令和5年12月7日(木)・8日(金)の2日間、当協会主催による「令和5年度全国自主防災組織リーダー研修会」を、東京都千代田区にあるホテルルポール麹町にて開催しました。
各都道府県から2~3名の自主防災組織のリーダーを募集したところ、各地域から86名の方々にご参加いただきました。
この研修会は、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が定められたことを機に、その趣旨を実現すべく、全国の自主防災組織リーダーの皆さんが一同に会し、組織運営の実態・課題について意見交換する場を設ける等の目的により、今回で8回目の開催となります。
この研修会を開催することによって、より一層自主防災組織の意識を高め、活動への参加促進や活性化が図られ、自主防災組織の発展につながるものと考えます。
-第1日目-
『開会の挨拶』
当協会の会長 秋本 敏文より、「この日本は様々な災害が全国各地で起こる国です。大きな災害が起きても消防など、公の機関だけでは対応しきれません。防災の原点は地域にあり、地域のことをよく把握している皆さんの存在が重要です。本日はせっかく全国からリーダーの方々が集まっていただきましたので、多くの方々と情報交換をしていただき、自分達の地域に役立てていただきたいと思います。」と開会の挨拶をいたしました。
秋本会長による開会の挨拶
研修会の様子
『総務省消防庁 田辺国民保護・防災部長による来賓挨拶』
総務省消防庁 国民保護・防災部長 小谷 敦 氏
小谷 国民保護・防災部長による来賓挨拶 「日頃から地域の要として、防災活動を行っていただきまして、誠にありがとうございます。
今年は関東大震災から100年という節目を迎えてました。それから様々な災害が日本国内でも起こりましたが、消防が絡む大きな政策の一つとしては、阪神・淡路大震災を機に「緊急消防援助隊」が編制され、これによって年々「公助」の面が充実しつつあります。
しかし、それでも大きな災害が起こると残念ながら公助だけでは対応できません。「自助」の他に復興まで考えると、ここにお集りの皆様のような「共助」が重要であると改めて認識されてきています。
「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が施行されてから10年たちましたが、総務省消防庁としても自主防災組織の方々に向けた取り組みを行っておりますので、引き続きご支援を賜りますよう、お願いいたします。」
『室﨑氏による講演 「自主防災組織の役割」』
神戸大学 名誉教授 室﨑 益輝 氏『
室﨑氏による講演 「阪神・淡路大震災や東日本大震災、今回の熊本地震などの巨大災害を経験して、地域レベルの防災の重要性が再認識され、その強化を図るために、地域の力を合わせ隣近所と協力して防災を進めていく必要性。そのためには日頃の繋がりが重要です。
また、被害の軽減を図るために、人や情報、物資など資源の確保。組織やネットワークの体制の構築。補強や整備など環境の改善が必要です。防災では「心(使命感)、技(専門性)、体(組織性や連携性)」が欠かせません。地域の中核として活動されている自主防災組織のコミュニティの力が今後益々期待されています。」など述べられました。
『活動発表』
神奈川県横浜市 太尾小学校地域防災拠点運営委員会 委員長 竹﨑 理浩 氏
(令和2年度防災まちづくり大賞 総務大臣賞受賞)
【活動発表】竹﨑氏 10町会7自治会からなる横浜市大倉山において、学校を拠点とした防災まちづくりを進めるにあたり、取り組んでいる施策についてお話しいただきました。
子どもたちにこの地域を「ふるさと」と思えるような安全なまちを目指し「ふるさとまつり」をはじめとする、防災まちづくりに広がり、学校の事業参観日を利用して防災訓練や様々なイベントを行い、運営側も無理をしない、強制的にしないよう、手が空いている時に参加できるような、事務局側も臨機応変に運営している様子について活動発表していただきました。
和歌山県海南市 自治会自主防災会・臨海企業連絡会 会長 吉川 裕彰 氏
(令和4年度防災まちづくり大賞 消防庁長官受賞)
【活動発表】吉川氏 東日本大震災を教訓に、南海トラフ地震に備え、自治会自主防災会3団体と地元企業が、津波避難場所における情報収集・伝達活動、救急・救助活動等の強化を図り、命を守ることを目的に活動内容ついてお話しいただきました。
