令和元年12月7日(土)・8日(日)の2日間、当協会の主催による「令和元年度全国自主防災組織リーダー研修会」を、ルポール麹町にて開催し、全国から各地域で活動されている83名の自主防災組織リーダーの方々にご参加いただきました。
この研修会は、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が定められたことを機に、その趣旨を実現すべく、全国の自主防災組織リーダーの皆さんが一同に会し、組織運営の実態・課題について意見交換する場を設ける等の目的により、今回で6回目の開催となります。
この研修会を開催することによって、より一層自主防災組織の意識を高め、活動への参加促進や活性化が図られ、自主防災組織の発展につながるものと考えています。
第1日目
『開会の挨拶』
当協会の会長 秋本 敏文より、「今年も災害が多い年でした。この日本は様々な災害が全国各地で起こる国です。大きな災害が起きても消防などの公の機関だけでは対応しきれません。防災の原点は地域にあり、地域のことをよく把握している皆さんの存在が重要です。本日はせっかく全国からリーダーの方々が集まっていただきましたので、知識・経験を意見交換していただき、自分達の地域に役立てていただきたいと思います。」と開会の挨拶をいたしました。
秋本会長による開会の挨拶
全国から83名の自主防災組織リーダーが参加
『総務省消防庁 小宮国民保護・防災部長による来賓挨拶』
小宮国民保護・防災部長による来賓挨拶
来賓挨拶では、総務省消防庁 国民保護・防災部長 小宮 大一郎氏より「今年も災害が多い年でありました。自主防災組織に関して、先日の国会質問に出るほど自主防災組織の存在意義が重要視されています。また、風水害や土砂災害警戒の避難勧告が5段階になり、シンプルに住民の皆さんに伝達するよう、政府でも施行しているところです。昨年の西日本豪雨を教訓にして、改めて自助・公助・共助が重要であると認識され、皆さんが隣近所の方々と安全に逃げるためには、政府の分かり易い情報を伝達することが必要だと考えております。消防庁としても自主防災組織が活性化するための支援を行っております。引き続き、地域防災力の充実強化のために皆様のご協力を賜ればと思っております。」と挨拶をいただきました。
―講演―
『池谷氏による講演 「土砂災害とその対策」―災害伝承や前兆現象を活用して- 』
池谷氏による講演 一般財団法人砂防・地すべり技術センター 研究顧問 池谷 浩氏より「土砂災害とその対策」と題し、講演を行っていただきました。
日本各地で起きた過去の土砂災害現場の様子から、災害が起こった前と後の地形の変化や、地形の特性から起きた被害の状況を説明していただき、地域で起きた過去の災害を知る事で、いざという時のため避難方法を検討し「公からの情報だけに頼るのではなく、自分たちで考え、知る努力が必要です」など、映像を交えてお話しいただきました。
『総務省消防庁 国民保護・防災部防災課長による講演「大規模災害に備える」』
小谷氏による講演
総務省消防庁 国民保護・防災部防災課長 小谷 敦氏より「大規模災害に備える」と題し、講演を行っていただきました。
近年日本列島で起きている気象状況の特性や今年発生した台風第19号がもたらした被害状況、見直された避難勧告・避難指示等や 防災気象情報と警戒レベルとの関係、また、発生が懸念される大規模地震の被害想定、火山噴火の警戒レベル等の説明等についてお話しいただきました。
『総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長による講演
「地域防災力の充実強化への取組」』
田中氏による講演
総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長 田中 昇治氏より、地域全体の防災力を向上させるため政府が取り組んでいる自主防災組織の活動の中心となるリーダー等の育成支援の施策について、また、組織の重要性や、そのために消防庁が作成した手引書の内容と取り組みについて、さらに、自主防災組織に関する諸制度の解説や、教育訓練の制度、および「防災まちづくり大賞」等について講演を行っていただきました。
―活動発表―
須賀氏
茨城県常総市中妻町 根新田町内会 須賀英雄 氏
2015年9月に起きた「関東・東北豪雨災害」の鬼怒川堤防決壊により、甚大な被害を受けた被災状況や、臨時災害対策本部を立ち上げ復旧活動を行った様子。早めの避難指示が出ていても逃げ遅れた住民が4,000人以上いたことを教訓に、ITを活用して水害時の避難行動計画を作成し、SNSやライブカメラで情報を発信している取り組みを紹介。また、震災時の対応として、根新田自主防災組織が作成した「無事です」タオルを紹介し、素早く安否確認ができるような施策等を発表いただきました。
