令和6年12月13日(金)・14日(土)の2日間、当協会主催による「令和6年度全国自主防災組織リーダー研修会」を、東京都千代田区にあるホテルルポール麹町にて開催しました。
各都道府県から2名の自主防災組織のリーダーを募集したところ、各地域から73名の方々にご参加いただきました。
この研修会は、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が定められたことを機に、その趣旨を実現すべく、全国の自主防災組織リーダーの皆さんが一同に会し、組織運営の実態・課題について意見交換する場を設ける等の目的により、今回で9回目の開催となります。
この研修会を開催することによって、より一層自主防災組織の意識を高め、活動への参加促進や活性化が図られ、自主防災組織の発展につながるものと考えます。
-第1日目-
<開会の挨拶>
(一財)日本防火・防災協会 会長 秋本 敏文より、開会の挨拶をいたしました。
「お忙しい中、全国からご出席いただきまして、ありがとうございます。自主防災組織は日本の消防政策の中で重要であると位置づけられており、大きな地震災害が起きた際には消防だけでは対応しきれません。地域の皆さんの総力を結集した地域の防災体制大切だということを法律の中で明確にし、国や地方公共団体が応援する体制を整えることができました。このような流れの中で、今回の研修会を開催するに至りました。
今回の研修は、全国で自分たちと同じような活動している同志が集まったわけですから、大いに意見交換をして、交流の場を拡げていただければと思っております。」
秋本会長による開会の挨拶
研修会の様子
<来賓挨拶>
総務省消防庁 国民保護・防災部長 小谷 敦 氏
小谷 国民保護・防災部長による来賓挨拶 「元日に能登半島地震が発災し、さらには九州をはじめ能登地方を含む日本海側で豪雨災害にも見舞われ、毎年のようにあちらこちらで大雨災害が出ています。そして、南海トラフ地震の臨時情報が出されました。
こういう状況の中で、本日お集まりの皆様には大変大きな役割を担っております。災害対応というのは、言うまでもなく自助、共助、公助、この3つが揃って減災ということにつながっていくわけですが、その共助の中核を担っていらっしゃるのが、お集まりの自主防災組織のリーダーの方々です。
消防庁といたしましても、自主防災組織の皆様については、優良事例の表彰や、リーダー研修会のような、こういった人材育成の面、それから各地域自主防災組織の活動を支援するような事業というのも行っております。引き続き全力で皆様方を支援したいと考えております。」
<基調講演>
『廣井氏による講演 「これからの防災まちづくり」』
東京大学 教授 廣井 悠 氏
廣井氏による講演 阪神・淡路大震災から30年。今年発生した能登半島地震でも亡くなられた方の多くは建物の延焼や倒壊によるものが多く、過去の教訓が生かされていないのでないか。過去の災害から未来を考え、客観性・地域性・戦略性をポイントとする「都市防災」「防災まちづくり」について失敗例や成功例をあげ、「防災」だけではない、日常のネットワークコミュニティを原点とする防災の取組や、女性の役員を中心とした地域の祭りやスポーツイベントに防災を絡ませて成功した事例の紹介。
50年後の未来を考えながら、災害から復興までの理想的な防災まちづくり等について講演いただきました。
<活動発表>
宮城県多賀城市 多賀城市防災主任者会 千葉 浩一 氏
(令和5年度防災まちづくり大賞 消防庁長官賞 受賞)
【活動発表】千葉氏 東日本大震災を教訓に、「防災」の職にある者が自校だけの活動で収束するのではなく、他校とチームを組み、情報や考え方を多面的な観点から交流、各学校の具体的な施策や教育を主体的に考え、専門的な新しい知見をもつ大学と連携し、高等学校を含めた異校種間での連携、協働など継続して活動を進め、常に担当者が入れ替わる学校組織の中で、防災意識を維持し、現状に応じた主体的な防災教育を持続している施策について活動発表していただきました。
山梨県都留市 与縄地区防災計画推進会 臼井 久 氏
(令和5年度防災まちづくり大賞 消防庁長官賞 受賞)
【活動発表】臼井氏 「一人の犠牲者も出さない」を第一の目標とし、地域の住民と行う毎年の防災訓練のあり方を見直し、市の防災担当者や大学で災害看護を学ぶ先生や学生さんの協力を得ながら、興味を持って参加してもらえるような防災訓練や、LINE の公式アカウントを取得し、地域に密着し緊急な事態を知らせ避難の第一歩を促すために「Y アラート」を発信。平時からの防災意識の高揚や地域の行事等の情報を発信し、有資格者と消防団員経験者が中心となり、志のある若手会員の活動について活動発表していたただきました。
福岡県北九州市 若松区東28区四民防災会 会長 古川 裕子 氏
(令和5年度防災まちづくり大賞 総務大臣賞 受賞)
