消防庁国民保護・防災部長
小林恭一氏 新年早々、姫路市の住宅火災、長崎県大村市のグループホームの火災を初め、複数の死者を伴う住宅火災等が相次いでいます。また、昨
年末から列島を覆っている強烈な寒波がいっこうにおさまらず、東
北、北陸地方を中心に記録的な豪雪になり、被害が大きくなっていま
す。豪雪による被害は、1月10日の15時現在で、死者66人、重傷357
人、住家被害672戸等となっており、今後も増加することが懸念され
ています。
関係する消防団や自主防災組織などの皆様におかれましては、年末
年始の行事もそこそこに対応や警戒にあたられていることと思いま
す。この場をお借りして、改めて敬意を表する次第です。
最近の住宅火災や豪雪被害で亡くなられた方を見ると、その多くが
お年寄りです。グループホームの火災でも、お年寄り9人のうち7人
の方が亡くなられました。また、一昨年多発した水害や新潟県中越地
震で亡くなられた方についても、お年寄りが多いことが注目されまし
た。
昨年暮れに発表された人口動態統計では、日本の人口がとうとう減り始めたことが明らかになりま
した。人口減少社会は、高齢化社会でもあります。今進行している高齢化は地域的に著しい偏りがあ
ります。大都市部に若年層が偏在し、その分、地方の中小市町村や山間僻地の高齢者比率が著しく高
くなりつつあるのです。「高齢化社会」とは、大都市部では「高齢者の数が増える」という意味が大
きいのですが、地方の中小市町村等では(高齢者数の増大に加えて)「高齢者の比率が著しく高くな
る」ということを意味します。この両者は、質的に大きく違います。
グループホームの火災や住宅火災でお年寄りが亡くなる例が増えているのは、高齢者数が増加して
いるためです。高齢者の増加に伴い住宅火災による死者が急増しているのに対応するため、消防法が
改正され、すべての住宅に住宅用の火災警報機が義務づけ(本年6月施行)られたことはご存じのこと
と思います。また、今度のグループホームの火災をきっかけに、この種の施設について高齢者の実態
を踏まえた安全対策の見直しが必要になってくると思います。
一方、豪雪や水害でお年寄りが亡くなられているのは、非常時の際の対応を地域の中で担うべき人
が、高齢化比率の高まりにより減少していることが大きいと考えられます。
最盛期には200万人以上いた消防団も、今年は90万人を切ることが懸念されています。このよ
うな事態に対処するには、これまで消防団には縁のなかった方々にも消防団に入っていただくように
努力するほか、自主防災組織や婦人防火クラブなどの従来からの組織に加え、役割を限定した機能別
消防団などの柔軟な受け皿を用意し、リタイアして地域に戻って来る団塊の世代や、女性、企業の自
衛消防隊、学生などにも、地域防災の担い手をお願いする必要があると思います。
常備消防についても、広域化して大きな組織にすることにより、体制、装備、機動力等を充実し、
地域住民の高齢化により弱体化した地域防災力を補完できるよう、消防署所の配置の最適化やいざと
いう時の迅速な動員体制の強化を図る必要があると考えています。このため、消防庁では、消防組織
法の改正等を視野に、消防体制のいっそうの広域化、大規模化を進める方策を検討しているところで
す。
異常気象、大規模地震の切迫、高齢化、テロの危険性など、今年も様々な懸案事項がありますが、
国民の安心・安全を確保するため皆様と一緒に努力していきたいと考えておりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
総務省消防庁国民保護・防災部長 小林恭一