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2016年11月

2.火山災害に対する備え

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総務省消防庁 防災課

 日本には110の活火山があり、そのうち、気象庁により50火山が「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」とされています。ここ最近の約30年間では、伊豆大島、雲仙岳、有珠山、三宅島、霧島山(新燃岳)で規模の大きな噴火が発生しています。平成26年9月27日には御嶽山が噴火し、噴石等により死者58人、行方不明者5人、負傷者69人(平成27年11月6日現在)の甚大な被害が発生しました。また、特に、平成27年5月29日には鹿児島県の口永良部島で噴火が発生し、島内住民全員が島外へ避難する事態となりました。他にも、平成27年6月下旬から7月上旬にかけて大涌谷(箱根山)で、ごく小規模な噴火が発生、桜島では平成27年8月に噴火警報(居住地域)が発表され、避難対象地域の住民が避難するなど、各地で活発な火山活動が観測されています。
 火山は、風光明媚な景観を呈し、周辺地域の生活を豊かにしている側面を持つ一方で、ひとたび噴火すると甚大な被害をもたらすことがあります。火山と共生していくためには、火山を「正しく怖がる」、「正しく恐れる」という意識のもと、火山災害について理解を深めることが重要です。

主な火山災害の要因
○大きな噴石
 爆発的な噴火によって火口から吹き飛ばされる直径約50cm以上の大きな岩石等は、風の影響を受けずに火口から弾道を描いて飛散して短時間で落下し、建物の屋根を打ち破るほどの破壊力を持っています。被害は火口周辺の概ね2~4km以内に限られますが、過去、大きな噴石の飛散で登山者等が死傷したり建造物が破壊される災害が発生しています。

○火砕流
 高温の火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象です。大規模な場合は地形の起伏にかかわらず広範囲に広がり、通過域を焼失、埋没させ、破壊力が大きく極めて恐ろしい火山現象です。流下速度は時速数十kmから百数十km、温度は数百℃にも達することから、火砕流から身を守ることは不可能で、噴火警報等を活用した事前の避難が必要です。


平成27年5月の口永良部島の噴火の状況
(気象庁ホームページより)
○火山灰
 火山灰は、時には数十kmから数百km以上運ばれて広域に隆下・堆積し、農作物の被害、交通麻痺、家屋倒壊、航空機のエンジントラブルなど広く社会生活に深刻な影響を及ぼします。

○火山噴火に伴う堆積物による土石流や泥流
 火山噴火により噴出された岩石や火山灰が堆積しているところに大雨が降ると土石流や泥流が発生しやすくなります。火山灰が積もったところでは、数ミリ程度の雨でも発生することがあります。これらの土石流や泥流は、高速で斜面を流れ下り、下流に大きな被害をもたらします。噴火後に雨が予想されている時は、川の近くや谷の出口に近づかないようにしましょう。

 この他、溶岩流や火山ガス、火山活動に伴う地震も火山災害をもたらす要因です。

火山噴火に関する情報
○噴火警報
 生命に危険を及ぼす火山現象の発生や危険が及び範囲の拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」(生命に危険を及ぼす範囲)を、「火口周辺」や「居住地域」と明示して発表されます。
 また、噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じてを5段階のレベル(「避難」、「避難準備」、「入山規制」、「火口周辺規制」、「活火山であることに留意」)に区分して発表され、それぞれについて「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」が定められています。


噴火警戒レベル(気象庁ホームページより)

○噴火速報
 登山者や周辺住民等に、火山が噴火したことを端的にいち早く伝えることにより、身を守る行動を取ってもらうための情報です。
 平成27年8月4日から運用が開始され、同年9月14日の阿蘇山の噴火の際、初めて発表されました。
 気象庁ホームページのほか、テレビ、ラジオ、各種防災アプリで知ることができます。なお、平成28年3月29日からは全国瞬時警報システム(Jアラート)でも配信しています。(防災行政無線等の自動起動には、市町村側の受信機改修が必要。)

活動火山対策特別措置法について
 御嶽山の噴火を受け、火山対策の強化を図るため、平成27年7月に、活動火山対策特別措置法が改正され、同年12月に施行されました。この改正法では、新たな火山対策の対象として、住民だけでなく、登山者が明記され、また、

  • 火山防災協議会(都道府県や市町村などを構成員とする、警戒避難体制の整備等の協議を行う機関)の設置
  • 火山情報の伝達、避難場所等を含む避難計画等の都道府県及び市町村地域防災計画への記載
  • 市町村長による、警戒避難の確保に必要な事項の周知
  • 避難確保計画(ホテル等の集客施設等の管理者等により作成される、避難計画等)の作成
  • 登山者が自らの安全を確保するための努力義務(火山情報の収集、登山届の提出、ヘルメット等の装備品の携行等)

などが定められました。各地域で改正法に基づく、取組が進められています。

火山災害から身を守るために
 火山は、事前に噴火を予測できる場合がある一方で、ひとたび噴火すると、噴石・火砕流・泥流等が短時間で火口周辺や居住地域まで襲来する可能性があります。このため、事前の備え、迅速な避難が人的被害の有無を大きく左右します。
 このことから、火山災害から身を守るためには、まず、危険な区域を確認しておくことです。改正活火山法では、市町村等は、火山ハザードマップに防災上必要な情報を記載した、火山防災マップを住民等に配布・周知することとされましたので、火山周辺地域に居住している場合や登山をする場合は、火山防災マップや最新の火山情報を事前に確認し、いざというときに備えましょう。
 そして、火山活動に大きな変化があった場合には「噴火警報」や「噴火速報」が発表されますので、気象庁や市町村からの情報など、テレビ、ラジオ、防災行政無線、広報車、緊急速報メールなどの情報に注意しましょう。市町村から避難勧告・指示があった場合は、速やかにそれに従い行動します。
 また、地鳴りや地震を感じたときなど、危険な兆候が見られた場合には、市町村からの避難勧告・指示を待たず直ちに安全行動をとることが必要です。火山防災マップ等に記載されている避難計画に沿って、速やかに避難しましょう。特に、噴石から身を守る必要がある状況では、速やかに避難するのと同時に、岩かげに身を隠す、近くのシェルターや山小屋等に避難する等の行動が有効です。

(総務省消防庁「消防の動き 2016年10月号より」)

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