津波対策のために、高台にある神社と協力して避難運営訓練や、使われていない農業用倉庫に資機材や備蓄物資を整備。避難行動要支援者用リアカーや車いすの整備や平時の地域福祉活動で使用している「避難行動要支援者の個別計画」策定などについて活動発表していたただきました。
広島県広島市 落合学区自主防災会連合会 連合会長 柳迫 長三 氏
(令和4年度防災まちづくり大賞 総務大臣賞受賞)
【活動発表】柳迫氏 平成26年8月20日に発生した広島豪雨、平成30年7月に発生した西日本豪雨災害など、20年間で大きな水害を3度経験したことを機に「地域の全住民へ防災に関心を持ってもらう」ため「考える防災」についての取り組みについてお話しいただきました。
犠牲者の多くが高齢者であったことから、災害時要援護者でも支援をただ待っているだけではなく、そのためには自ら横の繋がりを作り、自ら発することの重要性について自治会が周知にまわり、そのための支援を行った施策や、防災士をはじめ、女性や学生に積極的に参加してもらうよう組織の編成を行い、資金集めや小学校での防災教育、大学との連携、親子で楽しめる防災教育などについて発表していただきました。
『総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長による講演
「地域防災力の充実強化に向けた『自主防災組織に関する取組」』
総務省消防庁 国民保護・防災部
地域防災室長 志賀 真幸 氏
志賀氏による講演 地域全体の防災力を向上させるため政府が取り組んでいる「自主防災組織の活動の中心となるリーダー等の育成支援の施策」について。
また、「組織の重要性や、消防庁が作成した手引書の内容と取り組み」について。さらに、自主防災組織に関する諸制度の解説や、教育訓練の制度、および「防災まちづくり大賞」等について講演をいただきました。
-第2日目-
『グループ討議テーマ:「連携による自主防災組織の活性化」』
6つのグループに分かれて、事前にお知らせしたテーマについてグループ討議が行われました。
グループ討議の様子(1)
グループ討議の様子(2)
『各グループ代表者により討議結果発表』
各グループで討議された内容について代表者の方に結果発表を行っていただきました。
討議結果報告の様子(1)
討議結果報告の様子(2)
民生委員とのつながり、ケアマネージャーとのつながり、こういうことによって災害に対する課題を克服できるのではないか。
自主救助隊レスキュー隊を作っている。自主的に独立してやっている。
女性の参画が重要である。いることはいるが、さらに多くの参加が必要ではないか。
避難訓練等をやっているが本当に身になっているかどうか。時期や内容等をチェックして、質を高めていくということが必要ではないか。
若い男性が日中不在している中、若い女性と高齢者だけが残るということを考えると、その時にいる方たちだけで地域を守っていかないといけないというも想定しながら、各自主防災組織の方が工夫をしながら訓練をしている。
行政の支援で活動いてもらっていて、何となく組織をつくって、何となくやっている。
要支援者の避難時にどのように誘導するかという課題については、民生委員さんと連携している。
民間企業と連携をしていて、企業からEV車を提供されて非常電源に役立ている。
炊き出し訓練にも企業に参加してもらっている。
段ボール会社で段ボールを提供してもらって避難所運営をしている。
個別避難計画については要支援台帳の個人情報の関係もありますので、地域にある病院と連携している。
どうしても防災訓練は自治体が訓練を計画して自主防災会員や住民はお客様扱いが多い。これを続けると、住民は避難所や自治体が開設してくれるものだと勘違いしてしまう。自治会が計画して住民が参加して訓練を作るべきだという意見もかなり出ましたが、自治体や行政の職員は3年から5年ぐらいで交代してしまう。自治会の各自主防災会の会員等が自治体の職員と十分に話合って、顔が見れる関係を構築して訓練を進めるべき。
自治会長は変わってしまうが、防災の担当はずっと継続的にやってもらったり、町内会の中の多くの方をその役割に充てるなどで解決できるのではないか。
