中心の部分は、すっかり焼け落ち ました。 10万人近い人が亡くなっています。その火災さえ起きなければ、死者はもっともっと少な くて済みました。この3つの要因というのは日本だけではなくて、世界中で起きる地震で命を落とす 方、何故亡くなってしまうのかを見ると、何れもこの3つの内の一つです。例えば去年12月に起きた スマトラ地震津波、ご承知のとおり正に津波です。20万とも30万とも言われている人が津波で命を落 としています。では来るべき地震災害から我々や将来日本を担う人達を先ず命を助けるためには、こ の3つの敵にどう立ち向かうかを考えればいいということになります。ここで順番にひとつ一つ見てい きたいと思います。
 ここからは先ほど申 し上げました阪神淡路大震災の被災地で活動された方達のお話しを元に、当時 一体何が起きていたのかということを見てみたいと思います。
 当時被災地ではいろんな被害が同時に起きました。火災が起き る、人が生き埋めになる、危険物が 漏れる、高速道路が落ちる、新幹線の橋が倒れる、ありとあらゆる被害が同時に起きました。119番 も通じなくなりました。沢山の市民の方が、消防署に駆け込んできました。その時の最初の要請が 「助けてくれ」というものでした。「家族が生き埋めになっているから助けに来てくれ」と、消防職 員の方も最初は分からないわけです。ですから駆け込んでくる度に飛び出して行っていました。とこ ろが、ご承知の通り一つの消防署に何人職員が居るか、せいぜい40~50人ですね。次から次に市民が 駆け込んできます。あっという間に消防署の中が空っぽになりました。これでは拙いというので次に メモを渡しまして、救助を求めに来た人に名前と住所を書いてもらいました。それを置いていっても らいまして、次に管内の地図を広げて地域ごとにメモを束にして重ねていきました。
 今度は地域ごとに対応するようにしたのですが、それでも地震が起きた日の午前中 、市民が出した メモが既に500枚溜まっていました。これは全部に対応することは当然出来ないわけです。救助隊長 が出した結論は、呼びかけて生きている者だけを救出せよ。後はそのまま放っておけというふうに指 示を出しました。ところが隊員はそんなことは出来ない。埋まっているのは分かっている。家族が助 けてくれと言っている。返事が無いからって死んでいるとは限らない。何でそれを見捨てるのだとい うふうに言われました。ただ現実に500枚のメモと消防職員の数を考えた時に、優先順位を付けざる を得ませんでした。隊員と幾度も言い争いをし、指示を出した隊長も自分自身あれでよかったのかど うなのか分からないという気持ちをもっています。木造住宅だけではなく、こういったビルも倒壊し ました。
 この写 真は神戸市立の西市民病院です。上の階がぺちゃんこになってフロアの高さが1メートルぐら い。腰を曲げないと頭が着いてしまうぐらいになっています。しかもガスが漏れていて消防隊が駆け つけた時には、建物の中はものすごくガス臭かった。こういう密閉空間でガスが漏れますと、丁度爆 発の範囲に達してしまうと非常に危険です。たばこを吸うな、火を使うな、火のコントロールを指示 を出すのですがみんな患者さんを助け出すのに精一杯で、誰もそっちには手が回りませんでした。し かもこんなに危険な現場なのに不思議とあの時にはちっとも恐くなかったそうです。
 看護婦さん達も非常にこんなに危険な現場で勇敢に患者さん達を救助していました 。これは病院の 外から撮った写真です。既に日が暮れていますが、なかなか救助がはかどらないで時間だけがどんど ん過ぎていく。木造の建物はどんなに酷い壊れ方をしていても、人海戦術で何とか救助が出来ます。 ところがRC(鉄筋コンクリート)のビルは壊れてはいますけれども、日本のビルの基準は世界一厳 しいのです。つまり柱も太い。壁も厚い。床も天井も厚い。鉄筋も沢山入っています。世界一厳しい 耐震基準で作られていますから、壊すのに手間が掛かって、時間だけがどんどん過ぎていく。遅々と して人は助けられない。ここでまた自分が立てた作戦が本当によかったのだろうかと言う不安を抱か れます。そして漸く瓦礫の下から救助をした人達の中には、やはり間に合わなくて既に亡くなってい る方もいます。そうすると瓦礫の下から救助をした人というのは、土埃で真っ白になっているそうで す。髪の毛も、服も真っ白、せめて顔だけでも払ってあげたいというので、消防隊員の方が遺体の顔 を手で埃を払ってあげると丁度涙の後が頬のところに着いている。涙で濡れたところだけ白い埃が黒 くなって残っているそうです。その時に、ああこの人は助けを待って泣きながら亡くなっていったの だということを、消防の方は目の当たりにします。
 震災の起きた後の調査報告書によれば殆どの方が即 死だったと言われています。でも数字の上では そうなのだけれども現実に即死ではない、こうして救助を待っていた人もいたのだと。自分の決めた 部隊の投入で助かった人もいたけど、こうやって助からなかった人もいた。そのことが今でも心に残 っているという風に、消防の方がおっしゃっています。震災からもう11年経っています。11年経って も思いは全く変わらないそうです。当時本当に大変な思いをされた方は、そのままの気持ちを今もず っと持っていらっしゃいます。
 そして、あの時約5,500人の方 が亡くなりました。震災当初。これは5,500のご遺体が一時に発生し たことになります。そんなことは誰も考えてもいませんでした。先ほど申し上げましたね、被害が出 た時にマニュアルを作ったり、訓練をしたりする、事前対策があります。ところがこういうことが起 きるだろう、そのために何をすればいいなんていうことは、誰も考えていませんでした。
 遺族の方はここでもまた、消防署に行けば何とかしてもらえるのではないかと言う思いで続々と家 族の方に運ばれて、消防署に遺体が集まってきました。ある人は板の上にのせて、ある人は自家用車 に家族の遺体を乗せて消防署に運んでくるわけです。消防署だって何の備えも無かったのですが、取 り敢えずガレージを空けて消防車は全部出払っていましたから、ガレージは丁度空いていました。そ こに遺体を並べます。ところが検死をしないことには火葬も埋葬も出来ません。近所の開業医を呼ん できて、とにかくここで検死をしてください。検死の終わったご遺体から隣の区役所の会議室に移し ました。そこを仮の遺体の安置所にしました。
 ところが、区役所の会議室は同時に避難所に も指定されています。ですから避難者とご遺体は同じ 部屋に同居することになりました。しかもさっき言ったとおり、避難者どころか遺体が来るなんて誰 も考えていませんから、ここに運んだって何も無いわけです。棺桶も白い布も無い。お線香もろうそ くも水も無い。何にも無い中でただ、それこそパジャマのまま堀り起こされていたご遺体をポント置 いてあるだけです。区役所で僅かに備蓄していた毛布をその運ばれて来た遺体を包むか、あるいは避 難者に渡すかと言う選択を、区役所の職員は迫られることになります。そして翌日の朝から漸くガレ ージが空きはじめました。遺体と入れ替わりに今度は全国から来た応援の消防職員の居場所にガレー ジがなりました。何故あの時こんなことが起きたのか。亡くなった方の大部分が、既にご承知のこと と思いますが我が家で命を落としています。
 ところがこの数字は何かというと、神戸の ような地震が起きた時、何処が危ないか、と言うことを お聞きしたアンケートの結果です。そうすると、特に都会に住んでいる方の場合には、地下鉄に乗っ ている時だけは嫌だわとか、地下街で買い物している時地震が来たらどうしようとか、高層ビルだっ たらどうだろうとか、暗い映画館だったらパニックになるのではないかなんていうふうに思われてい ます。最下位が我が家なのです。
 つまり、地下街や高層ビルでは地 震に遭いたくないけれども、家族全員が我が家にいる時に地震が 起きてくれれば怪我ぐらいするかもしれないけれども、一番安心だと、皆さんもやはりそう思われま すか。高層ビルで家族バラバラの時に自分一人で地震に遭うのは嫌だと。家族みんな家にいる時だっ たら何とかなるだろうと思われますよね。
 ところが、阪神淡路大震災で亡くなった 方の9割は、まさかの我が家で命を奪われました。この理由 は2つあります。一つ目の理由は地震が起きた時間です。殆どの人が我が家にいました。朝早くです。 午前5時46分。殆どの人が家にいて、しかもまだ寝ていました。真冬ですから真っ暗です。これが一 つ目の理由です。
 二つ目の理由は 、地下街、高層ビル、地下鉄、こういう場所には、たまたま人がいなかっただけで はなくて、少なくとも多量の人が死ぬような壊れ方はしていないと言うのが二つ目の理由です。例え ば超高層ビル、大阪から神戸に掛けて被災地の中には沢山超高層ビルが建っていました。超高層ビル の被害はどうだったのか。調査の結果、例えばビルが倒れる、傾く、あるいはガラスが割れて落ち る、そう言った被害のあったビルは零棟です。被害無しです。今見ていただいている写真のビルもガ ラス1枚、ヒビすら入っていません。全くそのまま建っています。
