HOME  > 防火ネットニュース12月号  > 3.安全にガソリン携行缶を取り扱うために

2013年12月

3.安全にガソリン携行缶を取り扱うために

目次 次頁

ガソリン携行缶を安全に取り扱うための取り組み

総務省消防庁 危険物保安室

 はじめに

 平成25年8月15日(木)京都府福知山市において発生した福知山花火大会火災において、ガソリン携行缶が炎天下に長時間置かれていたことに加え、ガソリン発電機の排熱を浴び続け、高温になっていたことが多くの被害者を出した原因である可能性があることから、ガソリン携行缶を安全に取り扱うための検討を実施した。

 ガソリン携行缶の使用上の留意事項

 ガソリンは揮発性が非常に高く、蒸気は空気より重いため、低温環境下においてもガソリン携行缶の蓋を開けると可燃性蒸気が出て、静電気火花のような小さな火源でも火災になる可能性があることがわかっている。
 また、消防研究センターが行った夏季にガソリン携行缶を直射日光の当たる場所に置いた実験等から、携行缶内の液温は約55℃まで上昇するとともに携行缶内圧も上昇することがわかっており、その状態でガソリン携行缶の蓋等を開放するとガソリン内部に気泡が発生(低沸点成分が沸騰)し、大量の可燃性蒸気が携行缶外に排出されることもわかっている。
 さらに発電機の排気口近傍にガソリン携行缶を置いた実験等では、携行缶内の液温は約90℃まで上昇し、その状態で蓋等を開放すると激しい突沸現象が起きて、大量のガソリンが開口部から噴き出す危険性が高いこともわかっている。
 これらのことを踏まえ、ガソリン携行缶を安全に取り扱うための留意事項について次のとおり、10月4日に全国の消防機関に対して通知した。

1.ガソリン携行缶は、直射日光の当たる場所や高温の場所に置かないこと
 夏季はもちろん、それ以外の時期でも直射日光の当たる場所や高温の場所にガソリン携行缶を置くと、ガソリン液体又は可燃性蒸気が大量に噴き出す可能性があるため、日陰の風通しの良い場所にガソリン携行缶を置くことを徹底する必要がある。
 なお、ガソリン携行缶の蓋やエア抜きの締め方が緩いとガソリン携行缶周辺に可燃性蒸気が出続けて危険なので、使用後は確実に締めることも重要である。

2.ガソリン携行缶を取り扱う場合は、周囲の安全確認とエンジン停止を徹底すること
 ガソリン携行缶を取り扱う場合は周囲に火源になりそうなものがないことを確認するとともに、万が一、火災になっても延焼拡大や人的被害が生ずるおそれがないことを確認する必要がある。特にガソリン携行缶を用いて発電機等にガソリンを注油する際には、ガソリン携行缶の蓋を開ける前に発電機等のエンジンを停止することが必要である。

3.ガソリン携行缶の蓋を開ける前に、エア抜きを行うこと
 日陰の風通しの良い場所にガソリン携行缶を置いてあっても、外気温の上昇に伴いガソリン携行缶内の圧力が高くなっている可能性があり、ガソリン携行缶の蓋の開放に伴い可燃性蒸気が噴き出す可能性があることから、ガソリン携行缶の蓋を開ける前に、少しずつエア抜きを行うことが望ましい。また、エア抜きはガソリンをスムーズに注油するための空気取り入れ口を確保する意味でも有効なので、エア抜きのあるガソリン携行缶にあっては注油前に積極的にエア抜きを行うよう広報することが重要である。
 ただし、直射日光や発電機の排気口等によりガソリン携行缶が暖められている場合は、ガソリン携行缶の蓋の開放のみならずエア抜きも厳禁である。直ちにガソリン携行缶を周囲に火気や人がいない日陰の風通しの良い場所に移動させ、ガソリン温度が常温程度まで下がる6時間程度はおいた後に、ゆっくりとエア抜きをすることが必要である。なお、ガソリン携行缶内部が高温・高圧になっている場合は、ガソリン携行缶の外側が熱くなっていたり、ガソリン携行缶の蓋が固く開けにくくなっている場合があることにも留意されたい。

 ガソリン携行缶の使用上の注意喚起

 今回の火災を踏まえ、ガソリン携行缶を安全に取り扱うために更なる注意喚起が求められているが、危険物保安技術協会で開催された「ガソリン携行缶の使用上の注意事項に関する検討会」(委員長:須川修身諏訪東京理科大学教授)において、ガソリン携行缶のユーザーに特に注意すべき事項についてガソリン携行缶本体にシール等により表示することが提言された。
 消防庁としても、このような注意表示は危険物保安技術協会の試験確認を受ける携行缶に限らず、全てのガソリン携行缶についてこれを安全に取り扱う上で有効なものと考え、10月4日にガソリン携行缶の製造販売に関係する業界団体に対して、ガソリン携行缶のユーザーに特に注意すべき重要な事項及び注意表示の方法等の留意事項を次のとおり周知し、当該注意表示がなされたガソリン携行缶の製造・販売の取り組みへの協力について要請した。
 また、ガソリン携行缶以外のミニドラム等の小型危険物容器であって、一般の者がガソリンを収納することを目的としているものであっても、同様の表示がなされるよう併せて要請した。

1. ガソリン携行缶のユーザーに特に注意すべき重要な事項
【注意表示の例】
【注意表示の例】
 福知山市花火大会火災の状況等を踏まえ、ガソリン携行缶のユーザーに特に注意するべき重要な事項は次のとおりであること。
 ・ガソリンの噴出に注意すること。
 ・直射日光の当たる場所や高温の場所で保管しないこと。
 ・周囲の安全を確認すること。
 ・フタを開ける前にエンジンを停止すること。
 ・フタを開ける前にエア抜きすること。

2. 注意表示の方法
 1に示した注意事項の旨をガソリン携行缶の注油口付近の目立つ場所に判読しやすい大きさのシール等により表示することが望ましいこと。

 今後の対応

 消防庁では、関係団体と連携してガソリン携行缶本体の注意表示の充実等、より安全にガソリン携行缶が取り扱われるための取り組みをさらに進めることとしている。

(総務省消防庁「消防の動き 2013年11月号より」)

このページの上に戻る
目次