池田達雄 消防庁長官
令和7年の新春を迎えるに当たり、全国の消防関係者の皆様に謹んで年頭の御挨拶を申し上げます。皆様方には、平素から消防防災活動や消防関係業務などに御尽力いただいており、心から敬意を表し、深く感謝申し上げます。
昨年は、元日に発生した石川県能登地方を震源とする地震、5月からの大雨・台風による災害、8月に発生した宮崎県日向灘を震源とする地震、9月20日からの大雨による能登半島地方での災害など、日本各地で災害が相次いでおり、多くの方々が犠牲になりました。
お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
災害現場においては、被災地の消防本部や地元消防団はもとより、被災状況によっては県内外の消防応援隊や緊急消防援助隊も総力を挙げて国民の生命、身体及び財産を守るため最前線での活動等に当たっていただきました。改めて皆様の御活躍・御尽力に敬意を表しますとともに、心から御礼申し上げます。
また、救急搬送困難件数は高い水準で推移しており、令和6年は記録的な猛暑のため、熱中症患者の搬送も過去最多となりました。そうした過酷な救急の現場においても、日々、献身的に御対応いただいていますことに感謝申し上げます。
近年、災害の激甚化・頻発化や救急業務の逼迫が顕著となっており、「南海トラフ地震」、「首都直下地震」などの発生が危惧される中、国民の生命、身体及び財産を守る消防の果たす役割は、より一層重要なものとなっています。
消防庁では、国民の皆様が引き続き安心して暮らせるように、緊急消防援助隊や常備消防、消防団の充実強化をはじめ、消防防災分野におけるDXの推進、科学技術の活用などを柱とし、消防防災力の強化に取り組みます。
とりわけ、大規模災害対応の要である緊急消防援助隊については、消防組織法に規定されてから20年以上が経過し、今後発生が懸念される「南海トラフ地震」等の大規模災害に備えて、大型車両での通行が困難な状況でも、被災地に迅速に進出し活動を開始できるよう、小型・軽量化された車両や資機材を整備するとともに、地震や津波発生時の大規模火災現場において、活動隊員の安全を確保した消防活動を行うため、無人走行放水ロボット等の整備を計画的に進めてまいります。
また、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」の制定から10年が経過しております。団員減少が危機的な状況にある消防団については、引き続き、装備や資機材の充実強化に取り組むとともに、モデル事業による支援、消防団への更なる入団促進を図るためのマニュアルの作成、自治体等と連携した広報などを行い、消防団員の確保に全力を挙げてまいります。
さらに、消防防災分野におけるDXについては、マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化、いわゆる「マイナ救急」の全国展開をはじめとし、消防指令システムのインターフェイスの標準化・消防業務システムのクラウド化や消防団へのドローン配備・講習の実施などを推進してまいります。
加えて、能登半島地震の経験等を踏まえつつ、消防分野における新技術の研究開発等を強化してまいります。
昨年5月には、北朝鮮から発射された弾道ミサイル等により、国民保護情報がJアラートで送信されました。消防庁では、地方公共団体と連携した住民避難訓練の実施や避難施設の指定促進に取り組むとともに、Jアラートの新システムへの更改を進め、より一層国民保護体制の整備に万全を期してまいります。
皆様方におかれましては、国民が安心して暮らせる安全な地域づくりとそれを支える我が国の消防防災・危機管理体制の更なる発展のため、より一層の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
結びに、皆様の益々の御健勝と御発展を祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。