 ところがこのビルの真向かい、道路一本隔てた真正面にあるビル 、これは6階部分なのですが、ぺち ゃんこに潰れました。8階建てのビルの6階がこういう状況になりました。
 これは神戸市役所です。市役所の職員は犠牲になっていませんが、お掃除 の委託業務を受けていた 会社の方が一人亡くなっています。あの地震で死者が出たビルというのはどれもこの手の建物です。
何処にでもある普通の建物です。みんなが危ないと思っているようなこういうビルではないです。た だ被害の大きかった建物には共通点があります。
 どういう共通点かというと、昭和56年以前に建 てられた建物です。昭和56年に建築基準法が大きく 変わりました。それを境に耐震性がグンと高くなりました。被害が沢山出た建物は、やはりそれ以前 に建てられていた建物です。今姉歯元建築士が設計した建物が大問題になっていますが、実は姉歯さ んが設計した建物だけが日本で危ないわけでは無いのです。昭和56年以前に建てられた建物は、いず れも姉歯元建築士と同じ問題を抱えています。つまり今の耐震基準に満たない強さしか持っていませ ん。
 た だ、当時の基準は守っていますから違法ではありません。でも世の中には古い建物で当時の基準 のままで安全性に問題のあるものもあります。
 一方、古い建物が皆危ないかというとこれも 又違います。例えばお城。あれは古いですが丈夫で す。何百年も前に立っている木造建築ですが極めて丈夫です。お城だけではなくて古い建物の中に は、古い建物でも充分な耐震強度を持っている建物も沢山あります。ですからこれは耐震診断をして みないと分かりません。
 ただいずれにしても阪 神淡路大震災で被害が集中した建物はそう言う一つの共通点がありました。 地下鉄・地下街も同様です。ご覧のとおり地震発生の次の日から地下鉄はすでに運航を再開しまし た。一方トンネルの中に入ると、ご覧のとおり本当にここが被災地なのかと思うぐらいです。電気も 点いて、改札機も動いて、地下鉄はいつも通り走っています。ところが地上を見ていただくと、木造 住宅の全壊、このビルも大きく傾いていますが、丁度この道の下に地下鉄の駅があります。地面の上 と地面の下でこれだけ大きな差があります。地下街も同じです。少なくとも阪神淡路大震災という地 震災害に限って言うと地下の構造物は非常に強かったです。
 さて、では何故今申し上げたような施設が強かったのか。 今見ていただいた地下街とか高層ビルと か地下鉄とか映画館とかデパートとか、この手の施設はみんなが危ないと思っています。災害火事は 危ないのではないか。みんなが危ないと思っている施設というのは、上手くしたもので法律で厳しい 安全基準が義務付けられています。まず作る時の基準が違います。作った後も放ったらかしというわ けにはいかないのです。定期的にメンテナンスしなければいけない。悪いところがあったらキチント 整備しなければいけない。あるいは消防署が来て消防計画を出せとか、職員の訓練をしろとか、いろ いろな安全に対する努力をしなければいけないことが義務付けられています。そう言う施設というの は案外、突然起こった地震災害に対して強かったことが分かりました。
 一方、それの正反対だったのが、まさかと思っていた我が家です。我が家というのは個人の住宅、 個人の財産です。従って法律でいろんなことを義務付けることが出来ません。
 例えば、高層ビルだったら、こういった消防設備を付けなさい、あるいは耐震基準はこうしなさ い、あるいは年に何回こういう点検をしなさいと言うことが義務付けられますが、私達の住宅は、役 所はそんなうるさいことは言ってこないですよね。気がついてみたら、安心だったはずの我が家がこ ういう壊れ方を致しました。まさかと思っていた我が家が案外弱い場所でした。亡くなった方の9割が 自宅で亡なっています。先ほど申し上げたとおり95%以上の方がほぼ即死の状態でした。神戸の震災 が起きた時にもっと早く救助が来ていたら、もっと早く病院に運んでいたら被害を少なくすることが 出来たのではないかと言われました。確かにもう一寸早く病院に運んでいたら、助かっていた方もい ました。しかし残念ながらその数は極めて少ないです。むしろ瓦礫の下から掘り出すことも出来な い、病院に運ぶことも出来ない、お医者さんに見せることも出来ない内に命を落とした方が96.3% です。
 では 、この人達をもう一度生き返らせるためにいったいどんな対策が役立つでしょうか。この人達 の命を救うことが出来るのは唯一この対策です。住まいの耐震性を高めると言うことです。我が家が 地震でこういう壊れ方をしない、落下物倒壊物が発生しない家具を固定しておく対策です。
 ただ、そういう話をすると阪神大震災は、みんなが家にいる時に起きた。もしあれが昼間 起きてい たら家だけ安全にしても役に立たない。みんなが他所にいる時に地震が起きたら家だけ残って、みん な他所で死んじゃったなんてことになりかねない。そういう疑問をお持ちになると思います。
 おっしゃるとおり、今の地震予知技術では何月何日何時何分に地震が起きるという予知は出 来ませ ん。後20年30年先でも恐らくそこまでの予知をすることは難しいと思います。来るべき時に私たちは 何処にいるか分かりません。
 ただ、一寸見方を変えて地 震が何時起きるかこれは分かりませんが、私達は何処にいる時に地震に 遭う可能性が高いのでしょうか。何処にいる時に地震に遭う可能性が高いと思いますか。言い換える と何処で一番長い時間を過ごしているかです。自宅です。今日はたまたま皆さま東京に研修に来てい ます。こんなゴミゴミした所で地震なんか起きて欲しくないと思われるかもしれませんが、一年のう ちこんなゴミゴミした所で過ごされるのはほんの僅かですよね。実は生活時間を調べると毎日学校に 通っている子供達ですら、例えば小学校四年生、一年間のうち学校で過ごしている時間は9.5%で す。中学校三年になっても11%です。つまり学校の地震対策というのは大変大事なのですが、学校を 丈夫にして守ってやれるのは子供の生活時間のたった1割です。
 残りの9割は学校では守れません。では、残りの9割子供達は何 処にいるのか。圧倒的に長い時間過 ごしているのは我が家です。我々サリーマンも同じです。仕事が忙しくて家には寝に帰るだけだと言 っている方も、一年間生活時間をきちんと付けていただくと絶対に職場より我が家で過ごす時間が長 いです。
 これが 専業主婦の方、それから仕事をリタイアされた方ですと、更に我が家で過ごす時間が圧倒的 に長くなります。つまり私達にとって安全にしておいて一番効果の上がる場所というのは我が家で す。みんなの予想どおり、とにかく家族がみんな我が家にいる時に地震が起きてくれさえすれば、誰 も死ななくて済む。本当に我が家をそういう場所にしておく。これが地震の揺れから命を守るために 一番役に立つ対策です。
 これは地震に限らず、 火災について考えていただいても同じなのです。人が火災で亡くなる場所、 何処か、住宅なのです。今度住宅を新築される時には火災警報器の設置が義務付けられました。火災 警報器さえ付いておれば、お年寄りが気づくのが遅れて焼け死んだり、あるいは頻発しています留守 番の子供達が火災で亡くなってしまうことは防ぐことが出来るということは分かっていました。
 ところが住宅は個人の財産ですから、なかなかそれを法律で義務付けることが出来ませんでし た。 ただ、住宅火災から命を守るために火災警報器を付けることが役に立つのは分かりきっていた。それ がやっと出来るようになりました。この住宅、防火、火災に対しても我が家は安全にしておく。これ も非常に生活の中で重要なことですし、更に高齢者になると家庭内の不慮の事故というのは、交通事 故死よりも数が多くなります。高齢者にとって家の中で躓いた、転んだ、階段から落ちた、あるいは 誤ってお風呂でおぼれた、本当にこんなことでと言うようなことが原因で、我が家で事故死される方 の数というのはお年寄りの交通事故死より多いのです。
 つまり、私達にとって住宅というのは、我々の安全安 心のために非常に重要な場所です。その我が 家を安全な場所にする。安心して暮らせる場所にすると言うことは、いろんな防災対策を考える上で 非常に役に立ちます。そして大切なことです。そして今まで一番遅れてきた分野です。これを進めて いくと言うことが地震対策だけでなく非常に重要なことになると思います。
 それから二つ目、地震が起きた後の火災からどうやって命を守るか。ご承知 のとおり阪神淡路大震 災では残念ながら神戸市で延焼火災が起きました。生き埋め者の内、火災によって焼け死んだ方がい らっしゃいます。地震が起きた時の火事は一時に何カ所も起きます。ある消防署では、夜が明けて管 内を見回すと既に十数本煙が上がっていたそうです。ところが消防隊はそこでは5隊しかいない。足り ません。このまま放っておくと延焼するので本部に応援を頼んだのですが、何処の消防署も手一杯で ポンプ車は回せないと。ここで、もう消せないと言うことは最初から分かったそうです。開き直って5 つの消防隊を何処に出すか、ここでも又優先順位を付けなければいけないことになりました。出した 結論は、生き埋め者が沢山出ている所の火災現場を優先する。具体的には木造住宅の倒壊が沢山起き ている所です。