学校は町の中心にあるので、そういったところでの地域で中心になっていくので、子供たちに参加してもらうことで、保護者の参加が非常に高まるということがあるのではない。
要支援者の方々はそもそもそういったところに出られない。そういった行事があること分からないとか、そこに引っ張り出すことができない。
うちの地域災害少ないから災害に対して危機意識が低い方が多く、リーダー自身もそう感じている方がいるようですが、地球のスパンから考えるとやはり最後はあるという危機意識を我々が持たなければならないのではないか。
社会福祉協議会の中に自主防災組織があるので、協議会に従属されている校長先生の学校との連携防災訓練を毎年行っている。
地域によっては開かれていない学校があり、敷居があるのだなというのを気づかされ、それは各地域の課題。
各地区の防災士同志が携帯で繋がっていて、それを用いて各地域の繋がりを広めている。
各種SNSを積極的に活用していく。
女性のリーダーの育成することが大事。ママさん防災士、また女性消防団員が増えているので、そことの連携も非常に大事だと思います。
繋がらないとなる可能性があるが、携帯の存在が大事ですので、充電を重要視し、発電設備の準備が大切です。
PTAやおやじの会同志が普段から繋がりを持ち、情報交換をする。
行政とのつながり、市役所の危機管理課と連携しながら、市民に還元する。避難所運営において支援物資の整備にも関わってくると思います。
常備消防等の主たる補助である団員に指導者としての自覚により技術的指導の向上につながる。
災害発生時の連携。平時の顔合わせを頻繁に行う必要がある。訓練だけでなく、イベントなども併せて行う。
各地区の自主防災役員の意識が低いので、自主防災の重要性について講演などを通じて伝える必要がある。
年に数回、避難訓練や月に一度、防災倉庫を資機材の点検などを行う。
高台にある地区の自主防災会は意識が低くなりがち。
他県や市町村と連携しながら、地域での防災啓発研修会を一緒に計画運営することが大事である。
各地区の小中学生を対象に防災施設の紹介防災倉庫に何が備蓄されているかなどの見学会を行政と連携して行う。
男女共同参画地域未来と連携をしながら、県内の中学、高校防災教育との支援を行っている。学生の防災意識向上につながる先生の防災意識向上も必要となってくる。
第Aグループ
第Bグループ
第Cグループ
どんな災害を想定して自治体と連携して防災訓練をしているか
第Dグループ
自治会長が毎年変わったり、行政の方も変わったりするので、それをどうやって担保していくのか
地域の住民の関心を高める方策
要支援者の対応について
住民の関心を高めるには
討議結果報告の様子(3)第Eグループ
学校との連携
横との連携
男女共同参画の視点
情報による繋がり
第Fグループ
消防団との連携
連携による自主防災組織の活性化
『グループ討議 講評』
元東京消防庁丸の内消防署長 谷口 由美子 氏
谷口氏による講評 現在「防災士研修センター」講師などを務めている谷口氏にグループ討議の講評を行っていただきました。
「今回発表された皆様の内容をお聞きしていると「今後検討すべき課題」について、学校と地域、若い世代への教育、子供による防災視点、女性の視点、このようなものを発掘していくためには、年代に絞った研修会を行うことも大切なのではと感じました。
また、女性の視点についてですが、女性同士だけで解決しようとするのではなく、男性側でも女性の意見を受け止められるような体制を準備する必要があります。そして避難所運営をする側に女性がいることによって場が和むこともありますので、運営側に積極的に女性を起用していただけたらと思います。
コロナウィルス感染によって自主防災組織の活動が出来なかった時期がありましたが、より一層他の組織との連携を図るためには、連携相手をよく観察し、どういう組織なのか、何を必要としているのかなど見極め、それによってスムーズに横とのつながりができ、その輪が広がっていくのではと思いました。」
『修了証授与と閉会の挨拶』
修了証授与
髙尾理事長による閉会の挨拶
研修会参加者代表に、秋本会長より修了証を授与した後、(一財)日本防火・防災協会 髙尾 和彦 理事長による閉会の挨拶では、今回の研修会参加に対するお礼と、日頃地域で活躍されている自主防災組織の皆様へ感謝等を述べて、2日間の研修会を終了いたしました。