日本列島には毎年、主に7月から10月を中心に台風が襲来し、土砂災害や河川のはん濫など、大きな被害が発生しています。
平成23年9月には台風第12号が日本に上陸しましたが、台風の動きが遅かったため、台風周辺の非常に湿った空気が長時間流れ込み、西日本から北日本にかけて、山沿いを中心に広い範囲で記録的な大雨となりました。この大雨により、各地で土砂災害、浸水、河川のはん濫等が発生し、死者・行方不明者は97名にのぼりました。特に三重県、奈良県、和歌山県の3県では死者・行方不明者が87名にものぼる甚大な被害が発生しました。
さらに、同月に日本に上陸した台風第15号では、西日本から北日本にかけての広い範囲で、暴風や記録的な大雨となり、死者・行方不明者は19名にのぼりました。
台風による災害
〔大雨による災害〕
台風は激しい雨をもたらします。台風やその周辺部では、激しい雨が長時間にわたって降り続くことがあります。また、台風が日本から遠く離れた南の海上にあっても、日本付近にある前線に暖かく湿った空気が送り込まれて大雨となることがあり、河川のはん濫や、がけ崩れ、土石流などが発生して私たちの生活や生命を脅かすようになります。
〔暴風による災害〕
台風の周りでは強い風が吹いています。平均風速15~20m/sの風であっても、歩行者が転倒したり、車の運転に支障が出たりすることがあります。さらに強くなると、物が飛んできたり、建物が損壊したりするなどの被害が生じるようになり、風速40m/sを超えると電柱が倒れることもあります。
また、台風の周辺では大気の状態が不安定になり、竜巻などの現象が生じることがあります。
〔高潮・高波による災害〕
台風が接近して気圧が低くなると海面が持ち上げられます。そこにさらに強い風が吹き込んで、大きな高潮災害が発生することがあります。昭和34年に日本に上陸した伊勢湾台風では、名古屋港で通常よりも約3.5mも潮位が上昇するなど、高潮による大きな災害が発生しました。
また、台風の強い風によって高波が発生したり、台風が日本から遠く離れていても「うねり」となって日本周辺に高波が押し寄せたりすることがあります。
台風の強さ | 中心付近の最大風速 | 風速と被害(「新版気象ハンドブック(朝倉書店)より」) |
強い | 33m/s以上44m/s未満 | 〔40m/s〕屋根が飛ぶ。小石が飛び散る。 |
非常に強い | 44m/s以上54m/s未満 | 〔50m/s〕倒れる木造家屋が多くなる。 |
猛烈な | 54m/s以上 | 〔60m/s〕鉄塔の曲がるものがでる。 |
台風の強さと最大風速、被害の対応(気象庁資料より)
台風に対する備え
台風は時として非常に大きな被害をもたらしますが、事前に台風の大きさや進路を予測し、気象情報として発表される体制が整っているため、事前の備えを十分に行えば、被害を未然に防いだり、軽減させることが可能です。
平成23年台風第12号に伴い災害
(写真提供:和歌山県新宮市)〔日頃からの備え〕
家庭においては台風に備えて、次のような準備を十分にしておきましょう。
・あらかじめ窓や雨戸の補強をする
・避難する時に必要な非常持出品をまとめておく
・家の中で数日間過ごすことができるよう水や食料などの非常備蓄品を準備しておく
・避難所の位置や避難所までの道筋を確認しておく
・ハザードマップなどで、家の近くの危険箇所を確認しておく
また、災害時の避難において支援を要する方々(災害時要援護者)が迅速・安全に避難できるように、いざという時に誰が支援し、どの段階でどうやって避難するかなど、具体的な避難支援計画を定めておくことが重要です。
〔台風が近づく危険性が高まったら〕
台風が近づく危険性が高まったら、常に台風に関する情報や避難に関する情報に注意してください。災害発生の危険性が高まり、市町村から避難勧告や避難指示などが出された場合には、危険な状態になる前に、すぐに安全な場所に避難しましょう。
強い雨や風などによって市町村からの避難勧告等の呼び掛けが聞き取れないことがあるかもしれません。気象情報等をテレビやラジオなどでチェックし、危険と思われる場合は速やかに避難することが重要です。
また、浸水や暴風雨により避難所までの歩行等が危険な状態になった場合には、自宅や隣接する建物の上部階へ緊急的に避難する、崖から離れた側の部屋に移動するなど、安全を確保するため、臨機応変な対応をとる必要があります。
総務省消防庁「消防の動き 2012年6月号より)