 木造住宅が壊れ て、その下に生き埋め者が沢山いて、しかもそこに火災が起きている。それを放っ ておくと大勢の人が焼け死んでしまうというので、その現場を優先して5隊の消防隊を出しました。消 防隊が現場に着いたら住民の方は黙って屋根の上に座り込んでいる。2階建ての家が地震で潰れて一階 がペチャンコになっている。2階建ての家が低い高さになっている。そうするとみんな屋根の上までよ じ登れるのです。屋根の上によじ登って頬杖付いて火事をボーッと見ていたそうです。あたりはシー ンとして災害直後の被災地というのは、非常に静かです。消防隊が行ったのですが、地震と同時に断 水をしているために、消火栓からは一滴も水が出ません。水が出ない、とにかく逃げてくれと言うし か無かったのだそうです。住民がいつ逃げればいいのだと聞いて来るのですが、答えられない。と言 うのも、向こうからジワジワと火事が近づいてきます。避難はいつすればいいのだろう。これが、今 避難してもいいけれども5分後でもいい。つまり、こういう状態での避難のタイミングというのは誰も 分からなかった。人間というのはいよいよ火が近づいて危ないと思ったら、消防に言われなくても安 全な方に逃げるわけですね。被災者が避難を開始したのと消防がホースを延ばした時期が一致しまし た。従ってホースを次々と避難者が踏んでいくことになりました。
 消火栓から一滴も水が出ない、こう言う時に頼りになるのは海、 川、池、そういう自然の水です。 汲んでもつきることのない水です。神戸でも海から50本消防ホースを繋いで火災現場に水が出始めた 途端、避難する車が踏んで行くわけです。水でふくらんだホースは車が踏むと裂けます。又一から繋 ぎ変えなければいけない。何としてでもホースを守らなければならない。
 ところが消防職員が口で言っても止まらないのですね。そこで消防車で車 を塞いで物理的にブロッ クした。それで消火活動を何とか行うことにしました。
 一方延焼火災を出さなかった都市があります。兵庫県の 西宮市です。何故延焼火災が起きなかった か。西宮では地震があった後41件火災が起きていますが、延焼火災は零です。その理由いろいろある のですが、最も大きな理由は41件のうちの7割の火災を市民が初期消火しています。何故初期消化率 がそこまで高いかというと、西宮では“防災市民組織づくり”というのを震災が起きる5年前からやっ ていました。それは組織を結成するのを目的にしているのではなくて、“人づくり”を目的にしていま した。だから非常に具体的な訓練を体験して貰っていました。
 例えば、屋内消火栓を使って水を出した消火訓練というのを市 民がやっていました。何故かという と地震が起きた年の一年前、関西では大変な水不足が起きました。夏場です。渇水対策として最終的 には一日の内数時間しか水が出ない、後はズーッと給水制限がなされました。つまり一日の大半は水 が出ない。水道が止まっているという状態が起こりました。その時に火事が起きたらどうやって火を 消せばいいのか、その方法の一つが屋内消火栓だったのです。屋内消火栓は、水道が止まってもビル の受水層の水が使われていますので、受水層が空になるまではホースから水が出ます。
   更にこのホースは結構長くて延ばすと建物の外の火災に届きます。この写真に写っている屋内消火 栓は、神戸の地震の時に使われたものです。この3階建ての三共アルミという会社の独身寮なのです が、この中にあった屋内消火栓で裏の木造住宅火災を消しています。しかも住宅は全壊して住民の方 は生き埋めになっていたのですが、火災を消して住民の方も無事助かっています。ご覧の通り周りに 延焼していません。この屋内消火栓ともう一ヶ所、屋内消火栓を使って市民が消した火災現場があり ます。
 それ から学校のプールの水をバケツリレーするとか、各家庭にある消化器を持ち寄って消すとか、 とにかく、ありとあらゆる方法を動員して何とか市民が消そうとした火災が41件中29件ありました。 結果的に延焼火災零です。死者995人のうち焼死者は一人もいないという結果になりました。
 市民も消防もこういう状況の中で全員総出24時間5日間働きづめでした。西宮も神戸も芦屋 も宝塚 も淡路島もみんなそうです。最後には何とかしたいけれども足が一歩も前に出ない。更にこういう時 というのは被災者には避難所が用意されて食事や水が配られますが、消防行政の方には何の手当もな いのです。市役所の方にも消防職員の方にもそうです。
 例えば消防職員が休憩して食事でもしていようものな ら、「お前等何やっているのだ、避難者が困 っているのに」と怒られるわけなのですね。とにかく災害が起きる度に同じ状況が起きます。最後に は、皆さん正常な判断力を次々に失っていきました。ある人は地震が起きた5日目、自分の頭がおかし くなるのが分かった。ちょうど1月22日の午前3時に上司に報告をすることになっていた。「報告しま す」と言った途端、その日自分がやっていたことが何も思い出せなくなった。直ぐ側にいた部下に 「自分はおかしいか」と、普段だったらそんなことは思うはずもないのに、そんなことを思うこと自 体おかしかったのだけれども、でもみんながみんなここまで追いつめられた活動をしていました。初 めて自分の頭と体がバラバラになっている。これで指揮をしたのでは効果がないということで、初め てここで休みを取ります。休みといっても、消防署の床に新聞紙を敷いてその上に2時間ぐらい、ごろ んと横になるだけなのですが、初めてそこで休みを取りました。
 何処の消防隊員もみんな同じ状況です。消防の方は体力があり ますので5日間で限界が来ています。 一般の神戸市役所の職員の方なんかは3日です。皆さん3日目で言っていることとやっていることがバ ラバラになり始めたとおっしゃっていますが、とにかく食べることも休むこともせずに、ひたすら走 り続けるのが災害時の行政の方達です。
 沢山の消防の方達のお話しを通して私 が感じたのは、あの時に消防の方というのは非常に孤独な戦 いをしていたという印象を持ちました。何故皆さんは孤独な戦いをしなければならなかったのですか とお聞きしたら、こういう答えが返ってきました。『あの時孤独だったのは地域の人と一緒になれな かったから、あれだけ沢山の人が居たのに何故あの人達の力が使えなかったのだろう。何故自分達消 防は、あの人達の力を使えないようにしてしまっていたのか。それは結局日頃からの消防と地域の人 達との付き合い方に問題があったのだ』とおっしゃいました。先ほど言ったとおり、これだけ激しい 壊れ方をしていても、この現場で沢山の人が集まっていますね。
 この写真のこちら側にも人が一杯居まして、柱にロープを掛けて みんなで引きずり起こそうとして います。これだけ激しい被害でもマンパワーで救助出来る事象が7~8割なのだそうです。殆どは人が 沢山集まれば何とかなる。地震の後救助用のロボットだとか特殊工作車とか、そういう装備の開発が 随分言われたのだけれども、実はこんなに大変な被害であっても、一つの装備よりも沢山の人の知恵 と沢山の人の手、これを集めた方がズーッと大きな力になるのだと言うことをおっしゃっています。  あの時に感じた孤独を埋めるものは一体何だろう。まず一つは、どれだけ沢山の地域の人達と手を 繋ぐことが出来るかが鍵です。いざと言う時に手を繋ぐためには普段手を繋ぐ関係を作っていないと 無理です。普段手を繋いだこともない人と災害が起こった時にいきなり手を繋げるわけがない。これ が一つ目です。 
 二つ目、婦人消 防隊・消防団、あるいは今日ここにお集まりの婦人防火クラブの皆さん、つまり消 防防災の応援団の方達というのは、消防活動を支援してくださるものですごい力になりました。例え ば、消防団が居たから地元は消防団に任せて、もっと被害の大きい地域に応援に行けた。あるいはお 茶もおにぎりも届かない消防署に地元の婦人消防隊の方達が来て、裏庭で暖かい味噌汁を作ってくれ た。どれだけ有り難かったか。そう言う普段から消防防災を応援してくださっている方達というの は、消防が業務をやっていく上で非常に大きな支援の力として活躍されています。
