居室数の多い家にとっては、住警器の購入は大きな負担となってしまいます。
ここでは、湊町婦人防火クラブ会員が、けん引役となって地域住民の防火意識の底上げに始まり、全戸訪問を通じて「まずは1個から」と設置を促進している事例を紹介します。
(総務省消防庁「共同購入等ノウハウ集」より)
(1)地域・取組主体の概要
伊予市は、瀬戸内海の温暖な気候の影響を受ける比較的災害の少ない平野部にある。伊予市の人口指数を見ると、高齢化と女性の性比率が高くなってきていることがいえる。このような中で、昭和57年10月、伊予市湊町婦人防火クラブが結成され、現在、役員は隊長以下10名で主に構成されている(2年任期)。湊町婦人防火クラブの活動地域はA、B、Cの3地区に分割されており、広報区湊町A区では、158人のクラブ員を擁している(1世帯1名のクラブ員)。
主な活動内容は以下のとおり。
- 住宅用火災警報器設置促進運動における住宅用火災警報器の設置活動
- 幹部クラブ員による住宅用火災警報器研修会
- 各防火クラブ員による住宅用火災警報器研修会
- 住宅用火災警報器設置促進パンフレットの作成
- 救急講習会、救急法普及活動
- 火災予防週間における防火防災教室の実施
災害弱者の戸別訪問及び自力避難困難者の把握
(2)共同購入の取組概要
湊町婦人防火クラブがけん引役となり、伊予消防等事務組合消防本部の指導の下で、自主防災組織の協力を受けながら、平成19年8月から21年8月の間、住民の防火意識向上と住宅用火災警報器の設置について意識啓発の尽力した。この結果、158世帯全部に1個以上の住宅用火災警報器が設置された(当初の目標である1世帯当たり1個の設置目標は100%達成)。
取組主体: | 伊予市湊町婦人防火クラブ |
人数等: | 役員10人、全158人 |
消防署等: | 伊予消防等事務組合消防本部 |
職員数: | 153人 |
地域: | 愛媛県伊予市 湊町A区 |
人口/世帯数: | 39,493人/13,726世帯 地区内は402名/158世帯 |
キーワード: | ●広報・周知(テレビ・ラジオ等、掲示物・配布物、説明会、アンケート・回覧、戸別訪問) ●共同購入 ●設置支援 ●設置確認(戸別訪問、設置済ステッカー) |
普 及 期 | 平成19年8月頃~ 婦人防火クラブ員による住宅用火災警報器に関わる学習に始まり、地域住民への普及 |
工夫点 | |
①湊町婦人防火クラブ会員の学習 ②住警器1個の取り付け運動開始 |
展 開 期 | 平成20年1月~21年8月 全戸訪問による住警器の普及啓発及び実態調査 |
工夫点 | |
③地域住民の防火意識の底上げ ④住宅用火災警報器個別台帳による個別管理 ⑤自主防災組織と連携した住警器の設置 |
(3)工夫点の紹介
工夫点①:湊町婦人防火クラブ会員の学習
●実施内容
婦人防火クラブが、地域住民に警報器設置を啓発するためには、自らがその必要性と効果を理解し、地域住民に説明できる知識を習得することが必要との認識に立ち、消防本部及び住宅用火災警報器販売メーカーの協力を得て知識を身につけた。
●ポイント
婦人(女性)防火クラブ全員が専門知識を習得し、説明・普及できるノウハウを習得した。
住宅用火災警報器の性能・特性を理解し、パンフレット作成した。
工夫点②:「まずは住宅用火災警報器1個の取り付けから」の運動開始
●実施内容
湊町A地区を5地区に分割、分担し、ボランティア活動を楽しみながら住宅用火災警報器の設置を普及していくとの方針で、戸別訪問により意識啓発を進めた(各世帯初回の訪問で改正消防法の趣旨及び住宅用火災警報器の意義を説明)。
婦人(女性)防火クラブが住宅用火災警報器販売メーカーと交渉した結果、煙感知式を安価で共同購入できる運びとなった。しかしながら、1世帯が所要数全部を同時に設置するには負担が大きいことから、とりあえず1個設置し、逐次増設していく方針で全世帯を戸別訪問しながら設置希望個数を取りまとめた。戸別訪問に先立っては、区長から住民への事前通知を行い、円滑な戸別訪問を図った。
婦人(女性)防火クラブ員は、民生委員を兼ねていることから、高齢者等の世帯に対しては、災害時要援護者登録兼避難支援プラン登録に関わる説明を兼ねて住宅用火災警報器の設置についても希望を募った。
期間を通じて、158世帯が計174個を取り付けた。(大半の世帯は1個。最大5個)
耳の不自由な人(難聴の程度は不明)でも警報音が十分聞こえることを確認した。
●ポイント
経済的負担を考慮し段階的な設置を試みた。戸別訪問の他に、各種の説明会を通じて住宅用火災警報器への理解を促進した。
工夫点③:地域住民の防火意識の底上げ
●実施内容
掲示板の回覧後、全世帯、初回の戸別訪問を行った。
住宅用火災警報器PRビデオ等を活用した説明会を年10回開くとともに、防災訓練や防災フェア等の機会も活用して普及促進を図った。この時住宅用火災警報器の実演により警報音の効果についても確認した。
説明会において防災記念品配布や、防災フェアにおける非常食の配布など、参加者の関心を高めることに着意した。
NHKラジオ第1(四国ネット)においても湊町婦人防火クラブの住宅用火災警報器設置促進活動を取り上げたことから、地域住民の意識高揚に効果があった。
●ポイント
婦人(女性)防火クラブなど、ボランティア団体による説明会や、あらゆる機会を活用した積極的な普及活動を実施した。
工夫点④:住宅用火災警報器個別台帳による管理
●実施内容
158全世帯分の住宅用火災警報器の個別台帳を作成し、世帯ごとに取付日、設置個数、設置場所等を記載し、婦人防火クラブ員が管理している。
取り付け後、取り付け状況を実地に確認するとともに、今後の予定についても緊密に話し合った(取り付け後、各世帯1~2回訪問)。
●ポイント
台帳(婦人(女性)防火クラブにて厳正に管理)により世帯ごと設置状況を把握するとともに、その後も警報器の不具合確認や防火管理状況についてもフォローしている。
工夫点⑤:自主防災組織と連携した住警器の設置
●実施内容
消防団や婦人(女性)防火クラブとは別に、自主防災組織があり、災害時、消防機関等の活動を補い、消火・救助等の活動を行い地域の安全を確保することとされており、防災ボランティアとしての期待が高い。
今次の住宅用火災警報器設置事業においても、高齢者宅の天井など、高い部位への取り付けについては、自主防災組織が積極的に協力した。
●ポイント
婦人(女性)防火クラブ(主としてソフト面の活動)と自主防災組織(ハード面の活動)との連携が奏功している。
(4)その他のポイント等
婦人(女性)防火クラブ員は、民生委員を兼ねていることから、高齢者宅の定期的な安否確認を兼ねて、住宅用火災警報器の設置促進を促している。
婦人(女性)防火クラブ員(民生委員)は、「災害時要援護者支援マニュアル(伊予市)」に基づき、活動することが周知されている。
(5)今後の取組予定
条例に基づいた設置基準をクリアするために、各世帯、住宅用火災警報器が未設置の部屋などへの計画的な設置について引き続き普及活動を継続することと、設置済世帯に「住宅用火災警報器設置済シール」を貼り付けることを検討している。
本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。
〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html