【活動発表】古川氏 地域の大半が土砂災害警戒区域に指定されたが、住民の防災意識は低いことに危機感を覚え、実行委員会を立ち上げ、住民すべてが主体的に防災に取り組むことを目指して活動を始めた。
実行委員会が企画して市民防災会に提案し、自治会組織を土台に全世帯が積極的に参加する活動に発展した施策について発表していただきました。
<講演>
「地域防災力の充実強化に向けた『自主防災組織に関する取組」』」
総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長 福西 竜也 氏
福西氏による講演 地域全体の防災力を向上させるため政府が取り組んでいる「自主防災組織の活動の中心となるリーダー等の育成支援の施策」について。
また、「組織の重要性や、消防庁が作成した手引書の内容と取り組み」について。さらに、自主防災組織に関する諸制度の解説や、教育訓練の制度、および「防災まちづくり大賞」等について講演をいただきました。
-第2日目-
<グループ討議>
6つのグループに分かれて自己紹介を踏まえ、組織の現状や課題、それに対するグループ共通の課題を導き出し、解決に向けて議論するという、グループ討議が行われました。
グループ討議の様子(1)
グループ討議の様子(2)
『各グループ代表者により討議結果発表』
各グループで討議された内容について代表者の方に結果発表を行っていただきました。
討議結果報告の様子(1)
討議結果報告の様子(2)
第Aグループ
- 住民の防災意識の醸成や向上
毎月フリーペーパーの発行やホームページで情報を発信しているが、住民の防災意識の向上につながっていないという意見については、LINEを使って情報発信をしたり、既に住民が集まっている場に出向いて、自分たちの思いを伝えてはどうか。 - 組織の形骸化
様々な組織と連携をしていくことが重要ではないか。小中学校と連携することによってSDGSの授業の中で防災教育に取り組めないか - 活動のマンネリ化
女性、要支援者、子供などの多様なメンバーからの意見を吸い上げて、多様なメンバーで対策を検討するというのが重要ではないか。客観性、地域性、戦略性、これらに留意して、自分の地域ではどういったことを目標としてやるのか、それを可視化して全員で取り組んではどうか。
第Bグループ
- 高齢住民の支援について
他の団体との連携や比較的元気な高齢者が集まっているサロンの活用や買い物バスの運行。 - 防災意識の向上
防災運動会などイベントを実施し、継続して行うことで常に防災意識をもってもらう。 - 若者の参加
学校を取り込んだり、スポーツ少年団へ働きかけ、情報を共有する取組が大切なのではないか。
第Cグループ
- 高齢化に直面する私たちの各地域で自主防災をいかに効果的に進めていくか。
- 住民たちにどう防災意識を高めてもらうか。
- 自分たちの後に続く後継者問題について
第Dグループ
- 参加者や役員の担い手不足。
高齢化が進んで、若い世代の参加者がない。班長や役員が毎年交代して、組織が継続しにくい。 - 住民の防災意識の低さ。
今まで大きな被害がなかった地域はなかなか防災意識を低下しやすい、高めづらいというところがある。訓練や勉強会への参加率が伸び悩んでいる。備蓄や家財対策も進みにくい。 - 横の繋がり
行政、地域の団体、学校、外国人住民者に対して、幅広い層との協力体制はあるものの、これが十分に機能しないケースが多々ある。 - 新しいアプローチについて。
フェス形式やお子様向けの訓練やウォーキングを取り入れながら健康も維持・向上できますとキーワードに訓練などを行う。ペット避難訓練を行い地域の関心を高めて、コミュニティー形成を担ってはどうか。
討議結果報告の様子(3)
第Eグループ
- 災害に対する意識が低い地域住民にどう伝えていくか。被災地であっても風化していっている現状がある。それを風化させないために写真集を作っている自主防市町村もある。
- 共助・公助の部分にはやはり限界がある。役所の方も被災されているので、何でも役所まかせで、指示を待っていたり、受け身ではなく、自分たちで取り組まなければならない。
- LINEで住民と繋がるというのもあるが、実際被災するとインフラも遮断される場合もあるので、紙ベースで情報を伝達するのも大事。
第Fグループ
- 高齢者、要支援者の避難について
個人情報の問題で情報が集められないという意見について、民生委員の方と情報共有しならが活動したり、地域のお祭りを開催して、横の繋がりを広めていく。 - 被災者が避難所にいっきに集まってくるので、物資不足が問題。トイレの問題。食べ物は我慢できるがトレイの設備を避難所運営では一番の課題にすべき。
<修了証授与と閉会の挨拶>
修了証授与
髙尾理事長による閉会の挨拶
研修会参加者代表に、(一財)日本防火・防災協会 理事長 髙尾和彦より修了証を授与した後、研修会参加に対するお礼と、日頃地域で活躍されている自主防災組織の皆様へ感謝等を述べて、2日間の研修会を終了いたしました。