 三つ目、協力し合う機関が、もっとホットな気持ちで手を繋ぐ。 具体的には消防 ・警察・自衛隊の ことです。3つの機関が被災地で同じ目的で活動していました。何の目的かというと、人命救助です。 同じ目的を持って同じ場所で活動しているのだけれども、縦割りです。自衛隊は国、警察は都道府 県、消防は市町村、つまりその縦割りの溝を取り除くのに無駄なエネルギーと時間を使いました。  あんなくだらないことにエネルギーを使わないで、何で最初から手を繋いで協力出来なかったのだ ろう。最初から協力し合えれば、もっと効率的な活動が出来たとおっしゃっていました。神戸の地震 から11年経ちました。この3つ課題は、一体どれだけ改善されているか。3つともお金のかからない対 策です。知恵と努力で何とかなる対策です。ところが日本の行政というのは、お金は掛からないけれ ども、知恵と工夫で何とかするというのは一番苦手なのです。分かり易いのは予算を取ってきて物を 作る、なんて言うのは得意なのです。ところが予算は付かない、苦労はするというのはという対策は みんな嫌がります。非常に遅れています。 この3つが消防の孤独を埋めるのに非常に重要な点になり ました。
 消防も一 生懸命に活動する中で、数万人の人が生き埋めになりました。
 さっき言った自衛隊・消防・警察の人達は約5000名の人を救い出してい ます。残りの大部分は市民 が自分達の手で救いだしていました。消防より警察より自衛隊よりも、その場にいたひとり一人の市 民の方がずっと大きな力を持っていました。この人達どうやって救助活動をしていたのだろう。当 時、地域の防災活動を一生懸命にやっていた方々からお話しを伺えたのですが、幾つかの共通点があ ります。一つ目は、お陰様で自分が助かっていたという方です。最初にお話ししたとおり、一つ目の ハードルは自分を守ってくださいという風にお話ししました。自分が助かっていた人だけが他人を助 けています。と同時に家族も無事だった。
 人間というのは自分と家族が守られていて 初めて他人を救うことが出来ます。
 家族の誰かがこの時点で怪我をした。亡くなった。そうなりますと、皆さんも同じになると思いま す。幾ら普段地域の為に頑張っていたとしても、いざと言う時に大切な家族が犠牲になったら、とっ てもじゃないけど人のためになんか働けないです。我が家のことだけで精一杯になります。この自分 と家族が守られていて初めて隣の人はどうなのだろう、向井の人はどうなのだろう、他人に目が向きま す。
 この 時の助け合いの輪は非常に小さい範囲です。向こう三軒両隣という本当に小さな単位で、全員 が命に関わる活動をしています。救助と初期消火です。どちらもそのママ放っておいたら大勢の人命 が奪われる原因になります。延焼火災を起こすと多量の死者が出ます。生き埋め者も早く救助しなけ ればいけない。この向こう三軒両隣という小さい範囲で助け合ってこれだけの結果的に大きな活動を しました。
 それとこの 時にもう一つ重要な活動があります。 何かというと、リーダーがいたかどうか。これは 極めて重要な条件になります。
 先ほど消防隊が火災現場に駆け つけたら、みんな屋根の上に座り込んでいたというお話しをしまし た。何故人間がそう言う行動を取るかというと、自分が被災者になった時、非常に大きなショックを 受けます。呆然自失となって何をしていいのか分からない。今何が起きているのか分からない。何を していいか分からないから、例えばサリーマンはネクタイを締めて会社に行こうとしましたし、家が 潰れた人は屋根に座り込んでボーッと火を眺めていました。その時に誰かが一言声を掛けてくれた。 そのことによって大勢の人が我に返っています。それまでは何をして良いか分からなかった烏合の衆 が、リーダーの一言で貴重な地域の防災力に変わっています。皆さまのような普段から消防防災を勉 強していらっしゃる方の役割は、何か起こった時には正にこの地域のリーダーになって、みんなを指 揮するのが皆さまの役割になります。間違ってもご自分があたふたと走り回るのではないのです。走 り回る人達は、地域の中に一杯居ます。ただ残念ながら災害が起きた時には、指揮を執ってくれる人 が居なければみんなどうやっていいか分からないのです。
 声を掛ければ災害発生直後はみんな素直に従います。これは地域でもデパートでもスーパーマーケ ットでも電車の中でも何処でも同じです。大切なのは命を救うことが出来るのは、その時その場にい る人だけなのです。その時その場にいる人を如何に、防災力として使うか。これは放って置いたら残 念ながら、みんな何していいか分からない。そこで重要なのがリーダーです。当時リーダー役を果た した皆さんがおっしゃったことは、みんな誰かが声を掛けてくれるのを待っているような気がした。 何していいか分からないので、集まってくーとか、火を消してーとか、怪我人を運べーとか言った ら、誰も断る人は居なかったそうです。通りすがりの見ず知らずの人まで、足を止めて手伝ってくれ た。このいざという時に機転を利かせて、正しい防災行動を取らせるリーダーを如何に沢山育ててお くか、学校で、職場で、家庭で、地域で。これは最初に申し上げました20年後になるか30年後になる か分からないですが、本当に大変な事態を日本が迎える時に、死者を一人でも少なくするために最も 重要な対策です。残念ながら消防職員の数を1~2人増やしたって住民約1000人に一人なのです。消 防職員も数というのは。1000人に一人の消防職員の数が予算を倍増して500人に一人増えたとしても どれだけのことが出来るか。それは1000人いる我々市民の方が、ズーッと大きい力を持っています。 市民の力を最大限活用する為のリーダー育成というのは非常に重要なことです。正にここで皆さまが 普段からやっていらっしゃることの意味は、極めて大きいです。単に何かあった時に本当にみんな手 伝ってくれるのだろうか。
 自分達はこうして熱心に 婦人防火クラブでやっているけれども、こういう活動がいざと言う時に効 を奏するのだろうかと、これは大きな力を持ちます。ただ、大きな力を持たせるためには皆様方だけ の力では限界がある。繰り返しになりますけれども周りにいる人達を巻き込んで、その人達を使うこ と。普段は防災のことをそんなに興味がないなーという人でも、指示をすればちゃんと手伝ってくれ ます。その人達を巻き込むことによって皆さまの力が100倍、1000倍になります。
 三つ目、津波です。津波につきましては、やることは極めて単純です。今日ここに お集まりの地域 の中には、津波に対して危険な都道府県があります。むしろ日本は海のない県の方が少ないですか ら、何処の都道府県も津波の危険性はあるわけです。ではこの津波から命を守るためにどんな対策が 役立つか。極めて単純。揺れが収まったら直ぐ避難、これだけです。具体的に津波危険地域にいる場 合には、高台あるいは鉄筋コンクリートのビルの3階以上に駆け上がる。というこの対策しかありませ ん。何故、こんなことを言っているかと言うと、今日本では“この地震で津波の心配はありません”と か、“今何時何分何処に津波警報出ました”等情報が出ます。必ず津波に関する警報が出ます。行政で はこの津波警報を1分1秒でも早くするために、今まで多額の費用を掛けてきました。大きなコンピュ ーターで計算をしているのです。今気象庁がやっているのですが、この前お聞きしたら、ついに地震 が起きてから3分で警報が出せるまでに時間が縮められるようになったとおっしゃっています。しかも 警報が出たら、それを如何に早く市民に伝えるか。
 行政も又、努力しています。具体的には津波危険地 域のご家庭には、個別地震器等という物を配っ て、直接役所から津波警報が伝わるような、そこまでお金を掛けてやっています。一般的にはスピー カーから流れますよね。“こちらは何々市防災課です。ただいま津波警報が出ました。”などと。防災 同報無線というのですが。
 更に個別のお宅に受信器 を配って、そこまでしていろんな警報を住民に早く伝える努力を役所はし ているのです。ところが問題はそこからです。聞いた市民が逃げない。結果的に税金は無駄遣いとい うことになります。今私達が抱えている最も大きな問題は、行政はこういう情報を早く出す努力をし ているのに、聞いた市民が逃げない。
 そこでここまでの努力を無駄にしな い、税金を溝に捨てないためには、市民が自主的に本当に危な い地域に居る人は避難をする。しかもさっき申し上げた通り、早く警報を出す努力をしていますが、 なんと言っても相手は地震ですから警報が伝わる前に津波が来る可能性だってあるわけです。現に北 海道奥尻島の地震津波は、地震発生から2分で大津波が来ました。1分揺れていましたから、揺れが 収まってから1分後に、あの大津波が来ています。津波警報が出たらそれを聞いて逃げよう、なんて 言うのではなくて、危険な地域の方は、揺れが収まったらとにかく逃げる。後は自己責任です。逃げ ても津波が来なかった。津波が来ない可能性はあります。それも自己責任です。来なかったら来なか ったで良かったと思えばいいし、役所の警報を待っていたら、その前に津波が来てしまった。大事な 家族が死んだとしても、取り戻しは出来ないことです。この津波については命を守ることが出来るの は、自分自身です。これを肝に銘じておくことは、津波災害から命を守る為に必要なことです。
