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2013年12月

4.南三陸町における防災教育について、先進事例を紹介

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【先進事例紹介】避難所運営訓練を核として防災教育の推進(宮城県 南三陸町)

宮城県 南三陸町立歌津中学校

活動の目的
 本校防災教育の核として「避難所運営訓練」を設定し、地域ぐるみで防災教育を推進、災害時には自分の命を守り、自らの役割を果たす生徒の育成を目指している。「避難所運営訓練」のねらいは、避難所を運営するという疑似体験をすることによって、

  • ①一人一人が家族や地域のために働くという役割があることを感じ取らせることによって、災害発生(発災)時には、必ず生き残らなければならないという考えを強くもたせる。
  • ②発災時には人に迷惑をかけずに、自らの役割について積極的に考えられるようにする。
  • ③自らの役割を自覚し、その役割を主体的に果たすことによって、発災時における心構えをもてるようにする。
  • ④人と協力し、力を合わせることの大切さについて体得させる。

ことにある。

活動の内容
 本校では平成23年11月に、全校生徒からなる「歌津中学校少年防災クラブ」を発足させ、津波などの災害に強いまちづくりを目指して総合的な学習の時間等を使って防災教育を推進している。
 取り組みとしては、南三陸消防署歌津派出所の所員の方々のご指導のもと、5月初めから9月にかけて、規律訓練、救急救命法訓練、応急処置法訓練、傷病者搬送訓練、がれき撤去訓練、穴掘り訓練、薪を使っての炊き出し訓練を行う。その後、これらの訓練を総合し、災害時に実際に活用できる力を付けるための訓練として10月に「避難所運営訓練」を行っている。
 この「避難所運営訓練」は、大人の訓練に子どもが参加するものではなく、生徒が大人になったことを想定して、生徒が主体となって行う訓練である。生徒が大人になった時に、再び災害に見舞われても、協力して地域を守ることができることを目指している。なお、教員の関わりとしては、生徒の安全面に配慮するにとどめ、極力本番での指導は行わず、失敗も反省に生かせるようにするといったスタンスで取り組んでいる。
 以下に「避難所運営訓練」の具体的な内容を記す。

  • 〇自宅から歌津中学校避難所への徒歩避難(徒歩登校)
  • 〇避難者の把握(名簿づくり、避難者の健康状態の把握等)
  • 〇避難所自治組織の立ち上げ(代表者の選定、関係諸機関の代表(役場、消防、学校、消防団など))
  • 〇各地の被害状況の情報収集、役場や消防本部、県庁などへの状況報告、救援依頼訓練(大きな地図を準備、浸水地域等災害の状況を記載)
  • 〇炊き出し等、給食に関する訓練(調理器具・食材の準備、かまどづくり、炊飯、配膳・分配、支援食品の分配など)
  • 〇衣類・寝具等に関する状況把握・調達訓練
  • 〇避難所の整備(パーティション等の製作、清潔保持の工夫、トイレ等の準備、防寒対策等)
  • 〇要救助者の救助訓練(救急救命、応急処置、搬送等)
  • 〇保健医療的な準備(スペースの確保など)
  • 〇傷病者への応急処置
  • 〇消火訓練(ポンプの活用、バケツリレーなど)
  • 〇避難困難者(小学生を想定)の避難支援訓練
  • 〇支援が必要な避難民(老人、幼児、妊婦等)への対応
  • 〇道路等の瓦礫撤去など、復旧に係る作業の訓練(土嚢づくり、穴掘り訓練など)
炊き出し訓練
炊き出し訓練
要救助者の搬送準備
要救助者の搬送準備

今後の取組
 将来における防災力の向上に関して、学校独自の活動には限度があり、昨年度「歌津中学校区防災協力者会議」を設置した。これは、学校をはじめとして、南三陸消防署、南三陸町役場、南三陸消防団や地元団体等のメンバーを構成員とし、具体的、効果的な防災教育及び防災管理・組織活動を推進することを目的としている。
 今後も、避難所運営訓練を核とした防災教育を推進するにあたり、地域ぐるみで防災力の向上に取り組む中で、災害時には自分の命を守り、自らの役割を自覚し果たす生徒を育成していきたい。

「避難所開設時にやることリスト」の掲示
「避難所開設時にやることリスト」の掲示
トイレ用水の確保
トイレ用水の確保

(総務省消防庁 「消防の動き」2013年11月号より)

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