川田氏
岡山県総社市 下原・砂古自主防災組織 川田一馬 氏
2018年7月の「西日本豪雨」によりアルミ工場の爆発と浸水の二重被害に遭われた状況や、自主防災組織が危険地域を把握してしていたことで全戸全員に早めの避難を呼び掛け、小田川が決壊したときには住民全員が避難を完了することが出来た取り組みを紹介。避難所の運営や復旧活動の苦労。この災害を教訓に地域の絆を強めるために行っているイベントや避難訓練の重要性等を発表いただきました。
第2日目
『グループ討議』
4つのグループに分かれてグループ討議を行い、各自主防災組織の活動内容や問題点などについて討議しました。
グループ討議の様子(1)
グループ討議の様子(2)
『各グループ代表者により討議結果報告』
各グループで討議された内容や、地域で抱える問題等について代表者の方に結果報告を行っていただきました。
第1グループ 計17名
(北海道、秋田県、茨城県、石川県、京都府、岡山県、香川県、福岡県、長崎県)
- 住民の危機、防災意識が低下している傾向にある。
- 若い世代の自主防災組織への参画や避難訓練に参加する率が低い。
- 自治会と自主防災組織との連携に腐心しているところや、自治会と自主防災会は両輪であって、平時の自治会、災害時の自主防災会としている組織がある。
- 行政との連携ができないことに悩んでいる。
- 女性の視点でもっと意識を改革していく必要があるのではないか。女性の役員への参加を積極的に進めるべきではないか。
- 自主防災組織の継続性や質の向上、組織の活性化がこれからの課題。それには人、物、資金が重要であり、資金についてどう集めればいいのか。行政、住民、企業等、様々な事例を調べ、意見を組織から発信していくべきなのではないか。
第2グループ 計23名
(青森県、福島県、東京都、新潟県、福井県、静岡県、滋賀県、大阪府、鳥取県、山口県、徳島県、熊本県、鹿児島県)
発災前の対応
- 日頃から顔の見える関係づくりをしておくことが重要。地域のお祭りや運動会等、色々な地域活動を通じて関係づくりを進めることが大切。地域にどのようなリスクがあるかの情報を共有する場とすることができる。
発災時の対応
グループ討議結果発表(1)
- 「逃げてください」ではなく「逃げなさい!」と強く、強制的に避難を呼び掛ける。サイレンや避難の呼び掛けが聞こえなかったということがないよう、大きく強めに伝えなければならないのではないか。
- 豪雨水害が多い近頃ですが、リーダーの方はいち早い情報収集をされ、地域の皆さんに伝えることが私たちの役目ではないか。
発災後の対応
- 日頃から地域の活動をして、避難所に集まった時に円滑に運営をしていけるのではないか。
第3グループ 計17名
(岩手県、栃木県、神奈川県、山梨県、岐阜県、三重県、奈良県、広島県、佐賀県、宮崎県)
自主防災組織を活性化するために
- 地域住民に対して、SNSやチラシ、回覧板等地域にあった方法を活用して防災意識を高めると同時に自主防災組織の活動を知ってもらう。
- 若い世代を育てるために、小・中・高校生やその親世代に向けて勉強会を開くことで、家族で防災について意識を共有してもらう。
- 減災のためにも、組織の取組を住民に告知した方がよい。
- 飲み水等の備蓄は自治会か公民館や役所でするものかどうかについて悩んでいる地域があり、ある地域では1本ずつ住民の方にサンプルで配付し、備蓄に対するメッセージを添えて意識を育ててはどうか。
- 災害後、水道に苦労した地域が多いことから、役場で井戸の登録制度を行っているところがある。
- 過去の災害等で建物を建ててはいけない場所を分かり易く表示するような制度を作って欲しい。
第4グループ 計21名
(宮城県、群馬県、千葉県、富山県、愛知県、兵庫県、和歌山県、島根県、愛媛県、高知県、大分県、沖縄県)
災害が起きた後の安否確認について
- 「無事カード(プレート)」を住民に配布している地域があったが、本当に動けない状況にあるのかどうかを判断するためには、住民台帳を作成して、効率よく安否確認をすることが重要ではないか。
グループ討議結果発表(2)
個人情報の扱いについて
- 住民台帳を作成する際に個人情報の問題があり、なかなか進めない。
- 隣近所の情報を集めて、簡易的な住民台帳を作成することで安否確認をする地区もある。
- 個人情報の中でも、必要最低限の情報と、それ以上の深い情報とを分けて責任者が厳重に保管することで、住民の理解を得て情報提供してもらい、いざ災害が起きた時に消防や警察に開示する取り組みをしている地域がある。
『修了証授与と閉会の挨拶』
修了証授与
西藤理事長による閉会の挨拶
研修会参加者の中から代表者に、当協会の理事長 西藤 公司より研修会修了証を授与した後、今回の研修会参加に対するお礼と、自主防災組織の益々の活躍を期待しますと閉会の挨拶を申し上げました。