 今までお話ししてきましたように、地震の揺れから命を守る。津波から命を守る。火災から命を 守 る。何れも先ず基本になるのは、ひとり一人の市民、家族、そして人と人と、向こう三軒両隣という 昔ながらのコミュニティー。この力で3つの被害要因から私達の命を守り抜く。そのために重要なの は、最初にお話しをしました。いざと言う時に、今申し上げたような活動をするためには、普段手を 繋ぐ関係を作っておく。今から安全な住まいづくりを考える。
 特に皆さんのお子さん、お孫さんが家を建てる時、家を買う 時、必ずこれからは地震とか火災ある いは高齢化を念頭においた住まいづくりを考えるように、是非話してください。今まで私達家を買う 時は、駅から何分、先ずそうですよね。学校が近くにあるとか、間取りはどうなっているとか、そう 言うことは気にしましたけれども、家が建っている場所が軟弱地盤ではないか、具体的には田んぼを 埋め立てて宅地造成している所なんかでは、元もと田んぼですから地盤が悪いです。液状化が起きて 被害がよくおきます。あるいは盛土・切り土をして盛土をした宅地造成地で地盤が悪くないか。崖の 側で危険ではないか。耐震偽造設計手抜き工事をしていないか。そう言う安全という目を持って我が 家を買う、建てるように、是非皆さんのお子さん、お孫さんに伝えてください。そしてみんなが安全 な住まいを作り上げるということで、ずいぶんと大きな被害を減らすことも出来ると思います。
 つまり今から備えられることが沢山あります。まだ10年、20年という時間的猶予が残されてい るの であれば、今日からでも私達に出来ることが沢山あるということでお話しを終わらせていただきたい と思います。
 どうも長時 間にわたりまして有り難うございました。

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消防庁国民保護・防災部防災課長 金谷 裕弘

 本日のテーマと致しましては、防災ということで婦人防火ク ラブの活動自体と少しすれている部分もあるかもしれません が、最近の特に日本におきます災害の状況、それを踏まえて日 本が今どのような状況に置かれているかと言うことをご理解賜 りまして、私ども行政がどのような取組をしているかというこ とをお話ししたいと思います。
 その中でそれぞれの地域においてどのような取組みをお願い いたしたいかと言うこと、婦人防火クラブにおかれましてもそ れぞれの地域の活動の中で活かせる部分、あるいは連携できる 部分、あるいは中心となってやっていただく部分をお帰りになられまして、ご検討いただければと思 っております。
 まず、世界の災害の中での日本の位置ということで、マグニチュード6、いわゆる大までは行きま せんがかなりの規模の大きな地震、マグニチュードと震度という言葉がありますが、マグニチュード と言いますのは一般論では地震の大きさです。ところが震源地と深さによってどれだけ揺れるかとい うのは全く変わってきます。
 それと地質によっても±1ぐらいは震度が変わってきます。マグニチュードというのは大きな地震で はありますけれども、それが遠くで起これば揺れないと言うことになります。規模の大きな地震が起 これば震度自体も近くで起これば大きく揺れる。特にマグニチュード6クラスでも直下型の地震になり ますと、震度6とか強とかいう事になったりもします。マグニチュード6という地震というのは、そう いった規模の揺れを起こすと言うこと。もちろんマグニチュードが小さいと範囲はかなり狭くなるの ですが、例えば中越地震はマグニチュード6の規模ですが、直下で起こると非常に大きな揺れを感じる ことになります。被害を及ぼす可能性の高い規模の地震と言うことです。世界の2割以上が日本の周辺 で起こっている。
 よく「日本は地震の巣」と言われていますが、太平洋プレートとか、日本海プレートとか、いろん な海溝の話などお聞きになったことがあると思います。かなり大きな地震を起こすようなものと、こ れも阪神淡路大震災以降話に出てきますが、いわゆる活断層がいろんな所にあります。日本において も動くかもしれないと言うことで、地震対策の為の推進本部が100ぐらいの断層を調べて、それがど れくらいの確率で地震が起こるかと言うことを出しています。ところがその断層が中四国地域ではほ とんど無いと言われていました。福岡にもほとんど見られないと言うことだったんですが、ご承知の 通り芸予地震とか鳥取西部の地震とか、あるいは福岡西方沖地震が起こっています。そういった意味 では日本は今何処で地震が起こってもおかしくないという状況にあります。
 まず、この状況をご認識いただきたいと思います。福岡県の場合、今までは地震の起こらない県と して宣伝をしていましたが、地震が起きてしまった。福岡の場合はかなり岩盤の地層が強いと言うこ ともあって、震度の割には被害が小さかったのですが、玄海島は大きな被害になりました。陸地部の 方は規模の割には被害が少なかったというのが正直な感想です。そう言った状況で、要するに日本は 何時何処で地震が起こってもおかしくない、この認識だけは持っていて頂きたいと思います。
 ただ逆に「何処ででも起こるのだったら、何をしていても」と、「あるいは何時起こるか分からな いから」という話になりがちですけれども、断層なんかでも30年以内に起こる確率を出しています が、それが0.05%ぐらいとか8%とか、感覚的に行くと非常に低いような感覚の数字も出ていたりす るのですが、ただ我々が30年の間に交通事故に遭う確率というのは20%ぐらいなのだそうです。
 そういった意味で言うと決して低い確率ではないと思います。火事にあったりする確率というの は 0.2%でしたか、それに比べると高いものもかなりあると言うことです。ただ明日起こるか30年後に 起こるか分からないという話だと、なかなか常に緊張感を維持しながらやっていきましょうというの は、大変なことですね。
 そういった意味では、日頃の生活の中に無理するのではなくてやっていること自体が、災害対策・ 防災対策に役立つような仕組み工夫というのが日頃の生活で必要になると思います。あるいは習慣と していく。例えば枕元にスリッパを置いて寝るとか、あるいは眼鏡や懐中電灯を置いておくとか、こ れはある意味で言うと普通でも夜トイレに起きる時に懐中電灯を使うとか、あるいは寒いからスリッ パを履いていこうということで習慣になるわけです。実はそれは防災対策に役立っている。地震が起 こってガラスが割れたり、停電したりした時に役立ちます。そういう自らの習慣の中に、それが自然 に防災対策に役立つような工夫と言うのはいろいろ考えていけるのではないかと思います。非常に身 近な例なのですが、それが災害対策の一つの基本、もちろんキチント意識して構えることも必要なの ですけれども、常にハイテンションでやっていくのは正直疲れますから、最低限のものについては習 慣の中に入れていく様なことが非常に重要な要素であろうと思っています。
 いろんな意味での生活の知恵工夫の中に入れていくことが災害対応対策のひ とつの長続きする秘訣 だろうと思っています。
 火山については日本の国内でも地域的な偏りがあります。しかし世界の中で活火山の数が日本に7% あります。1万年以内に噴火した火山は活火山と位置づけています。火山というのはある意味では富士 山などに代表されますように、非常に観光資源あるいは資源の宝庫でもあるわけです。そういう意味 では日本の場合は、火山と共存共栄しているという要素もあります。火山から出来た景観あるいは観 光資源・温泉などで多くの恵みを受けています。これは紛れもない事実です。近くに人が住むように もなっている様なことは、これは実は結構危ない所に住んでいるのですよね。平野というのは、多く のものが沖積平野と言いますか、火口に砂がたまって出来た所ということになりますと、昔洪水があ ったから平野が出来ていると言う意味では、やはり危ないかもしれませんし、あるいは扇状地・盆地 もそうなのですね。積もったものというのは地盤的に強くないと言うような要素もあります。人間が 住みやすい所と言うのはある意味では災害が起こりやすい所でもあると思います。
 活火山につきましても、当然それは危ないと言うことであれば10・圏内立ち入り禁 止で誰も住まな いと言うことが出来ればいいのですが、逆に普段は多くの恵みを与えてくれているし、日本において も世界有数の火山観光国でもあると言うことも我々は認識しておく必要があります。そういう中にお いて備えをキチントしておかなければならないと言うようなことがあるだろうと思います。
 災害の被害額については経済活動がそういうところに集中しているという状況も含めまして、世界 の中でも日本は非常に大きい額になっています。戦後におきます日本の死者の推移ですが、昭和34年 の伊勢湾台風は何千人と言う単位で亡くなられる大きな災害でした。日本の災害対応というのは、災 害で被害を受けそれを如何に克服していくか。克服というのは具体的に言えば対策を講じるというこ とですが、例えば水害等におきましては堤防を作ったり、地震なんかでは構造を強化すると言うよう なハードの側面、そしてソフトの側面でも避難、あるいは予知予報の技術というようなものを開発し ていくということで被害を最小限に食い止める。
 やはり、日本の場合は、異常な自然現象による 災害被害というものは絶対来るわけですが、その中 で被害を最小限に押さえていくことが日本における一番重要なことであると思っています。零にする ことは不可能なことですから、如何に被害を小さくしていくか。昭和30年代から見ると何千人という 方が亡くなられるという災害は起こっているけれども、その中で最小限に食い止めてきたという、そ の歴史の繰り返しであったと思います。その中で我々に反省を迫られたのが平成7年の阪神淡路大震災 だと思います。これが災害対応についての対策を大きく見直すきっかけになったと思います。戦後特 に風水害が多かったと言うことで、風水害中心の対策が取られてきたわけです。地震対策等につきま しては、昭和50年代以降東海・東南海地震に順次対策が取られて来ていたわけですが、阪神淡路大震 災を踏まえて震災対策ということが大きなエポックメーキングを迎えて、対策が現在取られていると いうことです。
 その後、ほぼ100人以下で被害者の数は推移してきたわけですけれども、平成16年過去6個が最高 であったのが10個の台風が上陸しました。福井・新潟等に於きます豪雨災害、そして中越地震と言っ た相次ぐ災害が起こりました。その中で自然災害の死者等が300人になるというのが平成16年の数字 でございました。やはりどんな対策をしても一定の被害は出ているわけですから、その中でも特に16 年の場合の台風にしても水害にしても、地震にしても「今までこんなことはなかった」というセリフ がテレビ等で取材された方のお話しに出てきたと思います。気象も含めて日本の場合は非常に災害が 起こりやすい状況が起きていることは、改めて実感として認識しておく必要があると思います。なか なか学術的に言えないんですけれども、実際そういった状況になってきている。昨年東京でも時間雨 量100・が記録されましたが、自然災害でこれだけの人が亡くなっていると言うことで、これらに対 する備えをやっていかなければならないと思っています。
 これも災害の死者数で更に火災と風水害、震災と分けておりますが、火災においても多くの方が亡 くなられています。しかも減っていないと言う状況が見て取れます。交通事故は着実に減ってきてお ります。
 これは一 昨年の風水害、先ほどからお話しをしておりますが10個の台風が上陸しました。平年が3 個で過去6個が最多だったのに対して、2004年の風水害は10個が上陸し最多に上り、甚大な被害が出 ております。亡くなられた方が200人ということで、浸水等に伴う住宅の被害ということでも全壊 1,500、半壊1万5,000戸と大きな被害が出ております。災害対応をする時に災害対策本部を作ります が、県のレベルで過去に大きな災害が起きていない地域では、災害対策本部を立ち上げたところが殆 どない地域が多くありました。特に市町村の場合では、かなり地域が狭いですから30年40年と災害対 策本部を作って災害対応したということがないという所もかなりあります。どういう意味かと言いま すと、ある方が役所に勤めて定年で止められるまで一度もやったことがないと言うこともあり得ると 言うことなのです。そういった中でいきなり起こった場合も待ったなしで対応が迫られると言うこと です。経験と訓練は絶対に必要です。経験は滅多にある話ではないわけです。実体験を想定した訓練 と言うことが非常に重要になります。やはり何時何処に起こりか分からない。ですから日頃の生活の 中で備えをしておくことと、何か起こった時に本当に役に立つ様な訓練をしていかなければならない と言うことが、一連の災害の中で、私どもが特に強く感じたことです。
 地震の状況ですけれども、新潟の中越地震以外にもマグニチュードのレベルが最大震度5以上のも のが一年間でそれだけ起こっている。中越地震では余震も大きいものが続いたということで回数も多 いのですが、それ以外の地域でも5弱の地震以上ものがかなり起こっています。
 消防庁の応急体制では震度4の地震が何処かで起こりますと、第一次応急体制 と言うことで情報収 集をしております。
 ある程度規模が大きくなりますと第二次・三次と言うことで応急体制を取るのですが、三次では消 防庁職員の全員が参集すると言うことになります。新潟中越地震の時には三次と言うところに○がつ いていますが、この時には全職員が直ちに参集するという対応をしております。恐らくそれぞれの県 や市町村でもその地域内に於いて一定規模以上の震度があった場合には、当然参集するというふうな ことで集まって災害対応するということになります。これだけのものが起こるということを前提に、 どのような備えをしていくか。市町村でも災害対策本部、都道府県でも災害対策本部、こういったも のを立ち上げて、応急体制に当たる。災害の対応というのは、即対応するというのが非常に重要で す。
 これは一つには救出、命に関わるような状況が起きている時に如何に早く救出するか、早期救出に よって助かる命がある。あるいは水害等に於きましても、的確に早めに避難をしていただくことによ って、命を救うというような対応が非常に重要になって来ます。国は当然ですが、県でも市町村でも 早めにスタートするということが非常に重要になります。災害対策本部は設置をするといいますが、 我々はそういう状況なれば自動的に対策をスタートさせます。早くスタートすることによって、倒壊 家屋なんかで閉じこめられた方も最初の3時間で如何に多くの人を救出するか、そして3日間で黄金の 72時間という言葉がありますが、対応を早くするということが大きな教訓になっています。これは阪 神淡路大震災の教訓として、如何に早くスタートするかということ。それは国として非常に重要な要 素として意識しているということです。
 地震の発生確率というようなことは、海 溝型地震、よく言うプレート型地震、 これは数百年で必ず 起こると言われています。ただ、必ず起こるけれども我々のスパンからいうと幅が広いのですね。50 年から200年。東海地震、これは毎年毎年発生確率が高まっているわけですけれども、何時起こるか は分からない。
 ですから、常に テンションを保ち続けていくことは難しい。自然から言うと200年500年は一瞬の 世界ですから、必ずそう言ったスパンの中では地震が起こるということです。活断層も一定の歪みで すからなかなか予想が難しい。特に活断層の場合は起こるだろうと起こりそうだと言うことなのです けれども、本当に起こるかどうかと言うことを予知するというのは難しい状況になっています。
 過去に遡って阪神淡路大震災がその当時どの程度の確率があったかということを計算してみる と0. 02から0.08%の間なんですね。そう言った意味では静岡の糸魚川線の値では、かなり高い確率にな っています。東海地震・東南海・南海地震のことですが、同時に起こるかもしれないと言われていま すが、東南海・南海地震と言うのは1944年に東南海地震が起こっているのですね。その時に東海地震 は起こってないことになっていまして、これは逆に言うと東海地震というのは発生可能性が非常に高 まっていると言われています。東海地震は近い将来起こるし、東南海地震・南海地震は100年・150 年の周期でもう50年経っていますから起こる可能性が高まっているということです。
 東南海・南海地震は60年前に起こっていますが、東海地震は1854年150年前から起 こっていない。 こちらは200年から250年くらいで必ず起こる可能性があります。我々がやっていますのは、起こる 地震に対してどの程度の規模の地震が起こるというのは大体推測される。何時起こるかと言うことが 分からないので困るわけですが、少なくともこれくらいの規模の地震だと言うことは分かると言うこ とで、それによってこの地域がどのくらい揺れて、その地域がどんな状況だからこのくらいの被害が 発生する可能性があるという状況を掴むことが出来るということで、東海・東南海地震では被害者数 が1万5,000~8,000人ぐらいと言うことで被害想定しているわけです。この被害想定を如何に減らす かと言うことで、いろんな対策を講じています。
 これを半減させようということで、具体的なア クションプログラムを作ってやっていこうとしてい ます。ひとつ一つに分解していけば、例えば耐震化の問題、家屋の中にいて家が潰れて死ぬと言うこ とさえ無ければ、先ず大丈夫ということから、住家の耐震化というのは非常に重要な要素だと思って います。
 それか ら、家は大丈夫でも家具で怪我された、圧死されたと言う方も非常に多いです。そう言うこ とから家具の固定、これは直ぐ出来ることですから、先ずするという事で、自らの身を守ることによ って救出対象にならない様にすること、これは非常に重要なことです。先ずは自らが被災者にならな いことが最大の原点です。自らが無事で、家族が無事で、それで初めて周りに目を向ける余裕が出る わけです。みんな自分だけは大丈夫、死なない怪我はしないと思ってしまうわけですね。それを前提 にしていろいろ考えている。しかしそれが一番の原点。少なくとも3日間、あるいは1週間生活できる ように備えましょうと言っても、それは先ず怪我をしていないことが大前提なわけで、その部分が抜 け落ちると、どんな対策を立てても意味がないということなのです。そう言う意味で国としての対策 をいろいろやっているわけですけれども、地域地域、それぞれの家庭、個人個人で、そこを原点にし て身の回りの部分の備えをやっていくということが全てのスタートだろうと思います。極端に言え ば、どんな大きな地震が起こっても被害者零であれば、道路などはゆっくり直せば良いことですか ら。先ず命を救う、そして更に怪我をしない状況を社会全体として作っていくかということです。社 会人として活動していれば、その時に何処にいたかということも重要な要素になりますので、その時 に地域全体として、あるいは社会全体として地震に強い構造になっているということが重要な要素に なると思います。
 東海・東南海・南 海地震と共に、日本海溝・千島海溝いわゆる三陸沖地震とか宮城県沖地震とか釧 路沖地震とかそう言った所の可能性を同じように示している。
 実はこの3つの地震については、特別な法律を作って国として 対策を立てています。それ以外の地 域についても同じ様な状況にあるということで、日本全体を対象とした「地震防災に関する法律」と いうものがあります。今年度末で期限切れになりますが国会で延長すると言う動きをしています。そ う言った特別な法律に基づく対策ということを国としてやっています。
 次に住宅火災についての状況をお話しします。住宅火災については千人を 超える方が亡くなられる という状況があります。過去の大規模なホテル等の火災で多くの方が亡くなっていますが、それを踏 まえてスプリンクラーの設置や基準の改正をして来まして、大規模な建物などによります火災で多く の方が亡くなることは減ってきています。しかし、住宅の火災は減ってない、むしろ微増ですが増え てきているというようなことです。旅館や大きな施設などの火災の死者は非常に減ってきています。 ところが住宅は高止まりの状況にあるということで、住宅火災による死者を如何に減らすかと言うこ とが重要な課題になっています。
 そこで住宅用火災警報器の設置 ということになるわけですが、6月から新築住宅への設置が義務づけ られることになりますが、圧倒的に多いのは既存の住宅です。これはそれぞれの地域の条例で3年から 5年で設置することを義務付けていますが、本当に付けていただくことは大変なことだろうと思ってい ます。啓発し、お願いして、いろんなルートを通じながらやっていくことは勿論のことですが、普及 させるのは大変だろうと思っております。
 そういう中でまず、共同購入などをして いただく様な窓口を設置するなど検討しています。火災予 防運動などを通してお願いしていくことにもなりますが、火災警報器を義務ではないが早く設置すれ ば、自らの命を守ると言うことですから、そのための普及方策としての共同購入などを勧めていくよ うな窓口とか相談先など私どもとしても考えています。壁掛けなど簡単な仕組みのものもありますの で、普及すれば焼死者も半分あるいは3分の1になるということを期待しています。
 次に地域の防災力ということです。簡単に言えば自らの身は自らで守り、そして  自らの地域は自らの地域で守るということです。これは正に防災の原点だと思って います。裏返し て言えば、大きな災害になった時に行政あるいは消防機関で出来ることには限界があります。阪神淡 路大震災で救助機関等により救出された方は、非常に率が低いのです。行政は最大限やっているわけ です。最大限やっても、震災などでは活動が制約されるということが一つあります。なんと言っても 圧倒的に対象になる事案が多いと言うことです。ですからどんなにフル活動しても分母が圧倒的に大 きいわけですから、率としては非常に低くなっている。
 自らの地域は自らで守る、それがないと特に大規模災 害の時には対応が出来ないと思います。地域 を守る力が命を救う、そして地域を守るというようなことになるのだと思います。担い手として言わ れておりますのが消防機関と自主防災組織といわれる組織です。日本の人口1億2,000万人ですけれど も、消防は僅か15万ですから800人に一人ぐらいです。自衛隊とか警察とかありますけれども、少な い。もちろん地域にそれだけの人的資源が集約できるわけではありません。
 消防も緊急消防援助隊ということで、全国に3,000隊を登録して災害地域に は100隊以上の部隊を全 国から出す仕組みはあります。こういった形で地域集中していきますけれども16万が全部集まるわけ ではありませんし、集まるまでには時間が掛かります。救出救助というのは1秒でも早くなければいけ ない。3時間そして72時間、特に圧迫されたような場合には窒息されるのですね。意識はあっても呼 吸が出来ない状況ですから一刻も早く救出しなければならない。オールジャパンの仕組みが動き始め るまでに地域で対応していかなければいけない、それが地域の役割だろうと思います。
 いわゆる防災組織といわれるものとして消防団あるいは自主防災組織というものがあ るわけですけ れども、それぞれの対応が死数を決するものだと思います。いわゆる能力、技術的な部分、ノウハウ それから機材も含めて当然常備消防というのは装備もあります。ところが動員力というのは圧倒的に 小さい。そう言う意味で地域に於いて如何にそれ等を活動して命を救うかと言うことが重要になって くるだろうと思っております。ですから地域の防災力ということは、自らを守ると言うことが大前提 ということをベースにして、地域で守っていくと言うことだろうと思っています。
 阪神淡路大震災の時のデータで、閉じこめられた方の98%の方が自力で、あるいは 隣人家族でとな っています。こういうことが大規模災害での現実だという認識を持って頂く必要があると思います。 地域のあるいは隣人家族で救出救助をやっていくことが非常に重要になってきます。本来、自らが元 気、自ら助かった時に助ける側に回りましょうと。ひとり一人でも出来ますが、組織的になった方が 圧倒的に力を発揮すると言うことだろうと思います。機材の問題にしても一人で出来ないことも二人 では出来る。日頃の訓練でもバール一つをとっても随分違うんですね。隣近所との地域連携、酷い所 には町内会での連携で行くということになると、随分違うと思います。目の前の状況から地域に活動 を広げるというのは、日頃の準備だろうと思います。婦人防火クラブの皆さん方も、防火活動それか ら災害活動といったものを、消防団あるいは自主防災組織といったところと連携を取りながら、ある いは一体となって連絡、広報訓練をしていただいていると思いますが、いざという時の備えも含め て、それぞれの地域で特色がありますので、ある地域は消防団が頑張っているとか、あるいは自主防 災組織ばかりとか、あるいはどちらも無いとか、いろんな地域があると思います。それぞれの皆さん 方の地域の実情というのは、それをベースにしながらいざという時の備えを日頃からご検討いただけ たらと思います。
 その他については データ的にお話ししてみます。自主防災組織、これは完全なボランティアです。 皆さん方も純粋な意味でのボランティアであるわけですけれども、自主防災組織は、特に防災と言う ことをベースに活動をされる団体ということになっています。自主防災組織がクローズアップされた のは阪神淡路大震災の時でした。今、兵庫県は95%自主防災組織が出来ております。全国的に見ます と60%ぐらいです。これらを如何に高めていくかということが一つあります。
 さっき3,000万人とありましたけれども、実際どれだけの活動が出来ているか といいますと、千差 万別だろうと思います。極端な例は、町内会に入っていたら自動的に自主防災組織に入っていると分 類されている所もあります。全然意識されていない所も、実はあったんですね。活動の実態はいろい ろあると思いますが、ただ少なくともそれぞれの方が自発的に組織に入っていて活動をしなければな らないと思っているだけでも随分違うと思います。更に言えばそれが日頃の活動に繋がってくれば良 いのですが、まだ60%ということです。阪神淡路大震災の時にこれだけのものがあったわけではな く、自然発生的に助けられた方が助ける側に回り、そういう中で共同しながら地域で活動していくと いうことだったのですけれども、自覚的に意識しながらやっていくということが今後重要だろうと思 っています。防災資機材についても地域で備蓄倉庫等があると思いますけれども、簡易なものであ れ、あるとないとでは大違いです。それは、本当は家庭の備えでもあるんですね。バール一本有るか 無いかで、地震の時はドアが閉まってしまえば、先ず揺れで動けませんからドアを開けられない。そ ういう時にバール一本有ればドアが開けられる。置く場所は考える必要がありますが、簡易なもので も必要だと思います。災害が発生した時にどうするかと言うことを決めておくことは非常に重要なこ とだと思います。
 自主防災組織も拠 点がないとか、高齢化とか活動役員がいないとか、いろんな課題を含んでいま す。テンションを高く保って行くにはどうしたらいいかと言うことを、日頃からビルトインしておく ということ。是非これをやりましょうとはなかなか言えませんが、例えば近所でゲーム大会をすると か、共同で旅行に行くとか言うような活動を地域の自主防災組織とセットにしながら活性化していこ うということをやっておられるところもあります。それは共通の課題だろうと思います。
 婦人防火クラブの皆さん方も、日頃の活動の中で如何に持続されていくかという風なことを非常に ご苦労されていると思いますし、そういったアイデアを我々の側にも頂ければ、全国にフィードバッ クするということもやっていきたいと思っています。組織化すると言うことが非常に重要だと言うこ とは、一つは続けて行こうという元気が出る。何よりも情報がチャント入ってくること、これは非常 に重要だと思います。
 今日は組織化されて いない地域の皆さんもお出でになっていらっしゃると伺っているんですけれど も、そういう部分はものすごい差があります。げんなりした時に他の所も頑張っていると言うことが 伝わってくると言うこと自体が、組織化することの大きな要素だろうと思っています。組織化を進め ていけば他の所も見えてくる、工夫も伝わってくる。その工夫を自らの所に活かせれば、それをフィ ードバックして他の所にも伝えていける。それが組織化のメリットだろうと思います。単体でやると いうのはそこだけで完結すれば良いのですが、ブレークスルーが出来ないということもあると思いま す。組織として地域で作り、市町村で作り、県で作りという風なことによって、他の動きが見えてく るということは、すごく大きいと思います。我々が皆さん方にお話しが出来ると言うのは、いろんな 地域のお話しが聞けるからということ。これはものすごく大きいと思っています。それを組み合わ せ、維持、あるいは紹介するということによって国としてのおおきな役割を果たしていると我々は思 っています。そういうことが婦人防火クラブに於かれましても、今日のような機会に横の連携も出来 る。何よりも顔を知っているというのは凄く強いのですね。会ったその瞬間でも話がスタートしてし まう。組織化の話も正にそうなのです。
 オールジャパンでも県でも市町村でも何 かあった時に応援は必ずあります。そういう時にあうんの 呼吸でスタート出来る、そういうふうな状況になっている。これが災害の時の一番の強さなのです ね。地域コミュニティが強いところは災害対応に強いといいますが、そういわれるのも日頃の繋がり で、それがそのまま災害対応に繋がるということだろうと思います。
 ある学者は「地域防災、祭りの理論」と言って、祭りを一生懸命に やっているところは地域防災も 機能するといいます。やはり地域リーダーは決まっていますし、どういうことが出来る人かも知って いる。そういう方々がいざ災害になった時に、そのまま災害対応の組織としてワークするという話が あります。そう言う意味でも、組織化というのは為にする組織化ではなくて、それをすることによっ てこれだけの活動が出来、そして情報が入り、場合によっては物も入ってくるかもしれない。安く大 量に調達できますというようなことも全体に広げていくことが出来、それで機材なども入れていくこ とが出来る。有形無形のメリットは凄くあると思います。
 ただ、大変なのは組織を作ってどう維持し継続し発展させるかと言うことです。単体ではないプラ スアルファが出てくることは間違いないと思います。皆さん方中心となってご活躍いただいているわ けですから、そういう活動ノウハウを是非広げていっていただきたい。そして特にこれから組織化を されようとしている方々に対しましては、皆様方の方で情報も入れていただいて維持継続発展という 認識を強めていただきたいと思います。
 消防庁のホームページにeーカレッジと いうインターネットを活用した防災の教育のコンテンツが入 っています。面白く工夫もしていますので、是非クリックしていただいてご覧頂ければと思います。  それから消防団は、平成17年4月現在で90万8,000人です。人数の確保が大変な状況になっていま す。サラリーマンの方が多くなって、訓練もあり出動すると言うこともありますので、なかなかそう 言う状況では入れませんということで人数的にも厳しい状況が続いています。団員の7割がサラリーマ ンですから、昼間は地域にいないかもしれない。また訓練にもそんなに出られないかもしれない。い ざという時に会社の関係で難しい状況になるから入りにくいというふうな状況があります。この状況 を打破するために、消防団に入りやすい、なりやすい環境を作ると言うことで、いろいろ工夫をして います。地域的にもいろいろ差が有ります。青年団などで全員ということでやっていらっしゃる地域 もあります。あるいは9割方、消防団はボランティアなのですけれども、ボランティア活動が盛んでな かなか消防団に入ってこられない地域なども有ります。なんと言ってもやりたい、入りたい方々が何 とか入れる状況と、それから事業所のトップが奨励してくれるような環境作りを考えています。今検 討会を作って報告書を出しています。その一つが機能別団員といいまして、例えば大規模の時にだけ 出ていただく消防団とか、普段は情報収集だけをしましょうというような仕組みを作っています。
 具体的な例でいいますと郵便局の方が、普段は集配とか配達などで地域の情報収集をする、事故 が あったら通報していただくというようなことで、普段はちょっとした災害とか、ちょっとした火災に は出動しないけれども、大規模な災害にだけ出てくださいというような仕組みを作っていただいてい るところもあります。これは愛媛県の郵便局でそういう分団を作っています。大規模災害の時にどれ だけ動員力があるかということが非常に重要な要素です。ですからその時にどれだけの人が自発的に 災害対応に参加頂けるかということを、いろいろな工夫の中で考えているということです。
 これは皆さまのクラブの状況でございますけれども、現在199万8,000人ということですが、先ほど から申し上げていますが一番身近な部分が一番大切ということで、火災災害について自らの部分をど うするかと言うことを、これから特に一番の原点としてどう守るか、皆さんの活動は非常に重要なこ とです。これがないと次に進めない。ですからこういう活動を更に広めていただいて、災害対応力の 強い地域、強い日本を作るその原点になっていただきたいというふうに思っております。
 住宅防火ということは先ほども申し上げましたが、従来よりも相対的に住宅火災による死 者数とい うのが圧倒的に増えている。絶対数では横ばいから微増。我々としての一つの対策が火災警報器とい うことです。これ等の普及を皆様方、行政としても出来る限りの方法と工夫をさせていただきますけ れども、自覚的に取り組んでいただく方々がいないと先に進みません。よろしくお願いしたいと思い ます。
 それか ら防火と並んで災害対応ということも、正に日本は今何時何処で何があってもおかしくな い。首都直下の地震、今起こっても不思議ではないんですよと言える状況にあります。直下型地震と いうのは予測が出来ないので大変だと思います。最近気象庁の方でP波S波というようなことを言っ ていますが、地震の際揺れの波より先に来る波が有ります。それを先に察知して流すことによって、 大きな地震の揺れが来る前に最低限の手立てをする。例えば防火扉を開けておくとか、新幹線などで は速度を緩めるとか、そういうような仕組み、これは気象庁が実験的にやっていまして、実験に参加 していただいているところではそういう情報を入れるというようなことを既にやっています。昨年の8 月16日の宮城県沖の地震の時にも学校の生徒が地震が来る前に机の下に逃げ込んでいたというような こともありましたが、それは実験の成果です。それは来年度には本格運用しようとしています。
 住民全員に流せるかというと、まだ精度が充分ではないので誤報が出ると、ずれることもありま す ので、パニックを来たしかねないということもあって、事業者・地下街の管理者あるいは学校組織と いった一定の所に出しますよということでやろうとしています。こういうものが入ってくると秒単位 のものだとかなり効果が有るのですね。直下型地震には直接来るので役に立たないということがあり ますので、やはり日頃の備えということになってくると思います。何時何処で起こっても不思議では ないという世界の中で最低限何をやり、次の段階で何をやれるかということを、やはり自らが助かる ということ、そして家族が助かるということをそれぞれの個人のレベルから続けていくことが重要だ

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